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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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幕間 鉄人VS阿修羅 その2

書籍第1巻、好評発売中です!

 敵の黄色に発行した目から雷光が迸り、それを予想していた俺と椎平はその前にその場から動いていた。


「マジックソード・ウインド」


 更に椎平は回避しながら烈風を相手に叩きつける。


 それは俺と違って敵との距離があっても強力な攻撃ができる自身の強みを生かした戦い方ではあったが、


「やっぱり無効化されるみたいね」


 敵の掲げた掌の前では意味をなさないのか、激しく吹き荒れるはずだった風は無風となって敵の身体に到着する前に消し去られてしまう。


 その隙を狙って接近した上で放った俺の蹴りも、別の掌で簡単に受け止められてしまった。


 だがそれと同時に俺と椎平の攻撃を受け止めるのに、別の掌を使用したことは確認できた。


 しかもこの蹴りは受け止められるのが半ば予想していたので、円環闘法により威力強化はしていない。


(だとすると恐らくこいつの防御は威力や数に関係なく、掌一つで敵の攻撃を一つ止められる類いのものか)


 受け止められると分かっていた蹴りを囮にして追撃で円環闘法による拳をすぐさま叩き込むが、それも三つ目の掌で無効化される。


 更にそこに椎平の別の魔法が襲い掛かって、先程と同じように消し去られた。


 だが空いている相手の掌は二つ。


 つまりあと三回ほど同じように攻め切れれば敵の防御を突破できるはずだった。


「とは言え、そう簡単にはいかないか」


 この敵がずっと受けに回ってくれる訳もない。


 現に俺達の攻撃を受け止めながらも三つの顔の目はそれぞれの光を発し始めているのだから。


 燃え盛る炎、凍える氷、閃く雷。


 それらが同時に発動して、俺と椎平へと容赦なく放たれる。


 それらを受けたら大きなダメージを負うのは必至な以上、普通は回避するしかなかった。


 そしてそうなると攻撃を続行する訳にもいかず、空いている掌はまたしても六つに戻ってしまう。


「やはりこの敵の防御を突破するためには七回以上の連続攻撃が必要のようだな」

「波状攻撃で一気に攻め切りたいけど、この状況じゃそれに掛かりきりになれないのが面倒ね」


 その言葉通り既に生み出されていた阿修羅以外の魔物も続々とこちらに殺到してきており、椎平はそれに対して魔法を放っていた。


 やはり他の魔物が残っていては阿修羅に全リソースを割く訳にも行かず、どうしても攻撃の手数が足りなくなってしまうらしい。


「やはりまずは周囲の魔物の数を削るしかないな」

「そうね、なるべく早めに周囲の魔物を片付けるから、陽明はそれまで持ち堪えていて」


 空間の裂け目から追加の魔物が生み出されていない以上、今は倒せば倒すだけ敵の戦力を減らすことは可能なはず。


 また数が減って守りを固めている有栖達の方も余裕ができれば援護してくれるようになるかもしれない。


 この阿修羅の防御は一人で突破しようとするとかなり困難な相手だが、複数人でなら十分に可能だと思われる。


 実際に俺と椎平の二人が交互に攻撃するだけでも掌を四つまで使わせることは出来ているのだし。


(そういう意味では一撃の威力のある俺よりも、手数が豊富な有栖や椎平の方が相性の良い相手かもしれないな)


 自分と氷姫を合わせて八対一が可能となる有栖、魔法のストックがあれば一人で連続攻撃が可能な椎平であれば、この敵の厄介な防御を掻い潜ることはできるはず。


 だとすればその二人などに敵の防御を無効化してもらって、その隙に俺が強力な一撃を叩き込むのが今のところの最適解となる。


 だから今の自分がやるべくことは時間稼ぎをして、椎平や有栖などが援護に来るのを待つことだろう。


「だが、それを易々と行わせてくれる訳もないな」


 それまで自身から接近してこようとしてこなかった阿修羅だが、椎平が俺から離れて他の魔物の処理に向かったと見るや、一気にこちらに向けて接近してくる。


 これまでの阿修羅の攻撃は目から発せられる炎や氷などだけであり、六つの腕は防御に回されていた。


 それは俺一人なら六つの掌で攻撃を全て無効化できると判断して、そのままでも嬲り殺し出来ると判断したからだろう。


 だけど援軍の到来によってそのバランスが崩されようとしている。


(そうなる前に早急に俺を排除して、攻撃の手数を増やせないようにするつもりか)


