30話-3「冒険者に」
「まあ、今日のメインは俺とのダンジョン潜りやったから換金率はそんなに多くないと思うけどな。大したモンスターも倒してないし」
「そうですね。それよりも有意義な攻略でした。えっと、これからどうしますか?」
「そうやな。今からまた潜ってもいいけど。まだ昼過ぎやし時間はあるな……」
「そうですね……」
「すみません、お待たせしました」
そう話しているとシルクさんが戻ってきた。
「えっと、今回薬草が必要でして少し高めの1.1倍で買い取らせていただきます。ので、合計が銀貨5枚と銅貨3枚ですね」
うん、やっぱ少ないな。まあ、半日しか動いてなくてこれだけ貰えたらいい方か。
さて、これからどうしましょ。
「さて、これからどうするかやな……お? 俊すまんがちょっと待っててくれへんか?」
「いいですけど、どうしたんですか?」
「ちょっとな、すぐ戻るし」
そう言ってギルドを出て行く。なんなんだろうか。
「何かあったんですか?」
「いや、わからないです」
「そうですか? あ、ちなみに今日はもう終わりですか? まだまだ時間ありますけど」
「さっきその話をしてたんですけどね。兼次さん行っちゃいましたし、わからないですね」
「でしたらシュンさん、ここ4日間連続でダンジョン潜られたので休憩されてもいいと思いますよ」
「そうですよね。ダンジョン内で休憩もありですよね」
シルクさんの言う通り休むのも有りだな。ダンジョン攻略も楽しいからいいけど、身体も休憩させないとな。別に変なところはないけど。
「あ、ケンジさん戻って来ましたよ」
戻って来た。早かったな。
「すまんすまん、待たせたわ」
「いえ、早かったですし。何してたんですか?」
「ん、お前のパーティメンバーになる奴が通ったから声かけといた」
「……、はい?」
ん? ほんとに?
「連れてこようと思ったんやけど、急ぎの用があるみたいやったし連れてこれなかったけどな」
「いやいや、ちょっと待ってください。さっきの話マジだったんですか!?」
「ん? 本気やったけど? 迷惑か?」
「いや、迷惑じゃないです。迷惑じゃなくて、嬉しいんですけど……」
ここまでしてくれるとは思ってはいない。
「じゃあいいやん。明日なら顔合わせできるようやし。いけるか?」
「大丈夫、です」
話が進む。自分が考えてる間に決まる。
「じゃあ、決定な。明日の朝、今日と同じ時間にギルド前で集合な」
「わかりました」
僕がいい方向に進むように動いていく。
なんでここまでしてくれるのか。優しいってもんじゃない。僕をどうにかしたいと思ってくれてないとここまでは出来ない。今までに他人が僕に何かしてくれたこともないし、育ててくれたこともない。ただ単に義務でされるとか仕方ないからしたとかそんなものだった。
じゃあなんで兼次さんはここまでしてくれるのか、疑問が浮かぶ。
「すみません。一つ質問いいですか?」
「なんや?」
「聞きにくいんですけど、直球で聞きます。なんでここまで僕にしてくれるんですか?」
「ん? そんな事か?」
「そんな事って……」
はっきり言ってここまでしてくれる人なんて中々いない。普通に考えたらめんどくさいはずなのに。何か僕に求めてるわけではないのかと、ここまでしてくれると、思いたくないことまで思ってしまう。
「簡単な事や。俺が俊、お前を気に入ったからや」
「……え?」
一瞬わからなかったが、すぐに理解する。
「……そ、それだけですか」
「うん。それだけ」
「まじっすかぁ」
その言葉は単純に嬉しかった。
「ん? 何ニヤついてるんや。なんか俺変なことでも言ったか?」
「いや、別に、なんでもないですよ!」
今までにあまり言われたことがない一言だろう。言いにくいし、言われにくい。そんな些細な言葉に人は喜ぶんだと思う。
「そうか? なんや上機嫌やな!」
「いや、なんでもないですよ! あ! じゃあ今日は20階層攻略のお祝いってことでご飯行きませんか!?」
「お? いいんか? この前は割とご飯行くのは苦手そうな感じやったけど?」
「行きましょう! 兼次さんの奢りで!」
「ははは! 言うなぁ! よしゃあ! じゃあ行くか!」
「はい!」
とにかく今は嬉しかった。この人となら飲みに行ってもいいと思えるほどにこのやり取りは嬉しかった。
今までに会ったことのないタイプだったがここまでしてもらうと懐く奴は懐く。ただ自分に合っていたのかもしれないが、この人は尊敬に値する。
この人についていこう。そう思えるほどに。
30話終わり。3章終了です。長いことお待たせしました。




