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第四章 5人目のB級誕生と事業拡大編

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幕間 偵察班の危機

 北海道に突如として現れたダンジョンの偵察を行なっていた俺ともう一人の急造E級探索者パーティは窮地に陥っていた。


 どうやら吹き荒れる吹雪には軽い認識阻害の特性があるようだ。

 そのことを俺達は接近してくるバーサーカーブルの群れに突如として襲われたことで知った。


「索敵はどうした! どうしてここまで接近されるまで気付けなかった!?」

「スキルで警戒はしてたさ! でも接近する気配が全く分からなかったんだよ!」


 バーサーカーブルの群れは接近させさえしなければ楽に倒せる魔物だ。

 近寄らなければ群れの仲間同士で争い合って自滅してくれるのだから。


 だがそれは逆に接近された場合は脅威となることも意味している。


 なにせ狂乱と呼ばれる状態時には全ステータスが倍になるのだ。


 通常時でもE級の魔物としてのステータスを有している以上、それが倍になったらD級以上でなければ危険な相手となるのは自明の理だった。


 本来ならここまで接近されてしまったら下手に攻撃してはいけない。

 その上で急いで離れて距離を取るのが正解である。


 だが思わぬ接近に対して焦った索敵係が攻撃を受けた際に反撃してしまったのだ。

 その反撃によってダメージを受けたバーサーカーブルは狂乱状態へと移行している。


 そして一体でも狂乱すれば周りを無差別に攻撃することによって群れ全体が連鎖的に狂乱状態へと移行するのだ。


 それを座してみていた訳ではない。


 俺達も巻き込まれてはなるものかと必死になって逃げた。


 幸いにも俺達をターゲットにした個体は多くはなかったのと、群れ全体が暴れ回ったことでバーサーカーブルたちも動きが鈍ったおかげで今のところは捕まっていない。


 だが狂乱しているのなら敵の方がAGIは高いのだ。

 少し距離を取ったくらいで安心はできない。


 それに仮に狂乱状態でなかったとしても、数体ならともかく群れで襲われたら数の暴力で潰されることだろう。


「追ってきてる個体はいるか!?」

「分からねえ! スキルが上手く作動しない!」

「くそ! とにかく足を止めるな! 追いつかれたら死ぬぞ!」


 狂乱状態だと基本的には近くの敵を狙う。


 だが時たまターゲットとして狙った相手を執拗に追いかける個体もいるため足を止めるのは愚策だ。


(俺もこいつも負傷してるな。くそ、この状態で襲われたら不味い)


 逃げる際に俺は右腕を、索敵係のこいつは左肩と腹を負傷していた。

 しかも仲間の腹傷はかなり深いのか、今も少なくない血が流れ落ちている。


「くそ、すまねえ。俺が焦ったばっかりに」

「うるせえぞ! 死にたくなければ泣き言をほざく前に足を動かせ!」


 一面の銀世界では背後に敵が迫っているかどうかも分からない。

 それでもどうにか入口の方向へと走り続けることしばらく、


「ま、待て! 前方にも群れがいるぞ!」

「くそ!」


 また別の群れと接敵してしまった。

 しかもその群れは俺達の行方を阻む形で存在している。


(背後から追ってこられてたら挟み撃ちになる……!)


 追ってきていないことを信じて引き返すか、それともこのまま強行突破するか。


 どちらにしても分が悪い賭けになりそうだった。


(どうする、どっちが正しい!?)


 俺達がその答えを出す前に事態は急変を迎える。


「ヤバイぞ! 先の群れも狂乱状態になった!」

「はあ!? なんでだ、俺達はまだ何もしてないぞ!」


 バーサーカーブル同士で自滅でもしたのか。

 なんて運が悪いのだろう。


 だがそんな嘆きを聞いてくれる訳もなく、バーサーカーブル共がその身体を赤く染めていくのが分かった。


 この視界が悪い中でも、それが肉眼でも分かるほどまでに距離が近いということは絶望でしかない。


 こうなった以上は引き返すしかないか。

 だけど負傷している状態でどれだけ逃げ続けられるか。


 それにまた逃げた先で別の群れと接敵する可能性も十分にあり得る。


 そんなことを考えていたが、それら全ては無駄だということが判明した。


 なにせ振り返った後方からも赤い群れが迫ってきていたからだ。


「逃げ道はないか」


 完全に挟まれている以上は逃げようがない。


 終わった、俺達二人がそう諦めかけたその時だった。


 突如としてすぐ傍まで迫ってきていた前方の群れが消えさったからだ。


 絶望を告げる狂乱状態の赤い色が一瞬で消えて銀世界に戻ったことからも間違いない。


「偵察班か、まだいたんだな」


 そして前方からその男が悠然とした足取りで現れた。


 この状況でも危機感など何も覚えていないかのように。


「あ、あんたは?」

「本部から派遣された救援だよ。だから後は任せていいぞ」


 何者なのか、そしてこれからどうするのかという意味を込めた質問にその男は端的に答える。


「それで何かこのダンジョンについての情報は掴めたか?」

「いや、ほとんど何も分かってない。分かったことは吹雪で索敵が妨害されることくらいだ」

「なるほど。おっと、巻き込まれたくなかったら早く行った方がいいな。後ろからまだまだ来てる」


 右目に眼帯を巻いていて俺たち以上に視界が悪いはずなのに、その男はまるで見えているかのようにそう述べる。


「大丈夫、なんだな?」


 この質問に答えずその男は手を振ってさっさと行けと示してくる。


「すまん、助かる」


 俺ともう一人はすぐに走りだした。


 崩壊などがなければダンジョン内から魔物が外に出ることはないので、そこまで行ければ生き残れる。


(本部から救援、あの落ち着きぶりを見る限りE級じゃなさそうだな)


 D級以上の凄腕を派遣してくれたらしい。

 おかげで助かりそうだ。


 そうしてどうにか入口まで辿り着いて外に出る瞬間、背後から爆発音が聞こえた気がした。

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