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第三章 終わら(せられ)ない借金生活とダンジョン氾濫編

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第十六話 発生する災害はダンジョンだけではなく

 F級試験後に愛華はボス周回によってランクが8にまで上がった。これは獲得ランク経験値倍増ポーションを使っていない上での話だ。


 元々のランクが低かったからF級ダンジョンの魔物でも十分過ぎる経験値となったのが大きい。そうでなければ一日でここまで上げることはない。


(獲得ランク経験値倍増ポーションを使うのは次の丸一日狩りが出来る日だな)


 ランクが上がって体力も増えているおかげか愛華も着実にボス周回をやれる時間が延びてきている。


 この調子で効果が発揮される丸一日くらいボス周回をやれるようになれば、それが最も効率が良い形となるだろう。


 俺の方も愛華の後に少しだけボス周回をしたのだが残念なことにランクは上がらなかった。


 それでもランク10になってからそれなりの経験値は稼げているので遠くない内にランク11になれると思う。


(さっさとランクは上げておきたいし早めにダンジョンに行くか)


 今は溜まった業務――主に特別品の作成と納品など――を片付けなければならないが、それが片付いたら愛華を連れてまた森林ダンジョンに潜るとしよう。


 あそこは上手くやれれば経験値的にかなり美味しい狩場だし。


 そんなことを考えていた時だった。


「お、地震か」


 その揺れが来たのは。それもかなり大きい。


 しばらくその大きな揺れが続いて、やがて収まっていく。


 周りが互いの無事を確認しあっているくらいには大きな地震だった。


 幸いなことにうちの会社では怪我人はいなかったので良かったが、机の上の物が落下する人も中にはいたようだ。


「先輩、震源地は千葉の方みたいです」

「ああ、あっちの海の方らしいな」


 愛華の実家は埼玉なので東京がこのくらいなら大丈夫だろう。

 ただネットニュースで確認したら震源地に近い辺りでは津波警報が出されたようだ。


「津波か……ちょっと心配だな」

「誰かそっちに知り合いでも居るんですか?」

「いや、そうじゃない。俺が心配しているのはダンジョンのことだよ」

「え? 地震と津波がダンジョンとどう関係するんですか?」


 ダンジョンの仕組みを知らない一般人からすると、そういった災害とダンジョンが結びつかないのかもしれない。


 だが残念なことにそういった外的要因は時に連鎖的な災害を引き起こすことがあるのだ。


 今回の地震が津波を引き起こすように。


「あっちの海の方。もっと正確に言うなら伊豆諸島周辺の海の底にD級ダンジョンがあるんだよ」

「海の中にもダンジョンってできるんですか?」

「残念ながら建物だろうが海の底にある洞窟だろうが、何なら空に浮いている雲だろうがダンジョンが発生する場所になり得るんだよ、これが」


 そのくらいダンジョンは見境なしに発生する。

 もっとも転移型なら転移陣が出来るだけなのでそこに足を踏み入れない限り危険はない。


 問題は変異型だった場合だ。そして確かあそこのダンジョンはその変異型だったはず。


(何も影響がないといいんだが)


 そうそう無いとは思うが地震による影響でダンジョンが崩壊なんて起こしたら一大事だ。

 中の魔物が一気に外に溢れ出てくることになる。


(あそこのダンジョンの魔物は……シーサーペントか。そんなのが周辺の海に解き放たれたらとんでもないことになるな)


 まず周囲の魚などなす術なく食い尽くされる。


 鮫だろうが鯨だろうがシーサーペントの相手にはならないので、現実世界の魚類などどうやっても蹂躙されるのがオチだ。


 そしてダンジョンから解き放たれた魔物は本能の赴くままに行動する。

 シーサーペントだったら広大な海の中を泳いでどこまで行くのか分かったものではない。


 下手に取りこぼせば周辺の海産物は壊滅して、それを捕っている漁業関係者などは深刻な被害を受けることになるだろう。


 また漁をしている人が食われるなんて最悪の事態も起こるかもしれない。


「ダンジョンって思っていた以上に私達の生活にも影響があるんですね」

「そうだな、だからこそ世界ダンジョン機構とかダンジョン協会という公的な組織が必要とされるんだ。災害に対応するのに一民間企業だけじゃどうしようもないからな」


 探索者ではない一般人はダンジョンやそこに存在する魔物のことなど自分達とはかかわりのない物だと思っている。

 だがこのことからも分かる通り意外と一般生活にも影響を及ぼす。


 調べてみると案の定、ダンジョン協会からD級以上の探索者に協力要請が行われたようだ。

 震源地近くのダンジョンに何かあった際に即座に対応できるように。


 これは強制ではないが昇級に有利になることもあって日本では受ける探索者は割と多いほうだ。

 あるいは国民性が関係しているのかもしれないが、まあ何にせよ協力者が多いのは良い事だろう。


 なお参加を表明した人物やパーティの中で希望者は、協会のサイトなどで発表されることになる。言ってしまえば名前を売るのにはうってつけの機会になる訳だ。


(繚乱の牙とルミナスが申請を受けたのか。なら大丈夫だな。……って、椎平もか。珍しいな)


 前者二つのC級パーティはB級昇格を目指しているから積極的に参加するのも功績として名前を売るのも理解できる。


 だが椎平が名前を公表するのは意外だった。

 今までも故郷のことがあるからこういう事態には積極的に参加はしたが名前は出さなかったのに。


 そう言えば最近はこちらにもあまり姿を見せないが何かあったのだろうか。


 そんなことを考えていたら協会の隆さんから連絡が入る。


 それは万が一の時に備えて回復薬を用意しておいてくれないかというものだった。


 崩壊によって負傷者が出た際に回復薬が確保できていれば、助けられる人の数は雲泥の差となるのでその要請を断ることはない。


 それどころか社長(オヤジ)はもしもの時は無償提供しても構わないと言ってのけた。

 それで企業のイメージアップが図れるのならその程度は安いものだと。


(最近は業績が好調なのと比例するかのように世間や他社からの妬みとかも凄いらしいからな)


 少しでも好感度を稼いでおこうということなのだろう。

 ただ金を稼げばいいのではないとは会社経営とは実に難しいものだ。


 無論、その辺りの面倒臭そうなことは全て会社に任せているので俺はノータッチを貫くつもりである。


 そのために個人ではなく会社経由で販売している面もあるのだし。


(とりあえず錬金釜を補充しておくか。ないとは思うけど俺がダンジョンに籠ってる時に更なる増産が必要にならないとも限らないからな)


 D級ダンジョンでは今の俺の級では対応してはいけないことになっているので、そんなことが起こることはまずないだろうけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公がせっせとフラグを構築しているようにしか見えないのですが(笑
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