第二十四話 ダンジョンアイテムの活用法
お久しぶりです、大体一月ぶりですかね。
とりあえず一話だけ更新させていただきます。
最初に効果の確認が取れたのが虫除けのお香だ。
しかもその効果はこれ以上ないほどに一目瞭然だった。
「映像を見るに明らかに嫌がってますね」
外崎さんに見せてもらったそれにはお香から逃げ惑う虫共の姿が映されていた。
「ええ、現実世界の虫でも問題なく効果を発揮するみたいです。しかも今のところどの虫でも高い効果を発揮するみたいですね」
好奇心旺盛な研究員によって様々な虫が実験台となった。
蚊や虻、カブトムシにクワガタ、蝶々に蜂や蟻、挙句の果てには蜘蛛やムカデなどの厳密には虫ではない個体すら含まれた多種多様な検証の結果、このお香はそのどれにも高い効果を発揮したのである。
なにせお香を焚いた瞬間にその周囲からザっと音がするかのような勢いで存在していた虫が逃げるのだ。
明らかに避けている上に煙がある内は決してその周囲に近寄ろうとしない。
しかも焚いたお香を動かして虫に近付けると、どの種類も一目散に離れようと必死になるのである。
更にそのお香がたっぷり詰められた箱などに無理矢理虫を入れてみた場合、かなりの確率で衰弱することも確認できた。
中にはそのまま死ぬ個体もいたほどである。
どうやらこの虫除けのお香によって発生する無味無臭のほぼ透明な煙は虫にとって毒にもなるらしい。
もっとも衰弱するのは現実世界の虫だけである。
魔物の場合は嫌がって逃げるだけだったのだ。
流石に魔物だけあってお香への耐性や生命力は普通の虫は比べ物にならないらしい。
「発生する煙の成分分析もしましたが、人体への影響は今のところは確認されていませんね。人間には有害な成分もないようので、人間からしてみれば実に使い勝手の良い虫除けアイテムと言って良いでしょう」
人体への影響については今後も念入りに調査していくとのこと。
仮にこれを販売する時に実は人間の身体にも毒でした、なんてことになったら洒落にならないからだ。
もっとも俺の錬金眼で鑑定しても効果があるのは虫限定となっているのでその心配は杞憂だろうが。
「思いつく問題は……このお香は使うと煙が発生して、その煙が虫除けになる形ですよね? それだと風がある屋外だと拡散してしまわないですか?」
「確かに室内より屋外の方が煙は拡散しやすく効果が薄くなる傾向にありますね。ですがそれを差し引いても十分な効果が望めることが確認できています」
「それなら国内で普通に使う分には問題なさそうですね」
試しに適当なキャンプ場などで使って一晩以上も効果を確認したが、煙が周囲にある内は蚊に刺されることもなかったらしい。それだけ聞くとキャンプ用品などでも使い道がありそうだ。
「それでもどうしても室内と同じだけの効果が欲しい場合は、使用する数を増やすなどで対応するしかないでしょうね」
たとえば南米のジャングルなど日本とは比較にならない数や種類の虫が生息している場所などでは、十分な効果を発揮するためにはそうする必要があるかもしれないとのこと。
だが俺達が考えているような日常生活で使う分には一つで十分過ぎる効果がこれにはあるらしい。
「幸いお香自体は手で持てる上に軽いので、首に掛けて使用できるようにすれば持ち運びやすくて良いかもしれません。お香を収納できるケースに入れればいいので、アイテム自体に手を加えなくてもたぶん大丈夫だと思います」
「いいですね。それなら煙も常に自分の周辺に漂って移動しても問題ないですし」
それならお香を収納できるケースか何かを作ればいいだけで、アイテム自体を分解する訳でもないから難しくないはずだ。
「それとキャンプ場で氷華生成装置を試してみた研究員が麦酒に入れると最高だった、とのことです」
「ああ、なるほど。氷華は冷やすだけで水が発生しないから薄まる心配がないですからね」
キャンプ場でキンキンに冷えたお酒などが飲めて最高だったと、わざわざレポートまで作ってきているのだから笑ってしまった。
有用な報告ではあるが、仕事中に酒を飲んだことを堂々と報告してくるのはどうかと思うのだが。
「氷華も鑑定で安全だと確認は取れていますが、それでも試さない訳にはいかないですからね。その役目を買って出てくれたので多少のお目こぼしがあったみたいです」
その研究員は他にも酒ではなくジュースなどの他の飲料や料理、挙句の果てには回復薬などに氷華を入れたらどうなるかを自分の身体を使って次々に検証してくれたとのこと。
随分と怖いもの知らずの人物がいたものである。
でもそのおかげで氷華も人体に悪影響がないことが現実世界のデータとしても確認できたのは大きい。
ちなみにあくまで氷華は冷やすだけで、回復薬などに入れても特に回復効果は変わらなかったとのこと。
(ダンジョンアイテム同士で化学反応が起こることもなかったか)
場合によってはそういうこともあるのだが今回は違ったらしい。
「このデータを基にして回復薬とはまた違った面白い商品が作れそうではありますが、現状ではお香の方は数を揃えるが難しそうですね」
「あっちは錬金アイテムですからね。今は回復薬作成の方が重要だから、あまりそっちに人材を回せないか……」
氷華の方は生成装置を稼働するのにMPを込めるか、魔石を入れればいいので最初に数を揃えればその後は誰でも作れるようになる。
だから氷華なら安定供給も十分に可能だろう。
「とりあえずお香に関しては人手をどうにかするまで一般販売するのは待つしかないですね。代わりに氷華の方で使い道を探ってみましょう」
そう言っていたのだが、その後の研究で虫除けのお香は錬金術師の指輪に込めることが可能だと判明して、その際には煙ではなく一定範囲に虫が近寄れなくなる薄い膜のようなものが展開されるなど新たな発見がなされた。
そしてそのことで外崎さんを始めとした研究員が成分分析や効果解析に更に張り切ったのは言うまでもないことだろう。
現状報告をしますと、7月仕事などが忙しくて書き溜めはほとんどできてないです。
なので本格的な更新再開まではまだ時間が掛かると思います。申し訳ありません。
ただもうそろそろ仕事の方も落ち着きそうなので、そろそろ続きを書き溜めできたらいいなと思ってます。
もしくはその間に暇つぶしで読めるよう、昔にある程度まで書いて表に出してない作品を出そうかとか考えてますが、まあそれは追々考えるとします。(笑)




