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第五章 崩壊の序曲と御使い降臨

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第六話 限界突破の方法と今後の方針

 アマデウスはあの話からこちらの質問に答え続けた。


 特に教授や勘九郎などは異世界での文化や政治形態、あるいは医学などがどうなっていたのかなどについて質問攻めをして、さしものアマデウスも最後の方はかなり辟易した様子だったが。


 そうしてそれなりの時間が過ぎて話も終わったという雰囲気が流れた時だった。


 俺が口を開いたのは。


「いや待て。一番大事な情報を聞いてないぞ」

「おや、何か言い忘れていたことがあったかな?」

「ステータスの限界を超える方法だよ。肝心のそれをまだ聞いてないぞ」

「「「「……」」」」


 俺が最も聞きたかったことはそれである。


 原初の時代の話とかも興味深かったが、やはりそれでも強くなる方法のが大事に決まっているだろう。


 そう思ったのだが、この発言に周囲が静寂に包まれていた。


 そして何故かアマデウスを含めた全員がドン引きした様子で俺の方を見てきている。


「なんだ? 示し合わせたかのようにこっちを見てくるなんて」

「いや、流石だよ。世界が崩壊する可能性を知りながらも、強くなる方が大事と言い切るとは、もはや天晴としか言いようがないな」


 本当に楽しげで嬉しそうに笑うアマデウス。

 何がそんなに面白いのか。


「別におかしなことじゃないだろう? ダンジョンを間引くにしても、今まで以上の強さが絶対に必要になる。なにせ今の俺のステータスじゃなんとかA級の魔物に届くくらいで、A級ダンジョンのボスと戦うには足りてないだろうからな」

「まあそれも一理あるけれど、それでも普通は世界の崩壊ということに意識が向けられると思うよ」


 何故か俺以外の全員がアマデウスの言葉に頷いていた。

 どうやらここには俺の味方はいないようだ。


「とにかく限界突破するにはどうすればいいんだ? 幾つか方法があるとか言ってただろ」

「そうだね。まず確実で手っ取り早いのは、生き残っている神族の力を借りることだね。ただしその場合は、力を借りた神族の支配下に置かれることになるし、突破できる限界も選択した神族に依存することになる」

「却下だな」


 俺はこれからその神族や御使いと戦う可能性があるのだ。

 それなのに敵の支配下に置かれる選択など取れる訳がない。


 それに限界が選んだ神族基準なのもいただけない。


 アマデウスの話では生き残っている三大神という最も力を持っていた神族は既に死んでいる。

 つまり最も効率的に力を得られる相手はいなくなっているのだ。


 妥協して生存している中から最も力を持つ神族を選ぶにしても、俺にはどれがそれなのか分からないし、その相手がアマデウスを敵対している相手なら問題が勃発することは必至。


 だからどう考えてもその方法は取れない。


「まあ私もお勧めはしないよ。君が本質的には誰かの下に就くのが向いていないことなど分かり切っているからね」

「そうでもないだろ。今も社長(オヤジ)の下で働いている訳だし」

「いや、これはアマデウスが正しいと思うぞ」


 陽明が口を挟んできて、それに周りの全員が頷いている。


 おかしい、やはりここには敵しかいないではないか。


「だとすると、私が提示できる方法は一つだね。その方法とは、神化(しんか)の薬を作成して服用するのさ」

進化(しんか)の薬? それを飲めば俺は人間を超えた存在に進化できるってのか?」

「進化ではなく神化、神へと化ける薬だよ。この薬を飲めば英雄達から力を授かった神族と同じように、その限界を突破できる。勿論これは錬金アイテムだから、君が作成可能なものだよ。というか現状だと君以外に作れるようになる人はいないのではないかな?」


