第十七話 お土産と転移ゲート
アイスドレイクとの戦いの後、俺は北海道の海洋ダンジョンを時間の許す限り探索し尽くした。
入れるダンジョンは現在の等級であるE級までだから、中には入りたくても入れないダンジョンもあったのは素直に残念である。
本当なら他にも行きたいダンジョンがあったのに。
(級が上がったら入れなかったダンジョン巡りでもするか)
ただそれでもあそこの海洋ダンジョンに出現する各種魔物の解析率を100%には出来た。
ジャイアントクラブ、レインボーサーモン、マウントタートル、バレットフィッシュ、バブルシェル、フライングシャークなどその種類はかなり多い。
この中で一番の成果はレインボーサーモンだろうか。
この魔物は名前の通り虹色に光り輝くサケのような奴である。
ちなみにE級の魔物ではあるが、AGI全振りの魔物で強さそのものは全く脅威ではない。
それこそ攻撃を当てられれば一般人でも倒せるくらいにHPも低いくらいに。
ただし奴は探索者と遭遇しても戦うことなく他の魔物を盾にして逃げることで有名であり、強さはともかく倒すのは難しい奴なのだ。
持っているスキルも逃亡などで、まさに逃げることに特化した魔物だし。
だがその難易度に比例するかのように脂も乗っていて味の方も非常に良い。
中々倒せないので市場に出回ることが少ない稀少食材でもある訳だ。
ただしその解析率も粘ってどうにか100%にしてきた俺にとっては、もう稀少でもなんでもないが。
有り余るステータスで逃げ回るレインボーサーモンを追いかけ追い詰め、狩りまくった甲斐があったというものである。
これで魔物食材専門店の新しい目玉商品を作れるというものである。
「うわー美味しい! これ、脂がたっぷりなのに全然重くないですね!」
「本当ね。これなら脂っこいものが苦手なお年寄りも食べれそう」
そのレインボーサーモンを使った試作品を美味しそうに食しながら愛華や椎平が感想を述べている。
この食事会はお土産を渡すことも目的の一つだが、俺が持って帰ってきたものと錬金で作り出したもので違いがないか確認することも兼ねている。
万が一、錬金で作成したものが食べるのに適していないなどがあったら困るからだ。
(……問題はなさそうだな)
その実験台となることを了承してくれた二人の状態を錬金真眼で確認しているが特に異常は見られない。
これまでの素材でもそういう実験は行なっていたが、この分なら客に提供しても大丈夫そうだ。
一応、何かあった時の為に異常回復薬なども用意していたのだが、使う必要がなさそうでなによりである。
「ジャイアントクラブも悪くはないですね。大きいせいか身も取り易いですし」
「うん、絶品ってほどではないけど全然イケるわ。それに意外とお酒とも合うかも」
ほとんど茹でただけのジャイアントクラブを摘まみながら二人はそう言う。
「二人がそう言うならメニュー開発をお願いしてみるか。魔物食材なら珍しさもあって注文が入るかもしれないし」
その後も二人には色々な試作品を食べてもらい、その感想をメモしていく。
食材提供まではするが、ここから先の改良などは本職の料理人などに任せる形だ。
俺には本格的な料理などできないので。
そうして食事が終わり、北海道で買ってきた魔物食材以外のお土産も渡して一段落したところで話は次に進める。
「俺の方はE級ダンジョンでアイスドレイクが出た以外では特に異常はなかったな。そっちはどうだった?」
「私は相変わらず苦しみと格闘しながら錬金してただけですね」
「愛華の言う通りで、こっちは平穏そのものだったわ。むしろ何もなくて拍子抜けしたくらいに」
朱里達の方も異常はなかったとのことなので、俺がいない間に何か仕掛けてくる勢力が現れるのではという心配は杞憂に終わったようだ。
まあ無いなら無いで構わない。
別に騒動を望んでいる訳ではないので。
「それよりも転移ゲートについての話が聞きたいわ。うまく設置と作動はできたの?」
「ああ、それか。一応は成功したよ」
干渉器と同じでダンジョンコアに繋いだ上で操作する必要があったが、その程度の手間なら問題はない。
海洋ダンジョンで試してみたところ、なんとそのダンジョンの入口に転移できるようになったのだ。
「ただしダンジョンごとに設置できる転移ゲートの数には制限がある上に転移の対象として選べるのは転移型ダンジョンだけみたいだけどな。あと使用回数もあるけど、それは回数補充アイテムでどうにかなるから気にしなくてもいいか」
ダンジョンコアに干渉して片方のゲートを設置。対となるゲートはどこにでも設置できて、それを潜ればあら不思議。どこからでもそのダンジョンの入口まで転移できるのだ。
今回は海洋ダンジョンの上限である五つ全てを俺が作り出した転移ゲートで登録してきた。
これであの海洋ダンジョンならいつでも好きな時に向かえるようになった形である。
「それで椎平に頼みがあるんだが、東京を始めとした日本にある転移ダンジョンを巡って転移ゲートを片っ端から登録してきてほしい。俺も回るつもりだけど、級的に入れないダンジョンがあるからな」
幸か不幸か日本に存在するのはB級ダンジョンまでなので、今の椎平ならどこであろうと入れるはずだ。
「それは構わないけどB級ダンジョンはちょっと難しいかもしれないわ」
「それは分かってる。B級ダンジョンのボスだと出てくるのはA級の魔物だろうからな」
それでも可能な限り登録してくれるとのことなので有難い限りだ。
「そして万が一、俺達以外の転移ゲートが登録されているダンジョンがあった場合は報告してくれ。もしかしたらアーサー達のものかもしれないからな」
敵も同じような装置を使えたのならあの時、急に現れたことにも説明がつく。
適当な転移ダンジョンに転移した後にこっそりと移動してのかもしれない。
B級ダンジョンの確認はできないかもしれないが、それでもその数が搾れるだけで警戒する対象が少なく済む。
あるいは敵の出現場所が分かればそこに罠を仕掛けることも可能になる訳で、そういう意味でも転移ゲートの設置はしておいて損はない。
なお。仮に全ての予想が外れていても問題はない。
俺達が距離を気にせずに日本のどこにでも好きなタイミングでダンジョンに潜れるようになるだけだし。
(それにこっそり上のダンジョンに潜り込めるようになるしな)
バレたら不味いがバレなきゃいいのだ。
といっても今のところは素材確保ならともかくレベリングでそれをやるつもりはないが。
何故なら海洋ダンジョンで乱獲したことで、また一つランクが上昇した俺のステータスカードには妙なことが起こっていたからだ。
八代 夜一
ランク20
ステータス
HP 250(258)
MP 250
STR 246
VIT 241
INT 243
MID 250(259)
AGI 244
DEX 245
LUC 236
スキル 錬金レベルⅦ 錬金素材作成レベルⅥ 錬金真眼レベルⅣ 霊薬作成レベルⅡ アルケミーボックス 錬金術の秘奥 剣技覚醒 水銃レベルⅠ 昆虫殺しレベルⅤ 過剰駆動 竜殺しレベルⅠ 獣殺しレベルⅠ 水棲殺しレベルⅡ
ジョブ 錬金剣士レベルⅦ
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