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[書籍第2巻、4月18日発売!]隻眼錬金剣士のやり直し奇譚-片目を奪われて廃業間際だと思われた奇人が全てを凌駕するまで-【第4回HJ小説大賞 年間最優秀賞受賞!!!】  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第四章 5人目のB級誕生と事業拡大編

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幕間 新米錬金術師の苦労

 先輩から錬金術師になれるジョブオーブが作れて私にどうかと言われた時、即答で欲しいと言った。


 ステータス補正は今よりも高いものの、先輩の錬金剣士と違って他のスキルが使えなくなるなどもデメリットもある。


 だから即答はしないでもう少し考えたらどうかとあの先輩にすら諭されたくらいだったが、それでも私の答えは変わらなかった。


 その理由に錬金術師になれば稼げそうだという点は勿論ある。


 だがそれ以上にもっと確固たる理由があった。


 それは私が先輩の教え子であるということと、その立場を他の奴に渡したくないというものだ。


 ここで他の誰かが錬金術師となった場合、先輩はその人物のサポートをするだろう。


 現状で普通の方法では錬金眼系のスキルを習得できない以上、独力ではまともにスキルレベルなども上げられないからだ。


 会社としても錬金できる人手はあったほうがいいし、それ以上に錬金術師としての力が使える人物はいればいるだけ良い。


 つまり仮に私以外の誰かが錬金術師となった場合、先輩は効率性を考慮してもその人物の指導に時間を割くと思われる。


 私はそれが単純に嫌だったということである。


 常に一緒にいたいとかは欠片も考えていないが、それでもここで急に現れた奴に教え子としての立場を奪われるのは癪だ。


(この調子だと私は置いていかれるし)


 これまでの先輩はなるべく自分の正体を隠すように動いていた。


 それもあって私と同じペースで昇級試験を受けたりもしていたが、それももう終わりが来ている。


 敵がA級という強者だと分かった以上、あの先輩のことだからすぐにそれに追いつこうとするだろう。


 そのペースに私が付いていけるとは欠片も思えない。


 だからせめて錬金術師というジョブを得て弟子の立場を確保しておきたかったのだ。

 このジョブを得ておけば錬金関係のことで先輩との接点を保つことも十分に可能だろうし。


「先輩は今頃北海道か。きっとあっちでも暴れているんだろうなあ」


 ダンジョンを消滅させに行くのをちょっと出張してくる程度で終わらせるあの人のことだ。


 どうせまたなにかとんでもないことをするか、あるいはその切っ掛けなどを掴んでくるに違いない。


 飲みの席で急に私の両親の夢を叶えることを決定するなんて突拍子もないことをする人なのだから。


 そんな常に先を走っている人に置いていかれても、忘れられないために私も錬金術師として頑張らなければならない。


「だけど普通の錬金術師がこうなるとは予想外だったな」


 私にはアルケミーボックスなどはない。

 それでも錬金に必要な素材をアイテムボックスに入れておけば錬金スキルは使用できる。


 だけどそれを行なった際の疲労度などは釜を使った時とは比べ物にならないのだ。


「うっぷ、吐きそう」


 低位の回復薬を一つ作っただけでこの通り滅茶苦茶キツイ。

 それこそ各種回復薬を使っても連続で錬金をしようなんて考えられないくらいに。


 これまで何度もモノクルや釜に頼って錬金してきた。

 だから錬金術師になった後でもそこまで変化はないだろうと思っていたのだが、全然違ったのだ。


「うーキツイー」


 一つ作ってはそれなりの時間の休憩を挟まなければ次を作るなんて無理だった。


 私が先輩のいない研究室に用意されていた簡易ベッドに寝そべって休んでいることからも分かる通り、自分の錬金スキルを主に活用して錬金してみた場合の疲労度は桁違いだった。


 必要なMPとかは変わらないのに、一度の錬金で体の中の活力というかHPなどとはまた違ったエネルギーを根こそぎ奪われた気分になると言えばいいのだろうか。


 とにかく肉体的にも精神的にもしんどいことだけは間違いない。


(釜の力に頼ると楽だけど、熟練度が上がらないのも盲点だったなあ)


 どうやら錬金釜の力に頼った形での錬金では熟練度は上昇しないみたいなのだ。


 だから錬金術師になった時の私はこれまで大量の低位回復薬を作っていても、その熟練度は一つも上昇していなかった。


 こうして吐きそうになりながらも自分の力で作れば上昇するのは確認できたので、熟練度を上げるためには自分の力で錬金することが大切なのだろう。


 わざわざ熟練度なんてものが設定されている以上は、錬金を行う際にそれらがアイテムの出来などに影響を及ぼしていると思われる。


 品質だってそうだったし。


 であれば錬金術師となった私も熟練度を上げる努力を欠かす訳にはいかない。


 今は数をこなして、この数値が上がれば錬金するのが楽になることを信じて頑張るしかないのだ。


(分かってはいる。でもキツイものはキツイのよー)


 先輩はそんな様子を欠片も見せたことはないし、本人に聞いても全くこの症状に心当たりはないみたいだった。

 今の私からしたら羨ましい限りである。


「ふうー……よしやるぞ」


 だけどここで泣き言を述べて逃げていても何も変わらない。

 愚痴る時は愚痴って、今は何度だってこの苦しみに耐えながら頑張るしかないだろう。


 唯一の救いは私が作った回復薬は先輩の特別製と同じように加工がし易いものだったので、会社が高値で買い取ってくれることだ。


 それを心の支えにして頑張ろう。


(あと帰ってきた先輩に頑張ったご褒美を貰おう)


 そう思いながら私はまた錬金をして、再度ベッドに倒れ込んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] いくら回復薬を作っても作っても依頼や注文がきて足りない状況みたいで 供給を上げようにも窯を使用させての厳選した回復薬制作担当を増員するのは難しいかも 愛華のような人材はそうそういないし と…
[一言] やっぱり愛華はぶっ壊れ勢の素質有るよね、普通の人なら苦行に感じるだろうことものほほんとこなせるようだし 夜一が目を付けるだけはある
[一言] 普通の錬金術師はこうなるんですねぇ… このきつさは熟練度で解決するのかランク上げて地力上げればマシになるのかはてさて?
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