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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第三十三話 空を飛ぶ魔物の巣

 どうにか天空ダンジョンへと突入することには成功した。


 その瞬間、身体全体が軽くなる。ダンジョンに入ったことで半減していたステータスが元に戻ったのだ。


(それはスカイドラゴンも同じだけどな)


 ダンジョン外でのスカイドラゴンのステータスは90ほど。

 つまり本来は180ほどということだ。


 ドラゴンにしてはステータスが低い気もしたが、それはスカイドラゴンが飛竜に分類されるからなのかもしれない。


 一見すると、どちらも半減されていたのが解除されたのなら戦況に大した変化は起こらないと思うだろう。


 だが俺とスカイドラゴンでは大きな違いがあるのだ。


「見えた! あっちだ!」


 幸いなことに錬金真眼ですぐに目的地は捉えられた。


 天空ダンジョンは想像以上に狭いダンジョンのようで、ダンジョンの中央付近に空に浮く小島があるだけ。


 そこから強敵の気配が漂ってくるし、他にボスがいると思われる場所は見当たらなかった。


 ただしその周囲には大量のスカイドラゴンやライトニングイーグルなどの空を飛ぶタイプ魔物が宙を舞っているが。


(椎平の魔法ストックは空。ってこと最低でもストックを作るための時間稼ぎが必要か)


 でなければ俺はともかく有人達が無事に小島に着陸できるとは思えない。


「お前達は先に行け! 俺は敵の注意を引き付ける!」


 一方的にそう叫ぶと、俺は有人の背中から手を放して何もない空中へと放り出されることとなった。


 そんな恰好の獲物を敵が見逃す訳もなく、近くにいたスカイドラゴンが俺のことを噛み砕こうとする。


 あるいはブレスによって撃ち落とそうとする個体も見えた。


 だが今の俺には(・・・・・・)それらは問題とならない。


「邪魔すんな、雑魚共が」


 有人から離れたことで爆裂剣も使用可能となっているので、コンテナで足場を確保した俺は周囲の魔物を一気に殲滅してみせた。


 ダンジョン外では五体倒すのに苦労したのに何故今はそうではないのか。


 その答えは単純にステータスに差が生まれたからだ。


 ダンジョン外での半減したステータスは俺125に対してスカイドラゴン90となり、その差は35となる。


 だがダンジョン内では俺250に対してスカイドラゴン180となり、その差は70と倍も違うのだ。


 しかも爆裂剣の威力は使用者のSTRやINT依存であり、更に錬金剣士のジョブ効果で錬金アイテムはその威力や効果が増加する。


 元の数字が大きくなれば増加する分も大きくなるのは当然のこと。


 その結果、ステータス180辺りでは力を取り戻した俺の攻撃に耐えきれる訳もないということになったのだった。


(それに全力の状態なら短い距離は自分で動いた方がやりやすい)


 強行偵察で得られた情報から足場が不安なダンジョンの可能性が高かったので、疾風の靴という一定時間は空を走れるようになるアイテムも装備してある。


 だから俺はコンテナとそのアイテムを駆使して、縦横無尽に空中を動き回ると敵を排除しながら先へと進み続けた。


 放たれるブレスなども身に着けた耐電のローブの前ではほとんど意味をなさない。


 スカイドラゴンという風と雷に強い魔物が氾濫するほどダンジョン内にいるのが分かっているのだ。


 だとすれば対策済みに決まっているだろう。


 そうして俺が暴れ回ることで敵の注意を一身に引きつけ、有人達が先に行きやすい状況を整える。


 その進行を阻もうとする奴らがいれば、そうなる前に俺が爆裂剣を全力で投擲して殲滅することで。


「爆裂剣、過剰駆動(オーバーロード)


 最後の仕上げで敵の群れの中にぽっかりと穴が開くようにすれば、その隙を逃すことなく有人達は小島へと着陸してみせた。


(ん? 小島に入れば周囲の魔物は追ってこられないのか?)


 まるで結界でもあるかのように小島の周囲を飛び回るしかない魔物達。


 逃がした敵に対して威嚇するように咆哮しているが、やがては諦めたのか残る相手にその敵意を向ける。


 即ち注意を引き付けるために暴れて、まだ小島に着陸していない俺に対して。


「悪いけどお前らの相手をしている暇はないんだよ」


 本音を言えば素材回収したい魔物もチラホラいるのだのだが、今はボスを倒すことが最優先事項。


(ダンジョンコアを破壊してもダンジョンが完全に消滅するまで時間はあるはずだし、その間に魔物を間引く意味も込めて狩りは出来るだろ)


 となればこいつらの相手などしていられない。


 俺は先ほどと同じように爆裂剣で魔物の壁に穴を作り出すと、それが塞がる前に突っ込んで小島へと到達してみせる。


「ふう、全員無事か」

「えっと……一番無茶した人が発する言葉がそれですか?」

「まあそのおかげでたいして消耗せずに着陸できたのは事実だけどな」


 有栖と陽明が呆れたように声を掛けてくるが、別に無茶したつもりはない。

 あの場ではああするのが最適だと判断しただけだ。


「いや、分かってはいたけど……とんでもないね」

「ほんと、これだからユニークスキル持ちは嫌なのよ。こっちの常識とか全く通じないんだから」

「……」


 呆れた様子の有人とアリーシャに対して、椎平は無言でこちらを一瞥するだけだった。


 たぶん次に備えて魔法のストックをしているのだろう。


 それが終わるのを待って、俺達は小島の探索を開始する。


 所々に木々が生い茂っているせいで視界は悪いものの、この島自体はそう大きくもない。


 更には周囲に有栖が氷姫を放っているので、そう長い時間探索に時間を取られることも無いだろう。


(強敵の気配は感じるのに、錬金真眼でも今のところ怪しい場所は見当たらないか)


 島全体を見渡せるのに何も見つからない。


 だとするとボスに続く道が隠されているというところだろうか。

 ここはその仕掛けをどうにかしないことにはボスと戦えないタイプのダンジョンと見た。


「……氷姫に反応がありました」

「何があったか分かるか?」

「分かりません。ある場所を通過しようとしたら、破壊されたのか急に消滅しました」


 尋ねた俺の目にもそうとしか映らなかったので魔物に襲われたとかではないと思われる。


(だとすればスキルを無効化する空間にでも引っ掛かったか?)


 なんにしても何が起こるか分からないのがダンジョンだ。


 時間もない以上、警戒を怠ることなく進むしかあるまい。


「そこが罠の可能性もあり得るので、他の調査もしながらそこに向かいましょう。こちらです」


 他に手掛かりがない以上、罠だとしても俺達にはそれを避けるという選択はない。


 だから氷姫が先導する形で俺達はその場所へと向かっていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スカイドラゴンの群れと暴風のせいで天空ダンジョンでの激闘の映像は撮れていないだろうけど、 それでもこの戦いは現在進行形で日本のみならず世界中で生中継のトップニュースになっていそうだね。
[良い点] 更新お疲れ様です。 なるほど、ダンジョンの内外の格差を上手く利用ですか…。以前からそうではあったんでしょうけど、リスタートしてからこういう『戦いの巧みさ』みたいな能力外の部分も成長してる…
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