幕間 アマデウスと黄金神
求められるままに説明をして、一段落がついたアマデウスはアルケミーボックスに収納されていた。
一見すると物のような酷い扱われかたに思えるが、これはアマデウス自身が望んだことでもある。
いくらゴーレムコアを利用して自らの波長を誤魔化しているとはいえ、その偽装にも限界はある。
また原型ホムンクルスはエネルギー効率では優れているものの、それ以外は最低限の力しか発揮できないのが特徴の、ホムンクルスの中で最も基礎的で難易度が低いものである。
(発揮できる力も作成者のステータスの十分の一が限界で、スキルも覚えられない。出来るのは主の身の回りの世話くらいか。これでは万が一の時に身を守ることも難しい)
原型というよりお手伝いホムンクルスと名称を変更した方が良いのではないかという性能の低さである。
かつての自分の力からみれば、あまりにも無力で笑うしかないくらいだった。
これが戦闘ホムンクルスであれば、主の隣に立って戦うことも可能だっただろう。
あるいは生産ホムンクルスなら、アイテム作成などで役立てたに違いない。
だが原型ではそんなことは夢のまた夢。
下手に出しゃばっても足を引っ張ることにしかならない。
このことは今の主である八代夜一にも伝えてあり、下手に私がいると騒動の元だから必要な時以外はボックス内で引き籠っていろという命令を受けている。
幸いなことに休眠状態ではなくなったことで、外から得られる情報量は前よりもずっと増えている。
前はバレないように半分眠ったような状態だったので、下手な行動はとれなかったのだ。
(でも今なら多少は動いても問題ないな)
バレない範囲で動く分には何も問題ないだろう。
それが主の役に立つことならば尚更だ。
「黄金神の復活。それが達成されるのならば私はどんな手段でも取ろう」
ただし主を裏切ることだけは絶対にしないと誓っている。
あの痴れ者のトルテインのようなことをするのだけは絶対に、何が有ろうとも御免だ。
それなら潔く死んだ方が万倍マシである。
「それにしても彼は本当に面白い。やはりあの時の私が見た光景は間違いなかったみたいだな」
試練の魔物だった私を彼が討伐した褒美として手に入れたあの右目。
錬金真眼は、かつて私が神化の薬を服用した際に手に入れたユニークスキルである。
だからこそ本来なら死んだら失われるスキルの中であっても、魂だけの私の中に残っていたものだった。
そしてその能力の中には未来視がある。
その未来視が、彼が私を倒して正気を取り戻させた時に意図せずに発動したのだ。
そしてその時に見た光景。それは私をもってしても信じ難いものであった。
「だが今なら分かる。彼らならばきっと錬金真眼を超えて、黄金神のみが持つその瞳を手に入れるだろう」
その名は錬金神眼。黄金色に輝く、黄金神のみが使うことが可能な力。
三大神の一角にのみに使うことが許された絶大な力だ。
あの時に見た未来で、確かに彼の右眼は虹色ではなく黄金色に輝いていた。
しかもそれだけではない。
その場には他にも複数の人影が存在しており、彼らは何らかの神族の力を纏っていたのだ。
その顔などは黒塗りで分からなかったが、八代夜一を中心とするような形で。
「畔川椎平と五十里愛華辺りはほぼ確定か。雲薙哲太と優里亜夫妻は恐らく違うな」
その光景から彼に近しい者が、いずれ他の神の力を得るかもしれない。
だからこそ私は主である彼以外にも最低限の接触をすることを受け入れているし、過去に自身の領域に主以外を招待までしたのだ。
現状で主に近しい存在と思われる彼らが未来視に映った人影なのか見極めるためにも。
とは言え、アマデウスの未来視は絶対のものではない。
また見られる光景も不確定なものは黒塗りで分からない上に、何が原因で変化するのかも未知数だ。
だから今の未来視では全く光景が変わっている可能性だって十分にあり得る。
(錬金真眼を彼に譲った以上、私に未来を確認する術はないからな)
だからアマデウスはその光景が実現することを信じて進むしかない。
なにせそれが叶えば、アマデウスにとっても黄金神一派にとっても幸福なこととなるだから。
「我が主よ。私は全身全霊をもって君が望む、強くなるという目的に協力しようではないか」
だから願わくは、神化の薬で限界を超えた末に新たな黄金神としてその座を手にしてもらえないだろうか。
それこそがアマデウスの真の目的。
かつて叶えられなかった先代の孫娘を頼むという願い、それを叶えるためにはそれが必要なのだ。
なにせ今、下手にアマデウスと同じ方法で彼女が復活してしまうと、どう考えても不幸な未来が待っているのだから。
(私の魂を後生大事にここまで保存してきていたんだ。まず間違いなく、彼女の魂もあるはず)
我々は魂さえあれば、復活することも不可能ではない。
それはアマデウス自身が証明している。
ならばあとは状況を整えた後に、復活をさせるまで。
それがどれほど困難な事なのかをアマデウスは理解している。
だがたとえどれだけ不可能に近かろうとも、そんなことは関係ないのだ。
やり遂げると決めたのなら、あとはその実現を目指すのみ。
「おや? これは……」
そこで休眠状態では感じ取れなかった波長のようなものを感知する。
(この感じは通信か何かだな。しかもどうやら隠そうとしていない?)
あえて全体に流すかのような、それこそこちらでいうラジオのような形で垂れ流しているかのようだ。
秘匿する気が欠片もないのがアリアリと分かる。
(だけどこちらを釣り出すための罠かもしれないから、念には念を入れて慎重に盗聴するか)
そのためには多少の時間が必要なるが致し方ないだろう。
どうせ今のアマデウスは外で活動できないので、それを行なうだけの時間は十分にある。
この盗聴で新たな主に対する手土産が得られることを期待しながら、アマデウスは盗聴の準備に取り掛かった。
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