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第四章 5人目のB級誕生と事業拡大編

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第二十二話 CMのオファー

 アルケミーなどの回復飲料と呼ばれることになった回復薬を混ぜた飲料水の開発は順調に進んでいった。


 やはり相手は大手飲料水メーカーなだけあって、味の改良などにおいてはウチとは比較にならない技術や経験を持っていたおかげである。


 こちらも外崎さんなどの優秀な研究者はいるが、味の工夫などはてんでダメだったし。


 むしろ味など気にせずに効能の高さを追求した結果、愛華が噴いたあれを始めとした色々な失敗作を生み出したくらいだ。


 もっともそのおかげでスタミナ回復などの効能の残し方は確立できたので悪い事ばかりではないだろう。


 そうして完成したアルケミーはエナジードリンクと称される種類の飲料水だった。


 試飲させてもらったが、他のエナジードリンクとそう違いはなく普通に美味しい。


「炭酸と回復薬を混ぜるのに少し苦労しましたが、どうにか形になりました。それで改めてこのエナジードリンクの商品名をアルケミーとして、これはそのノーマルタイプで売り出す予定です」

「ノーマルってことは違う味の開発も進んでいる形ですか。というか本当に製品名がアルケミーになったんですね」

「ええ。こちらは仮称のつもりでしたが、思っていた以上に向こうが乗り気になりまして」


 なお、スポーツドリンクタイプの物も開発は続けており、そちらは別の名称を考えるそうだ。


 報告してきた外崎さんは味に関しては手を出していないが、回復薬を混ぜる加工について関係しているので、こうして知っていることを俺に報告しにきてくれたらしい。


 もっともただ単に報告しにきただけではなくお願いもあるようだが。


「それでこの、CMに椎平を起用したい、ってのはどういうことですか?」

「勿論これはあくまで要望の段階です。なんでも販売と同時に大々的に広告を打ちたいとウチもあちらも考えているそうで」


 売れっ子の女優を起用することも考えたが、それよりも回復薬を使っていることを考えて有名な探索者を起用できれば、より一層宣伝効果になるのではないか。


 そして今、世間で有名な探索者の一人として社コーポレーションと専属契約を交わした畔川椎平が抜擢された形とのこと。


 元々容姿端麗だった上に高位探索者となったことで、更にその美貌に磨きがかかった椎平は芸能人と比較しても遜色ない見た目をしている。


 これまでメディアなどへの出演も興味がなくてしてこなかったのでインパクトとしても十分。


 だから可能なら椎平にCM出演をお願いしたいということらしい。


「別に俺に聞かなくても本人に依頼すればいいだけの話では?」

「それとなく話したらダメそうだったみたいです。それで、その……特別顧問ならもしかしたらお願いを聞いてもらえるのではないか、という意見がチラホラ出まして」


 気まずそうにそう言ってくる外崎さん。


 どうやら俺と椎平の関係性を使って押し切れないか、ということのようだ。


「まあ頼むくらいはしてもいいですけど、どうするか最終的に決定するのは本人ですからね」

「ありがとうございます!」


 勿体ぶっても仕方ないので早速椎平に電話してみる。


「嫌よ」


 するとあちらが通話に応じるなり開口一番に拒否してきた。


 まだこちらは何も言ってないというのに。


「どうせCM出演の話でしょう? 専属契約はしたけど、そんなことまで了承した覚えはないから断るわ」

「嫌なら強制するつもりはないが、本当に無理なのか? 報酬は悪くないだろう」

「確かに金銭面では十分過ぎる報酬を提示されたけど、別にそこまでお金は必要としてないもの」


 それはそうだろう。B級探索者なのだから、その気になれば幾らでも稼げるだろうし。


 これは無理かもしれないと思いながらチラッと外崎さんに視線を向けると、両手を合わせてお願いのポーズを取っている。


 彼にはこのアルケミー以外でも回復薬作成などで色々と助けてもらっているので、可能ならそれに応えてあげたい気持ちが俺にもあった。


 またアルケミーが売れれば、その後に展開する予定の例の喫茶店にも良い影響を及ぼせるだろう。そうなれば愛華にとっても助かるはずなので、俺としても宣伝になるのは悪い話ではない。


「それなら他に欲しいものとかはないか? 金で用意できない類いのものとかでも構わないから」

「……欲しいもの、ね。それならなくはないわね」


 だから軽い気持ちでそう提案してみる。


 すると意外なことに即座に却下されなかった。これなら交渉の余地があるかもしれない。


「もし欲しい錬金アイテムがあるならすぐに作って提供するし、俺に出来ることなら可能な限り協力するぞ」

「その言葉に二言はないわね?」

「約束するよ。命を寄こせ、とか無理難題以外ならな」

「そんな無茶なこと言うつもりはないわよ。今度、私がダンジョンに潜る時に一緒に行ってくれればいいだけ」


 その程度のことならお安い御用である。


 だから俺は了承して、椎平の方も前向きに検討してくれることで通話が終わった。


「良かったですね、何とかなりそうですよ」

「ありがとうございます!」


 喜色満面でお礼を述べる外崎さん。その喜びようはかなりのものだった。


「そんなにこの商品が売れてほしいんですか? いや、まあ俺も売れてはほしいですけど、研究一筋の外崎さんがここまで熱心に宣伝について関わるのは意外だったので」

「勿論です! だってこのアルケミーの売り上げによっては、私が好きに使える研究費を増やしてもらえることになってるんですから!」

「……ああ、そうですか」


 自分が開発に関わった商品だから、とかの答えを予想していたのだが、その考えは甘かったらしい。


 本当にこの人は研究一筋の研究バカなのだと再認識させられた出来事だった。

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