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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第三十四話 転移罠と御使い アソシア

 氷姫という破壊されても困らないスキルは偵察行為にとても適している。


 更に俺の錬金真眼で小島全体を見通せるのだ。これで道に迷う要素などある訳がない。


 だからサクサク進めて、俺達がそこまで進むのにそう時間は掛からなかった。


「これは結界か?」


 結界内部は俺の目でも見通せず、また氷姫が中に入ろうと結界に触れた瞬間に消滅したことから外部からの干渉を阻むような効果があるようだ。


 現に試しで放ってみた椎平の魔法などもその結界の前に弾かれるという結果になったし。


「この感じだと中にこのダンジョンのボスがいると見るべきだろうな」

「恐らく陽明さんの言う通りではないかと思います。氷姫で調べた限りだとこの小島内に他の魔物なども見当たりませんし、ボス部屋にはこういう外部からの攻撃を遮断する仕組みが多いですから」


 有栖の言う通り小島の中には不思議と魔物が存在していなかった。


 逆に小島の外には中に入れない空を飛ぶタイプの魔物が大量にいるのだが、それらは相変わらず小島の中へ侵入することが出来ていない。


「しかし妙だね。小島内が安全な事といい、ここがボス部屋だとするとあまりに簡単なダンジョン過ぎる」


 確かにダンジョンへと侵入するまではそれなりの苦労をしたが、ダンジョン内は小島だけ。


 しかもその小島は結界に守られて到着すれば他の魔物を気にする必要がないという明らかにこちらにとって都合が良いものとなっている。


 そこに怪しさを憶えないほど俺達は楽観的ではなかった。


「もし仮に僕がこのダンジョンを作り出す立場だったなら、攻略するのに何日も必要になるダンジョンにするよ。そうやって時間を掛けさせるほど相手に負荷を与えられるだろうからね」


 時間が経過するほどに天空ダンジョンは日本本土へと接近する。


 つまり敵である俺達に対して圧力や被害を与えられるということだ。


 それなのにこのダンジョンは今のところ攻略が簡単そうだった。それは明らかにこれまでの敵の行動と矛盾している。


「つまりこの先に罠が待っているってことだな」

「あるいは別の目的があるのか。その詳細は分からないけど、警戒だけは怠らないようにした方が良いね」


 だとしてもこのまま進まないなんて選択肢が俺達にある訳がない。

 ここでビビッて逃げ出しても問題の先送りにしかならないのだから。


 ならばこの先に敵の罠が待っているとしても覚悟を決めて進むしかないだろう。


 そうして警戒しながらもその結界内に足を踏み入れたのだが、


「……なるほど、こういうことか」


 確かに六人で結界内に入ったはずなのに俺の周囲に人影はない。


 どうやらあの結界を潜ると、どこか別の場所に転移させられる類いのものだったようだ。


(転移罠か。ってことは他の奴らもバラバラになったと思った方がいいか)


 周囲の景色を見るが、ここは明らかにあの小島とは違う場所のようだ。


 力が半減されていないからダンジョン外に飛ばされたということではないだろうが、すぐに戻れる場所だとも思えない。


「我らが思惑通りにまんまと誘き寄せられたようだな。裏切り者に与する痴れ者めが」


 そんな敵意が存分に込められた声がする方を見ると、先ほどまでは影も形もなかったはずの場所に何者かが立っていた。


 一見すると人間に見えるそいつがホムンクルスである情報が鑑定によって分かることで、その正体については簡単に予想がつく。


「御使いか」


 それもこのダンジョンを作ったと思われる黄金神一派の奴だ。


「いかにも、我が名はアソシア。かつて黄金神に仕えた誇り高き御使いの一人である」


 こちらがその辺りの事情に通じていることが分かっているのか、アソシアという御使いは堂々と肯定してくる。


 そして先程の発言から、どうも裏切り者の協力者だと誤解している俺のことをこの場に誘き寄せるのがこいつらの目的だったようだ。


「それでわざわざ呼び寄せた理由はなんだ? こっちとしても無駄な争いは好みじゃないからな。話し合いに応じるつもりもあるぞ」

「戯言を。散々こちらの呼びかけを無視しておいて、今更どの口が話し合いをしたいなどとほざくか」

「いや、それは誤解なんけどな」


 残念ながらこの様子ではそれを信じてくれることはなさそうだ。


 それともエルーシャのように隠している錬金真眼を見せれば可能性はあるだろうか。


「貴様の言い分など知ったことではない。こちらの要求は単純明快。素直に裏切り者の名を吐け、痴れ者よ。そうすれば苦しませずに永遠の眠りにつかせてやろう」

「そいつはどうも。その前に一応聞いておきたいんだが、それを言えばこのダンジョンを消してくれたりするのか?」

「何をバカなことを。一度発生したダンジョンはダンジョンコアを破壊することでしか周囲に影響なく消し去ることはできん。つまり仮に私がここで死んでもダンジョンは残り続けるのだ」

「だよな。まあ知ってたけど」


 その辺りのことはアマデウスから聞いている。だが念のためにと確認しておいたのだ。


 もしかしたらアマデウスが死んでから間にそうする方法が見つかった、とかもあり得ないとは言い切れなかったので。


(でもこいつの発言からしてその可能性もないと)


 つまりこの場でこのアソシアという御使いを説得したところで天空ダンジョンが消え去る訳ではないし、ダンジョンコアを出現させるためにボスを倒さなければならないという点に変わりはないということである。


(だったらエルーシャみたいに口留めする手間が増えるだけだし、錬金真眼については黙っておいていいな)


 秘密は知る人が増えれば増えるほど漏れやすくなるものだし。


 それになにより明らかにこちらを見下して勝ち誇っている様子を隠さないこいつとその背後にいる奴らに、果たしてどちらが上なのかをはっきりさせておかなければならないだろう。


 仮に今後で交渉を行なうことがあった時に、こちらに有利な条件を提示できるようにするためにも。


「それじゃあ教えるけど……裏切り者なんていないぞ。俺はあくまで単独で動いている」


 正確には俺に力を与えたアマデウスこそがこいつらの言う裏切り者ということになるのかもしれないが、あいつが復活したことは隠し通す気満々なのでこれが俺の答えだ。


「ほら、答えたんだから苦しまずに殺してみろよ。ま、出来やしないだろうけどな」

「……余程、苦しんで死にたいらしいな、痴れ者が!」


 安い挑発だったがただでさえこちらに敵意を抱いている相手にはそれで十分過ぎたらしく、怒りのままにアソシアは俺を殺そうと魔物を召喚するのだった。

ここで一旦毎日更新は終了です。

中途半端なところで申し訳ないですが、再開まで少々お待ちください。


それとカクヨムの方で新作を投稿しています。


無限魔力の異世界帰還者

目指せ、ダンジョンインフルエンサー! ダンジョン配信で大金持ちに!?

小鬼狩り(ゴブリンハンター)の異世界調査録


という三作です。隻眼錬金剣士を楽しんでいただけた方なら、こちらも面白いと思っていただけるのではないかと思います。

ある程度まとまったらこちらでも投稿する予定ですが、もし興味のある方は読みに来てくれると嬉しいです。



(この宣伝って規約違反じゃないよね? もしヤバそうだったら後で消します)

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