 神化の薬。


 それは超高難易度、上級を超えた超級とでも呼ぶべき錬金アイテムであり、釜などでは決して作れない代物とのこと。


 だからそれを作るためにはもっと錬金術の腕が必要になる上に、レシピも自分で手に入れなければならないという。


「お前もレシピを知らないのか?」


 これはレシピとして頭に入らなくても、求められる素材が何か分かれば用意する際に役に立つと思ったのだ。


 だがそう甘くはないらしい。


「知ってはいるよ。なにせかつての私もそれを作って飲んだ身だからね。だがこれはたとえレシピを教えても意味がないんだよ」


 神化の薬は作成した本人にしか効果を発揮せず、また各々によって必要となる素材も変わるというのだ。


 共通しているのは極めた錬金術の腕と超貴重な素材が必要とされるということだけ。


「それでもアドバイスをするなら、賢者の石はほぼ確実に必要になるから作れるようになっておいた方が良いってことくらいかな」


 賢者の石。


 これまた超級の錬金アイテムであり、そのレシピは全ての錬金素材を完全錬金すること。


 つまりそれを作るにはその錬金素材全てが品質マックスでなければならないということだ。


「錬金素材作成スキルのレベルが上がれば、ある程度までは勝手に錬金素材の品質も上がる。けれどマックスにするには圧縮錬金を繰り返す必要があるよ」

「……もしかしてだけど、これまでに手に入れた力を駆使する必要があるのか?」

「大正解。だからこそ錬金術を極めなければ作れないアイテムなんだよ。あ、ちなみに他人が品質を100にした錬金素材を使うとかも無理だからね。全て自分の手で作らなければならないんだ」


 なんだ、そのクソ仕様は。

 どれだけの手間が必要なるのか分かったものではないではないか。


「ここまでの情報で分かるだろうが、これは本当に作るのが大変なアイテムでね。でもその苦労を掛けた分だけ効果が高まるから、やる価値はあると思うよ」


 神化の薬を飲んで効果を発揮するのは一度だけ。

 だから可能な限り効果が求められる。


 その効果を高める方法は、錬金術師としての格が高ければ高いほど良いとのこと。

 そうすれば必要とする素材も難しくなる代わりに、効果も高まるのだとか。


「錬金術師としての格は、解析して作れるようになった素材の数とそれらの品質、保有しているレシピの数と熟練度などで決められる。つまりより良質な神化の薬を作るためには、今まで以上に魔物を倒して素材解析を行い、新たなレシピを手に入れて、それらを作って熟練度を上げなければならないということだね」


 しかも神化の薬に限らず、超級の錬金アイテムは作成者の格が性能に影響するものが多いとのこと。


 なにせ超級のアイテムは完全錬金、つまりは品質100なのが当たり前のものばかりなのだとか。

 だから品質での差は出ない代わりに、作成者の影響がモロに出るらしい。


 だがそれらの行動は言われる前から俺がやっていることだった。


 だとすればこれまでの俺の行動は間違っていなくて、そのまま突き進めばよいということでもある。


「加えてアドバイスするなら、こちらの世界の物質と錬金アイテムを掛け合わせた開発は今後も積極的に行なった方がいいよ」

「アルケミーとかのことか?」

「そうそう、あれはとても良い選択だったよ」


 今のところランクアップすれば新しいレシピは手に入る。


 だがそれらのレシピは、解析した素材などに影響される。

 これは俺も予測していたことだから驚きはない。


 だがだからこそ必要とされる素材などが全く解析できていないアイテムのレシピは、幾らランクアップしても手に入らないらしい。


 そして今のところのダンジョンで再現できる魔物などは限りがあるので、かつて黄金神が手にしていたレシピ全てを手に入れることは不可能な状態となっているらしい。


 素材がなければ関連するレシピも手に入らないし、作れないから熟練度も上がらないという訳だ。


 つまりこのままでは、どう足掻いて過去の神化の薬の性能を超えたものは作れない。


 それを回避するためには、この世界独自の錬金アイテムを創り出すしかない。

 それこそかつての黄金神が錬金モノクルや釜を創り出したように。


「スキルレベルが上がれば、その辺りのことも可能になるよ。だから頑張って錬金術師としての格を上げることだね」


 スキルレベルを上げて、新たな錬金アイテムとそのレシピを創り出す。

 そしてそれらを極めれば極めるほどに神化の薬の効果は高まることとなる。


「ったく、分かったよ。正直面倒な面もあるだけど、強くなるのに必要ならやるさ」


 そこに妥協を挟む俺ではない。

 やると決めた以上は徹底的にやるとしよう。

 もっともかつてのアマデウス達の失敗を繰り返すつもりもないが。

 表に出すものについては熟考の上で決めるなどして。


(その辺りは上手い塩梅を模索しながらやっていくしかないか)


 俺には頼りになる、もとい責任を分かち合える仲間がいるのだから。


 決して自分だけで責任取るのが嫌だという訳ではないぞ。


 こうして更なる素材解析と錬金アイテムの作成、そしてその発展商品の開発に邁進することが決定したのだった。

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[一言] こちらの物と合わせた錬金…毛生え薬で大儲けだな!
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