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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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幕間 鉄人VS阿修羅 その1

書籍第1巻発売の記念に更新です。

また明日からもう数日ほど更新する予定なのでお楽しみに!

 C級探索者の俺はB級ダンジョンに入れない。


 だからB級の魔物をほとんど見たことがないのは当然だが、それでもこれから自分が挑むだろう上の級の魔物についての情報収集を欠かしたことはなかった。


 そんな俺でも目の前の阿修羅のような鬼の魔物は見た事も聞いたこともない個体である。


(外見や構え的には肉弾戦を得意とする人型の魔物に見えるが……)


 少なくともこちらの渾身の一撃を無傷で受け止めるだけの力が有るのは間違いない。


 問題はそのステータスの高さがこいつの最大の特色なのか、それとも他にも隠し玉が残されているのかだ。


 幸いだったのはこの阿修羅が現れて以降は空間の裂け目から新たな魔物が溢れ出てくる様子がないことだろう。


 どうやらこの番人を召喚するのには、あちらも何らかのリスクがあるようだ。


 既に生み出された魔物はともかく、これで新たな援軍が追加される心配はなさそうだ。


 少なくともしばらくの間は。


(可能なら一対一で対処したいところだな)


 恐らくだが、目の前の魔物はB級でもかなり強い力を持っているに違いない。


 明らかにこれまでの魔物とは発するオーラが違うのだ。


 気を抜いたらやられる、そんな警鐘が頭で鳴り響いて止まらないくらいに。


 逆に言えば、これまでの魔物の大半はそうではなかったということ。


 だとしたらこれまでの奴はB級以下か、B級の魔物であってもC級に近い個体だったということだろう。


「っつ!」


 そこで敵の三つの顔の内の一つ、右の顔の両目が怪しく赤い光を放つ。


 それに嫌な予感を覚えた俺はすぐにその場から退避すると、先ほどまで立っていた場所の足元から激しい炎が吹き荒れていた。


 相当な威力がありそうだし、あのまま動かずにいたらその炎でこの身を焼かれて大きなダメージを負っていたことだろう。


 しかもどうやら連発が可能らしく、またしても右の顔の目から赤い光が漏れ出ているではないか。


「ふっ!」


 このまま後手に回っていても埒が明かない。そう判断した俺は回避すると同時に敵に接近を試みた。


 どうにかして敵にダメージを通す手段を見つけなければ、こちらに勝ち目はないのだから。


(問題は敵がこちらの全力の一撃でも容易に防ぐことが可能な点だな)


 先程の竜突を受け止めた敵の掌には傷一つなく、ノーダメ―ジだったことは敵の様子からしても間違いないだろう。


 だがどんなにVITが高い個体であっても、円環闘法による攻撃が直撃して傷一つつかないのは些か不自然だった。


 それこそステータスではA級の魔物に届いている夜一ですら、正面から受け止めた際にはダメージを負っていたのだから。


 だとしたらそこには何らかの絡繰りがあるに違いない。


 幾つかの推測を立てながら、そのどれが正解なのかの検証を行なおうと考える。


 だが阿修羅に接近する前に、別の魔物からの攻撃がきて邪魔が入ってしまった。


(やはり周囲の魔物をどうにかしないと、まともに戦いにならないか)


 二つの顔を持つ巨大な熊型の魔物であるツインヘッドグリズリーというD級の魔物の突撃をいなしている間に、阿修羅の目がまたしても発光する。


 しかも今度は右側の顔だけではなく、左の顔が青色に光っているではないか。


「炎に続いて氷か。だとするともう一種類は追加がありそうだな」


 仲間だろうツインヘッドグリズリー諸共、こちらを発生した炎と氷で仕留めようとしてくる阿修羅。


 どうやらこいつらに仲間意識などはないと思った方が賢明そうだ。


 今のところは邪魔が入っても攻撃を回避することくらいはできている。


 だがそれではいつまで立っても反撃に移れない以上、勝機も掴めない。


(阿修羅が無理して攻めてこないのも、この調子で戦っていれば勝てると踏んでいるからだな)


 強い魔物ほど賢くなる。


 だからどうにかして近付こうとしているこちらの様子などから、既に俺の戦闘スタイルが接近戦に特化していることも推測されているだろう。


 そんな敵からすれば、わざわざこちらの接近を許すという危険を冒す必要などある訳がない。


 何故なら敵からすればこのままジリジリと甚振っていれば優勢を維持できるのだから。


 それを許すことなく無理して突っ込むのも選択肢の一つではある。


 無理するので多少のダメージは避けられないだろうが、それでも現状を打破するためには必要経費と割り切る考えも時には必要だろう。


 実際に先ほどの俺もそう判断して、多少の無理をして空間の裂け目まで突っ込んだのだし。


 だが今回の俺はその選択を取らなかった。


 その理由は単純に、今の俺は一人で戦っているのではないからだ。


「フリージングアロー」


 それを証明するように、無数の氷の矢が阿修羅とその周囲の魔物に降り注ぐ。


「悪い、待たせたわね」

「いや、こっちが一人で特攻した形だからな。むしろ予想より早くて助かった」


 俺一人だけなら強引にでも現状打破する必要があったが、こうして援軍が来るとなれば話は違う。


「それで見たところ、その三面六臂の魔物がここの番人ってところかしら?」

「恐らく。あいつの対処は俺がやるから、椎平はその間に他の魔物の横槍が入らないようにしてくれ」

「了解。ついでに隙を見て、空間の裂け目を破壊できないかも試してみるわ」


 この防衛戦の勝利条件は空間の裂け目を破壊することだ。


 つまり最悪は目の前の阿修羅を無視しても問題ないのである。


「もっともそれも簡単にはいきそうになさそうだけどね」


 そんな椎平の言葉が示す通り、それは容易ではなさそうだったが。


 なにせ本来なら周囲の魔物どころか空間の裂け目にまで降り注ぐはずだった無数の氷の矢が、阿修羅の前で全て停止していたのだから。


 正確には阿修羅が掲げた掌の一歩手前で不可視の壁があるかの如く、全ての氷の矢が静止しているのだ。


「俺の全力の一撃もあの掌の前には無意味だったからな。どんな攻撃でもあの掌の前では無効化されるかもしれんぞ」

「それが一つだけでも厄介なのに、あの感じだと六つまでなら無効化されそうね」


 掲げられている掌は一つだけ。


 それで無数の氷の矢が止められていることからそんな予想が建てられる。


 しかも効果範囲が掌周辺だけということでもなさそうだ。


(だとすると有効な攻撃手段を七つ以上、同時に敵に叩き込まないといけない感じか?)


 あるいはどうにかして敵の掌を掻い潜って攻撃を当てる方法を見つけるか。


「なんにせよ、簡単にはいかないようだな」


 真ん中の顔の目から黄色の光が発せられているのを見ながら俺はそう呟いた。

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