第二十二話 スキル選択と理想形
D級ダンジョンで活動するようになったことでランクも30まで上がった。
(この分だとかつてのランク34に到達するのも時間の問題だな)
まだランク1に戻ってから一年も経っていないのにここまで到達できたことは素直に嬉しい限りである。
やはり圧倒的ステータスで一度のダンジョン探索で狩れる魔物の数が段違いな影響が大きいのだろう。
それこそ以前よりも倍以上のペースで経験値稼ぎが可能なのだ。
C級よりも一段下のD級の魔物でも以前のランクに迫れるくらい十分な経験値が稼げるというもの。
(レシピ検索のスキルのおかげで、新しいレシピの方はランクを上げなくてもある程度は手に入る算段も付いたからな。ランクアップの優先度は前より低くなった)
ランクを上げても250以上の効果は発揮されない現状では、新しいレシピを手に入れる以外の実質的な恩恵はないに等しい。
そして錬金真眼のレベルアップのためにレシピ検索が有用であると分かった現状、そこまでランクアップに拘らなくてもよくなっている。
それよりもレシピ検索を最大限活用するために色々な魔物の素材やアイテムを手に入れることの方が現状では重要なことだろう。
だとすればこれまで以上に色々なダンジョンに潜って素材やアイテムを手に入れたいところ。
それに、それと並行してスキルについてもそろそろ揃えていきたいところであった。
なにせ今の俺は水銃以外のまともな戦闘スキルを有していないので。
これまでは錬金アイテムや過剰駆動でどうにかなっていたが、これから先もそうであるとは限らない。
特にアーサーやデイビスなど使徒と敵対するのなら、準備は幾らしてもし過ぎるということはないだろうし。
「でもどのスキルを取るか迷うんだよなー」
錬金剣士は錬金術師と違って習得できるスキルに制限はない。
だから理論上は好きなだけスキルを手に入れられることにはなっている。
だが理論上はそうでも実際の現実はそう甘くはない。
何故ならスキルの中には反対のスキルを習得していると習得し辛くなる、あるいは全く習得できなくなるケースも存在しているからだ。
また仮に習得できても威力や効果が弱くなる類いのスキルもあるのが困ったところである。
例を挙げると、陽明ならジョブが戦士系で物理系のスキルを多く習得しているせいか、魔法系のスキルとは相性が悪いことが多いという風な感じだろうか。
そして仮に陽明が無理して魔法系のスキルを習得しても、その効果は半減することだろう。
それもあって俺はこれまでキラー系などの他に影響がないと思われているスキルしか習得してこなかったのだ。
(魔物と戦う機会は増えるだろうし他のキラー系も揃えるとして、今の俺にはどういうスキルが必要かねえ……)
以前なら足りないステータスを補うためにステータス上昇系のスキルを習得したものだが、今のところは250で十分に間に合っている。
それにそれ系のスキルレベルをⅩにしても上昇するのは100までと、多大な労力を割いても得られるメリットが今の俺からするとあまりないのも問題だ。
(そっちに時間を割くよりも神化の薬を作って限界突破した方が効率的には良さそうだしな)
なにせ限界突破すれば、現状のステータスでも350くらいあるのだ。
ただでさえ正攻法でスキルレベルを上げるのにはかなりの時間が掛かるのは、この前久しぶりに錬金系のスキルが上昇したことからも明らか。
今のところスキルレベルアップポーションは作れないので、あれもこれも手を出したところでどれも中途半端になるのが関の山だろう。
錬金系という最優先しなければならにスキルもあるし、新たに習得してレベルアップさせるスキルは厳選したいところである。
「水銃以外の攻撃スキルを手に入れて攻撃手段を増やすか? いやでも錬金アイテムが充実すれば、わざわざスキルに頼る必要もないのか」
錬金武器を過剰駆動させるだけでも攻撃力は十分だし、色々な素材を込めれば種類も多種多様の者が揃えられる。
かといって今更魔法系などの慣れていないスキルを習得する気にもなれなかった。
魔法ストックなどがない俺では魔法の詠唱の際に隙が生まれるのは避けられないし、剣を持って前線を張る戦闘スタイルの俺と魔法系のスキルは相性が良いとは言えない。
陽明のように自分の理想形がはっきりしてればいいのだろうが、今の俺にそういったものはなかった。
いや正確に言うのなら今の状態こそが、かつての自分が描いた理想形と言っても過言ではないのである。
常に敵の姿や攻撃を捉えて刹那の見切りを可能とする眼。
その見切りなど自分の思い描いた動きを可能にする圧倒的ステータス。
更には物理特殊を問わずに、様々な攻撃手段を用いることが可能なアイテム類を所持して、それを最大限活用することも可能。
しかもそれらは攻撃だけでなく防御やサポートまでできる始末。
今の俺はかつて自分が思い描いた理想形に限りなく近くなっている。
そしてだからこそ、その完成された理想から更に自分をどう発展させるかのイメージが中々固められないのだった。
(何でも選択ができるからこその悩みって奴だな)
選択肢が多過ぎるからこそ、どれを選ぶか悩ましいとはなんとも贅沢な話ではないか。
「いっそのこと錬金アイテムを更に強力にできるようなスキルを探してみるか? アマデウスならその辺りの情報を持っているかもしれないし」
そんなことをブツブツと呟きながら歩を進めていると、目の前にボス部屋の扉がきていた。
どうやらいつの間にかこのD級のアンデッド系の魔物ばかりが出現するダンジョンの最奥まで辿り着いてしまったようである。
「まあ、すぐに答えが出せないならじっくり考えればいいか」
スキルについて頭を悩ませながらも遭遇した魔物は全て掃討して、素材解析もバッチリ行なってある。
だから残すはボス戦のみ。
扉を開けて放って中に入ると、そこにはドラゴンゾンビが待ち構えていた。
C級の魔物の中でもかなり強い魔物であり、このダンジョンでは滅多に現れないボスである。
(うん、やっぱり強敵を引く悪運は強まってるな)
その事実を再確認しながら俺は咆哮を上げるボスへと飛び掛かり、無事に不死者殺しという新しいスキルを獲得するのだった。
八代 夜一
ランク30
ステータス
HP 250(358)
MP 250(350)
STR 250(346)
VIT 250(341)
INT 250(343)
MID 250(359)
AGI 250(344)
DEX 250(345)
LUC 250(346)
スキル 錬金レベルⅦ 錬金素材作成レベルⅦ 錬金真眼レベルⅤ 霊薬作成レベルⅢ アルケミーボックス 錬金術の秘奥 剣技覚醒 水銃レベルⅠ 昆虫殺しレベルⅤ 過剰駆動 竜殺しレベルⅠ 獣殺しレベルⅠ 水棲殺しレベルⅡ 不死者殺しレベルⅠ
ジョブ 錬金剣士レベルⅦ
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