第二話 思わぬ知らせ
錬金剣士のレベルがⅦまで上がったことで新たな能力がかなり手に入った。
その内訳は以下の通りだ。
レベルⅤで錬金釜と錬金モノクルのレシピと品質操作
レベルⅥで回数補填アイテムのレシピと複製錬金
レベルⅦで過剰駆動と完全錬金
だが数が多過ぎてどういう効果なのか一度に全てを把握し切れなかった。
すぐに分かったのは錬金釜と錬金モノクル、そして回数補充アイテムのレシピだ。
釜とモノクルは簡易の上位互換となっていて、回数補充アイテムも文字通りの効果を発揮するアイテムらしい。
スキルとして手に入ったのは過剰駆動のみでこれもある意味で分かり易い。
効果は特定の錬金アイテムを使用する際に、過剰駆動を引き起こして本来以上の効果を発揮させるというものだ。
ただし過剰駆動を行使したアイテムはその時点で破壊されることとなる。
例を挙げるとこのスキルは錬金釜に使用できて、そうした際は作り出せるアイテムの品質や効果が高まることなる。
だがデメリットの効果で回数がどれだけ余っていてもその一回で壊れてしまう訳だ。
このことから予想するに、主に回数制限があるアイテムに対して効果を発揮するスキルなのだろう。
複製錬金と完全錬金、それに品質操作は個人指定と同じように錬金する時に効果を発揮するものらしいが、現状では詳細は把握し切れなかった。
また後日にでも検証を進めて、早めに詳細を把握するとしよう。
(とりあえず今ある錬金釜とかは全部廃棄して個人設定などを施したものに換えよう)
そうしておけば防犯としては万全となる。なにせ仮にこちらの警戒を掻い潜って物を盗めたとしても、登録した本人以外は使えないことになるのだ。
また作れる量も倍近くになるだろうし変えない手はなかった。
そんなこんなで後日、会社に出社して外崎さんなど専用の釜を作って補充しておく。
ノーネームのメンバーも、もうすぐ新婚旅行から帰ってくるはずの勘九郎と椎平以外の物は作れた。
「そう言えば最近の椎平は顔を見せないことが多いけど何をしてるんだ?」
「なんでアタシに聞くんだよ」
「そりゃお前ならその答えを知ってるだろうからだよ」
朱里なら椎平と仲が良いという以外にもそういう情報は集めているだろうから。
「知ってるけどお前には死んでも教えねえよ」
「なんでだよ?」
「うるせえ、黙って待っとけ」
取り付く島もないとはこのことだ。この様子では何を言っても話してくれることはないだろう。
(俺に隠れて何をやってるんだか)
正直に言うと気にはなったが、秘密を作ってはいけないなんてことはないので言われた通り黙って待つことにした。
(待っとけっていうことは、いずれは話してくれるみたいだし)
話す気が全くないならこんな言い方はしないだろう。
そんなこんなで椎平とは一週間ほど連絡が取れなかった間に、俺はF級ダンジョンに行ってボス周回を行った結果、ランク13になっていた。
八代 夜一
ランク13
ステータス
HP 188
MP 180
STR 176
VIT 171
INT 173
MID 189
AGI 174
DEX 175
LUC 166
スキル 錬金レベルⅦ 錬金素材作成レベルⅥ 錬金真眼レベルⅣ 霊薬作成レベルⅡ アルケミーボックス 錬金術の秘奥 剣技覚醒 水銃レベルⅠ 昆虫殺しレベルⅢ 過剰駆動
ジョブ 錬金剣士レベルⅦ
(よしよし、順調だ)
アーサーに負けた時から30も全ステータスが上昇した形だ。
それでもまだ足りないだろうが、確実に距離が縮まっていることを実感できる。
そんな時だった。
遂に待っていた椎平から連絡が来たのは。
しかもわざわざ会って話したいことがあるというので、適当な喫茶店で待ち合わせしてその場で待つ。
「お待たせ」
「おお、そうだな……って、お前どうした?」
そうして久しぶりにあった椎平を見て俺は驚いた。
その綺麗になった容姿に……ではない。
まあ元々綺麗な奴だったし、更に前よりも肌などが綺麗になっているように思えるがそこは大きな問題ではない。
変わったのはその立ち振る舞い、もっと言ってしまえば身のこなしだ。
明らかに前とは違うくらいに洗練されているのが分かる。
「随分と鍛えたみたいだな」
「ええ、そうね。かなり努力したわ」
そう言えば前に地震が起きた時も積極的に協会の要請に応えていたみたいだし、俺の知らない間にダンジョンに行って鍛錬を積んでいたらしい。
それも見ただけで分かるくらいに。
「その甲斐あって今日は夜一に報告したいことがあるの」
「へえ、なんだよ」
そう話しながらある物を取り出してきた椎平に俺は今度こそ度肝を抜かれた。
「お前……マジか」
見せられたのは探索者のライセンスだ。
今の俺ならF級のライセンスである。
そして見せられた椎平のライセンスはこれまでのC級のものではなかった。
「夜一、あんたがのんびりしている間に私は日本で五人目のB級になったわよ」
その言葉通りそこにはB級という文字が確かに刻まれていたのだった。
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