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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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幕間 突き進む鉄人

本日、書籍第1巻が発売となりました!

書籍にはweb版にはない書き下ろし部分もありますので、興味のある方は手に取っていただけると嬉しいです。

web版共々よろしくお願いいたしまーす!!

 守りを固めているメンバーが遠距離から援護してくれているおかげで、今のところは魔物に囲まれることなく進めている。


 だがそれもいつまで続くか分からない。


 何故なら遠く離れた空間の裂け目からは未だに魔物が湧き出ており、それはつまり先に進めば進むほどにこちらの行く手を阻もうとする魔物の壁が厚くなることを意味しているからだ。


(火炎地獄ダンジョンのボス部屋のように守るだけなら楽だったんだかな)


 この防衛線に勝利するためには、進む先にある空間の裂け目を破壊する必要がある。


 だからこそ俺と椎平はそこに向かって突き進んでいるのだが、現状だと多くの魔物が俺達に目を向けることはあまりなかった。


 それよりも有栖達が守っている陣地を攻め落とす方が先決ばかりに、こちらを無視するケースも結構あるくらいである。


 だがそれはあくまで空間の裂け目から俺と椎平の距離が離れているから。


 要するにまだ脅威だと認識されていないからに違いにない。


 現に有栖などが遠距離から空間の裂け目に向けて放った攻撃に関しては、多くの魔物が反応して防いでいる。


(敵側からしても遠距離から破壊されるのを一番に警戒しているようだな)


 氷姫の特攻などで遠距離から決めてしまえるなら最高だったのだが、流石にそこまで甘くはなさそうだ。


 そうなるとやはり攻撃役を請け負った俺か椎平がどうにか接近するしかないだろうし、そもそも接近戦を得意としている自分では、ある程度の距離まで近づかなければ話にならない。


(問題はどこまで敵が接近を許してくれるかだな)


 そうやって進むことしばらく、敵が判定を下したのは全体の半分ほどの距離を進んだ頃だった。


 そう、一定のラインを超えたところで急に魔物の動きが変化したのである。


「なるほど、ここが敵側の防衛ラインといったところか」


 俺の方が椎平よりも先に進んでいたからだろう。


 そのラインを先に通過したこちらの行く手を阻むように、周囲の魔物が一斉に襲い掛かってくる。


「はっ!」


 目の前に立ち塞がってきた一つ目の巨人であるサイクロプスに円環闘法による一撃を叩き込むと、その胴体が肉片となって周囲に弾け飛ぶ。


 だがそれを恐れることなく、別の魔物が行く手を阻んできている。


 やはり明らかに先ほどまでと魔物の動きが違う。


 しかもラインの手前で止まった椎平に対しては、ほとんどの魔物が襲い掛からない徹底ぶりだ。


「明らかにここから先への進行を妨害しようとしているわね」

「このラインから先に進む者を狙って攻撃するような命令が組み込まれているのかもしれないな」


 現に後退してラインの手前に来た自分に対しても、明らかに攻撃の圧が緩くなっているではないか。


 ダンジョンの魔物は異世界の残党によって作り出された存在だ。


 だとするとある程度はその行動をコントロールできるとしてもおかしくはないのかもしれない。


(一定の範囲内に侵入してくる敵を排除するようなプログラムでも入っている感じか?)


 でなければ魔物が近くの俺達よりも遠くの有栖達を優先するとは思えない。


「つまりここからが本番みたいね。どうする?」

「どうするもこうするも大技で一気に蹴散らして、その隙に進むしかないだろう」


 こちらに向かってくる魔物を捌きながら椎平の言葉に答える。


 我ながら大雑把な作戦ではあるが、この後に何が待ち受けているか分からないから仕方がないのだ。


 どうせ敵も何か罠を張って待っているだろうし、その時々に臨機応変に対応するしかないので。


『それではその道は私達が切り開きます』

「助かるが、守りは問題ないのか?」

『はい、氷獄によって何重にも進行を妨害する防壁の設置も完了しましたから』


 いつの間にか隣に降り立った一体の氷姫からそんな有栖の声が聞こえてくる。


 既にあちらには魔物の大群が押し寄せているはずだが、それを感じさせない余裕が言葉にはあった。


「それなら私もここで魔法を使ってそれを援護するわ。ストックは残しておきたいから陽明はその間、私を守っていて」

「了解した。道が出来たら俺が一気に突っ込むぞ」


 手早く作戦を立てた俺は椎平を守りながら準備が整うのを少しだけ待って、その時はきた。


「タイダルウェイブ」


 まず椎平の魔法が発動して、発生した大津波が魔物を呑み込みながら突き進んでいく。


 そしてそれに合わせるように他のメンバーも攻撃を開始した。


 氷獄という遠距離での攻撃手段だけでなく、こうして遠くの相手と交信できるとは相変わらず氷姫のスキルは幅広い能力を持っている。


 それこそ近接戦に特化しているとは自分とは違って、どんな状況にも対応できる点は非常に羨ましい限りだった。


 その氷姫の数体が俺達の道を切り開くべく敵の防衛ラインを超えて氷獄を発動する。


 更にそれを援護するかのように、幾つもの光線が敵に降り注いでいた。


(これはスカイドラゴンのブレスか)


