第十五話 ドロップアイテムと褒美
意識が戻るとそこはボス部屋の前だった。周囲には哲太達もいる。
「そう言えばお前達は黙ってばかりでアマデウスに何も聞かなかったけど良かったのか? なんか結局俺ばっかり話してたけど」
「……お前にはそう見えたのか」
「ん? どういう意味だ?」
「俺はあの席に座ってから声も出せないし身動き一つできなくなった。他の奴らも同じだったんじゃないか?」
その言葉に他の二人も頷いている。話に夢中でそちらに意識を割いていなかったがそんなことになっていたとは。
「アマデウスはお前以外眼中にないって態度だった。俺達には視線一つたりとも向けなかったくらいだしな。あるいはあいつの言葉を信じるなら御使いってのは試練を乗り越えた相手には対応するが、そうでない奴の話なんて聞く気がないってことなんだろうよ」
よくよく思い返してみればアマデウスは初めから終わりまで俺にしか話しかけていなかった。他の奴らはあくまで同行者。一緒にいることは認めたかもしれないが、それ以外は何をするとも言っていないということだろうか。
「それよりも夜一。お前、自分がどんな状態になってるか分かってないだろ?」
「え、何か変か?」
ドーピングを重ねてから続いていた体の内を蝕むような異常な怠さも消えて今の調子は万全ではないがそれほども悪くない。
そう思って体を見下ろすが特におかしな点も見当たらなかった。ってことは残るは自分では見られないところ。そして最後のアマデウスの言葉で答えは出る。
アイテムボックスから鏡を取り出して自分の眼を確認したら驚いた。
「え、何だこれ……」
第三の眼の効果はとっくに切れている時間だ。
だとすればこの視力は自前であり右目の視力が戻っているのは素直に喜ばしい。
だが何故その眼の色が虹色なのだろうか。正確には光の当たり方によって様々な色に変化して更にキラキラ発光しているように見える。
まるで眼球の代わりに虹色に光る宝石を埋め込んだかのような、そんな人体ではあり得ない状態になっていた。
「宝石のオパールみたいだな。前に婚約指輪で色々と宝石について調べた時にそんなの見たことあるぞ」
「確かに宝石みたいに綺麗ね」
「綺麗は綺麗ですけど、明らかに人の眼ではないですよ」
「どうしろってんだよ、これ。滅茶苦茶目立つじゃねえか」
「とりあえず眼帯で隠しとけ。見られたら詮索されかねんぞ」
折角視力が戻ったのにまだ眼帯をつけなければならないのか。嘆息しながら目を覆ったのだがおかしい。普通に視界が両目とも確保されている。
(褒美って透視能力なのか? いやまさか……)
そう思ってステータスカードを確認したらそこには見たことも無いスキルとジョブが追加されていた。
(ユニークスキルの錬金真眼に第四次特殊職の錬金術師。更に第六次固有職の錬金剣士だと?)
試練の魔物を倒したことでランク37に上がっていたから第四次職は理解できる。だが他二つはいったい何なのだろうか。
「って、そう言えばアマデウスはドロップアイテムについても言ってたよな」
「それはまあこの山のことでしょ」
椎平の発言でそちらを向くと奴の死体があった場所に大量の回復薬らしきものが山積みになっていた。これが全て体力回復薬だとしたらいったい総額いくらになるのか分からない宝の山だ。
それを見て目を見開いて驚愕しながら欲しそうにみている愛華に何故かホッとする。なんかこう、異常な事ばっかり起きている中で数少ないまともって感じで。
「まあこれも見つかる前に仕舞っておかないと……っておい、んだこれふざけんな!?」
「ど、どうしたんですか? 何があったんですか?」
急に切れた俺に驚く愛華。だが俺にはそれに反応している余裕などなかった。目の前の光景が異常を通り越して空前絶後の事態だったからだ。
「ヤバ過ぎる。マジでヤバいぞ、これは!」
錬金真眼とやらの効果なのか右目で見たらそれが何なのか勝手に表示される。そこには一つだけでもヤバイものがズラリと並んでいた。
(中位体力回復薬に高位体力回復薬と同じく中高位の魔力回復薬と異常回復薬。ランクアップポーションにスキルレベルアップポーションと来てジョブレベルアップポーション! おまけにリセットポーションだ!? どれも見たことも聞いたことも無い代物ばかりだぞ! しかもどれも複数本あるし!)
まだまだ上げればキリがない数の未知のアイテムが無造作に山となっている。
これは絶対に見つかってはならない。傷薬の例から分かる通りこれまでだってダンジョンで新しい薬が発見された時は世界中を巻き込んだ騒動に発展してきたのだ。
それがこんな数も一度に出回ったら未曽有の大混乱が引き起こされるに決まっている。
その上さらに、
(なんか見たポーションのレシピとか勝手に頭に浮かんでくるんですけど!?)
これは何か、これらの品物は作れるっていうのか。まあ錬金術師のジョブにレシピっていうくらいだからきっとそういうことなんだろう。
「あーもう無理。ただでさえ激戦のせいで疲れてるんだから勘弁してくれ」
とりあえず今は全てのことを後回しにしてそれらをアイテムボックスに仕舞う。
(てか、もしかしたらこれあいつの探し求めていた物じゃないか?)
だがこれはそう簡単に譲渡できるものではない。少なくとも何らかの対策は必要になるだろう。だけど今はそのことを考えるのは後にする。
「全員繰り返せ。何もなかった。いいな、ここには何もなかったんだ」
「あんたがそんなに焦るなんて、そんなにヤバイのね」
「ああ、今までの常識とか全部ぶっ壊れるくらいに」
しかもなんですか。これまで俺が使ってきたポーションとか試しに見たら低位体力回復薬って出るんですけど誤表記ですかね。
あまりの事実に現実逃避したくなるんだが。
だがそんなことをしている暇はない。他の救助が来る前になによりも最優先で俺たちのやることは一つだけ。
「急いで口裏を合わせるぞ。でないと色々と終わる」
ドロップ品については後々触れる予定です。
ですが先に知りたい人のために後書きの最後尾に載せておきます。
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中位と高位の体力回復薬と魔力回復薬と異常回復薬。
霊薬の素。
中高位のHP、MP、STR、VIT、INT、MID、AGI,DEX、LUCアップポーション。
ランクアップポーションとスキルレベルアップポーションとジョブレベルアップポーション。
獲得ランク経験値倍増ポーション、獲得スキル経験値倍増ポーション、獲得ジョブ経験値倍増ポーション、アイテムドロップ確定ポーション
リセットポーション。
空白の錬金レシピ表。
空のスキルオーブ。
空のジョブオーブ。
赤と青と黄と緑と白と黒と無色の錬金結晶。
原型ホムンクルス。
全て五つずつです。