 あるいは有効打を一向に与えられていない俺ならすぐにでも倒せると判断されたか。


 なにせ敵の腕は六つあるのに対して、こちらの二つしかないのだ。


 つまり敵が攻勢に回った際に手数では、普通ならどうあっても勝てないのが確定している。


 現に一撃目と二撃目の敵の拳は円環闘法でVITを強化しなければ受けられない威力があり、どうにかそれらを受け流した時点でこちらの両手は塞がれてしまった。


 これでは残る四つの腕による攻撃を受け止められるはずもない。


 だが、


「舐められたものだな」


 防御とは単に敵の攻撃を防ぐだけではない。


 敵の六つの拳に攻撃されると分かった時点で、俺は半身となって敵が攻撃できる箇所を限定。


 その上で一つ目と二つ目の拳を受け流す方向を調整することで、残りの攻撃が放てる場所を更に狭めていた。


 その結果、三発目と四発目の拳をそのまま放てないようになっていた。


 強引に攻撃を継続したら、それこそ先に伸ばした自身の腕を攻撃することになるからだ。


 それによって本来なら絶え間なく続くはずだった連続攻撃に僅かな間が生まれることになる。


 その隙を上手く利用して敵の動きを阻害するように立ち回り、残りの攻撃もどうにか捌いていく。


 それでも全ての拳を受け流すことは流石に不可能だったが、致命的な一撃を受けないようにするくらいは問題なかった。


 なにせこちらにはダメージを瞬時に回復できるアイテムもあるので、急所に攻撃が直撃しない限りは行動不能になることもないのだから。


 それにただ一方的にタコ殴りにされているだけではない。


 これだけ強力な殴打を繰り出してくる六本腕の持ち主という相手は経験したことがなかった。


 だから攻撃のタイミングなども未知数なところが大きかったが、何度も何度も攻撃を捌いていれば情報も出揃うというもの。


「……ここだな」


 攻撃のタイミングや相手の呼吸なども分かってきた相手の拳に肘で合わせて、防御と同時に反撃を仕掛ける。


 それによって俺の肘と相手の拳は正面衝突し、ぶつかり合った影響で互いに損傷する。


「ふむ、その妙な防御も常に使用できる訳ではないようだな」


 そうでなければ今の攻撃も無効化されていたはず。


 だが実際には俺の肘も相手の掌も攻撃の影響で損傷しているのを見るに、あれには攻撃時には発動できないなどの制限があるということだろう。


(これで一つずつ、その厄介な手を破壊していければ最高だったんだが、流石にそうはいかないか)


 俺がアイテムで傷ついた肘を修復しているのと同時に、阿修羅の掌もみるみる治っていく。


 どうやらこの阿修羅もスキルか何かで肉体を回復する手段を持っているらしい。


 この事実は仮にどうにかして妙な防御を突破しても、強力な一撃を叩き込まなければ今までの俺の様に回復されてしまうということを意味していた。


(鉄壁の防御に加えて高い回復能力。やはりどちらかと言えば、敵を足止めする方向の能力に秀でている魔物ようだな)


 攻撃能力も低い訳ではないが、やはり空間の裂け目を守る番人として役割をこなすための能力を持っていると言えるだろう。


「何にしても問題はない。なにせ段々と《《慣れて》》きたからな」


 しばらくの間、一方に攻め続けられたことにより敵の攻撃を十分に見ることも受けることもができたのだ。


 となれば完璧に対応できるようになるのも時間の問題である。


「生憎と俺は攻撃よりも防御の方が得意でな。そう簡単に仕留められると思うなよ」

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