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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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幕間 残された五人と防衛戦

お久しぶりです。

色々と忙しくて更新再開の目途は立ってないですが、とりあえず1話だけ更新します!

 六人で結界内に足を踏み入れた瞬間、私達は別の場所へ飛ばされる。


 それは先ほどの宙に浮く小島ではなく、無機質な白いタイルで埋め尽くされた広々とした空間だった。


(相当な広さね。少なくともここから端が見当たらないくらいに)


 この広大な空間が天空ダンジョンのボスが待つ場所なのだろうか。


「予想していた通り別の場所に飛ばされたか。もっとも約一名だけは別の場所に特別招待されたみたいだがな」

「ええ、こうなるとやっぱり敵の狙いは夜一だったってことね」


 陽明の言う通り、この場にいるのは五人で夜一の姿だけが見当たらない。


 これが偶然な訳がないし、敵側は何らかの手段であいつだけを狙い撃ちにしたのは間違いないだろう。


「恐らくはこれまでの戦闘などで彼が狙いの人物だと見抜いたんだろうね。使徒である僕やアリーシャは相手側も素性が分かっているだろうし」

「つまり私達以外の突入したメンバーの中で怪しそうな奴を選んで、そいつだけを別の場所に連れ去ったってことね。まあ私達の背中から飛び出してあれだけ派手に立ち回ってたんだし、目を付けられるのもある意味で当然だわ」


 ダンジョンに入ってからのあいつは一人で縦横無尽で空を駆け、スカイドラゴンを圧倒してみせたのだ。


 それを見れば夜一が突出した実力を持っているのは簡単に予想できる。


 そしてそれだけの力を持っている対象が裏切り者と接触した人物だと思うのも至極自然な流れだろう。


「問題はあいつがどこに連れ去られたかだな。仮に俺達がいる場所がボス部屋だった場合、あいつがいる場所はそうじゃないってことになる」

「……夜一さんがまだダンジョンの中にいるのは間違いないようです。まだ彼の服に仕込んでおいたマーカーからそういう反応が返ってきてます」


 こういう時のためにお互いの場所を把握できる手段などは講じてある。


 それによると夜一はまだダンジョンの中に存在しており、外の全く知らない場所に誘拐されたということではなさそうだ。


「私の方でも同じ反応が返ってきてるし、その点は間違いないでしょうね。ただ妨害されているのか、あいつがこのダンジョン内のどこにいるのかまでは把握し切れない。これじゃあこっちから向かいに行くのは難しいわね」

「まあダンジョン内にいるのなら心配は無用だろう。夜一のことだ、敵が張り巡らせた罠だろうが関係なく食い破るに決まってるからな。それよりこっちもただ待っている訳にはいかなそうだぞ」


 陽明が向けた視線の先。


 遥か遠くで、これまで何もなかった空間に裂け目が発生して、そこから大量の魔物が零れ落ちてくる。


 それはスカイドラゴンだけでなく、他にも色々な種類の魔物がいるようだ。


 しかも大半の魔物がC級以上の強力な奴であり、その数もどんどんと増えていっているではないか。


 そしてそれと同時に私達が立っていた地面に丸い円が描かれた。


 それを見て有人が声を上げる。


「このタイプのギミックは以前に別のダンジョンで攻略したことがあるよ。こちら側に描かれたこの円に魔物が到達したらゲームオーバーって奴で、そうなる前にあの空間の裂け目に何らかの攻撃を当てて破壊する必要があるんだ」


 所謂防衛戦という奴か。


 だとするとあの空間の裂け目を破壊しないことには、どれだけの魔物を倒しても意味はないと思った方がいいかもしれない。


「その別のダンジョンで失敗したらどうなったかは分かるか?」

「確かそこではダンジョンの外に放り出されて一定時間、そのダンジョンへの入場が不可能になるんだったはずだね」

「なるほど、ここでもそれが同じなら目的の対象である夜一以外は不要だから追い出そうってところだな」


 敵からすれば裏切り者と最も関係している夜一を確保できた時点で他は用済みということだろう。


 B級という一流探索者が複数いる私達を邪魔者扱いとは実に良い度胸ではないか。


「ここがボス部屋かどうかは未だに判断が付かないが、だからと言ってこのままむざむざやられる訳にもいかない。夜一を探すためにも早急にこの防衛戦をクリアするとしよう」

「そうね、敵も待ってはくれないみたいだし、夜一を一人にすると色んな意味で不安だもの」


 既に素早く身軽な魔物は既にこちらに向かって駆け出しており、遠くない内に私達の元へと辿り着くだろう。


 更にそいつらを撃退しても、その背後には別の魔物の集団も控えているのだから呑気にしている暇はない。


 だから私達は手早く配置を決めた。


 守りが得意な有栖と他のB級二人で防衛戦を構築して、私と陽明の二人であの空間を破壊するために突貫するという風に。


「それで仮にここがボス部屋だった場合、ボスのA級の魔物がいずれ現れることになるはずだけど、そいつの相手はどうするつもり?」


 今のところそれらしき個体は現れていないようだ。


 だとすると時間の経過か、あるいはあの空間の裂け目に誰かが近づいた時にそれを守るために現れるとかだと思われた。


 そうなった時、誰がその強敵と思われるA級の魔物と戦うのか。


 その疑問に対して陽明はあっさりと答えを出した。


「その心配はいらないだろう。空間の裂け目を破壊すればクリアとなるなら、ここはボス部屋ではない可能性が高い」


 ボスを倒さなければダンジョンコアは現れない。


 それなのにボスを倒さずにクリアできてしまう構造になっているのはおかしいので、ここは恐らく中ボス部屋と言ったところだろうと陽明は予想しているようだった。


「だが万が一、その予想が外れていてボスが現れたのなら俺が相手をするさ」

「その理由は?」

「単純な話だよ。夜一がいないのなら()()()()()()()()()がそいつの対処をするべき。そうだろう?」


 この場には私を含めてB級探索者が三人もいる。それなのにこの陽明という男は自分の方が強いと言ってのけた。


 それも強がりではなくごく自然体で、当然なことのように。


「……ったく、夜一もそうだけど陽明(アンタ)も実は相当な自信家よね」

「探索者など多かれ少なかれそういうものだろうさ。そうでなければこんな危険なことを生業になどしないだろうよ」


 そこで待っていた有栖達の準備が整ったようだ。


 彼女達は空間の裂け目を破壊するために攻め入る私達のため、遠距離から最大の攻撃を放つ準備をしていたのである。


 これから魔物の群れへと突貫する私達が進む道を作るために。


「陽明さん、椎平さん。お気を付けて」

「ああ、分かっている」

「そっちもね。まあこと守りにおいて有栖が不覚を取るとは思わないけど」


 そんな激励の言葉をこちらに掛けた有栖はその技を発動した。


「舞い踊りなさい、氷姫」


 瞬間、氷の地獄が目の前に現れた。

宣伝です。


カクヨムにて投稿していた無限魔力の異世界帰還者という作品をこちらでも投稿し始めました。

ストックがある内はそちらを毎日更新する予定です。


良ければ読んで評価や感想などをいただけると嬉しいです。

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