 背後を振り返れば、守るべき陣地の上空にドラゴンと思われる魔物の姿が存在しているではないか。


 どうやら魔物に変身できる二人も夜一から提供されたスカイドラゴンの素材を存分に活用しているようだ。


 分析完了したスカイドラゴンの素材は作り放題な事もあって、事前に有り余るほど二人に渡している。


 だからああして素材の残りを気にせずスカイドラゴンには気軽に変身することが出来る訳だ。


 俺達の行く手を阻もうとしていた魔物の壁が、津波に呑み込まれ、氷獄によって凍りつき、更に電気を纏ったブレスによって感電しながら吹き飛ばされる。


 本来ならそれらの攻撃の影響がある程度まで収まってから進むべき。


 だが俺は自身にもダメージが入るのを承知の上で、防衛ラインを踏み越えた。


(夜一の提供してくれるアイテムのおかげで、肉体が多少損傷するのを気にしないで済むようになったからな)


 これまでは行動に制限ができるような傷を負った際は回復薬を使用して、その効果で回復し終えるまで待たなければならなかった。


 今ではHPを回復させるアイテムの代表格とも言えるようになった体力回復薬であっても、重傷を瞬時に治療できる訳ではないので。


 だが今は回復薬がスロットに込められた錬金術師の指輪は、そういった損傷も瞬時に修復してくれるようになっている。


 これは円環闘法で限界を超えた力を発揮することがある自分にとって、非常にありがたいものとなっていた。


 自前のスキルでもHPを持続回復するものはあるにはあるが、はっきり言ってその回復量は足りているとは言い難いのが現状だし。


 その指輪の回復能力を頼りに、俺は皆がこじ開けた穴に向けて突き進む。


 円環闘法によって他のステータスを犠牲に高められたAGIは、それこそ並のB級の魔物を上回る。


 更に、だ。


「AGIブースト、AGIハイブースト発動」


 MPを消費してスキルを発動することでもう数階速度を上昇させる。


 この好機を逃さず、一気に空間の裂け目まで到達しようと。


 足を踏みしめる度、周囲の景色が後方へと流れていく。


 大半の魔物が高速で突き進むこちらに対応できていない。勿論中には対応しようとしてくる個体などもいるにはいたが、


「ハイパーグラビティ!」


 背後から椎平が絶妙なタイミングで俺の進行を妨害する個体を排除してくれる。


(届く!)


 幾つか攻撃が体に掠めて傷を作るが、それらも錬金術師の指輪で回復するのでどうにかなる。


 それもあって俺は周囲の魔物が立ち塞がる前に空間の裂け目と到着し、円環闘法を使った一撃をそこに目掛けて放つことに成功する。


「まあ、そうだろうよ」


 円環闘法と竜突というスキルでSTRを強化した拳の一撃は、現在進行形で生み出されている魔物を蹴散らしながら空間の裂け目へと迫った。


 だがそれが当たる直前、空間の裂け目から出てきた掌がこちらの一撃を受け止めたのだ。


 どうやら予想していた通り、このままあっさり終了とはいかないようである。


 追撃を放つ前に弾かれた俺は空間の裂け目を油断なく見つめる。


 するとこちらの攻撃を受け止めた存在がゆっくりと空間の裂け目からその姿を現した。


 三つの顔と六つの腕を一つのみに宿した、三面六臂の魔物。


 ただしその三つの顔は人間のものではなく鋭い角の生えたオーガのようなものだった。


(見たことない魔物だが、さしずめ阿修羅鬼と言ったところか?)


 こちらの渾身の攻撃を一つの掌で受け止めたところから察するに、VITは相当な高さを誇っていると思って良いだろう。


 その上で手数に関しても、単純にこちらの三倍ある訳だ。


(これはかなり難しい戦いになりそうだな)


 隙のない構えを取る阿修羅は、絶対に誰も通さないという気迫をこちらに感じさせた。

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