62話-1「新しいパーティ」
僕の脱退が決まった後、ワイバーンのドロップアイテムを拾って僕達は50階層のボス部屋から出た。
すると、先に出ていた彰さんと美優が出口の前で座っていた。
「奥山……」
「お疲れ様です」
僕が向かってくるとわかると彰さん達が立った。
「……そうか」
僕の顔を見て彰さんはそう言って帰還ゲートに向かって行った。
僕の表情を見てわかったのだろうか。……まあ、後は兼次さんに任せたらいいだろう。
「なんかすまんな」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「彰も思うところあるって事で許してくれ。ああいう奴だからさ」
「はは。もう、知ってますよ」
兼次さんと大樹さんがフォローする様に言うが、僕もそれでいい。別にもう彰さんの事は気にする必要がなくなったからな。
そして僕達は帰還ゲートに乗り50階層を後にした。
◇
兼次さん達とギルドに戻ると、カウンターを挟んで杏子さんがシルクさんとシャロンさんと何か話していた。少し近づくと僕達に気付いたのか、杏子さんが手を上げる。そしてシルクさんの表情は微妙だ。
「しゅんしゅん! お疲れ様!」
そう言った杏子さんが近づいてきて、僕と河合さん、そして後ろの兼次さん達へと順番に目を向けた。
「どうなったか、聞いても大丈夫な空気?」
「あ、はい。僕と河合さんは脱退する事になりました」
あっさりと僕は報告する。隣では河合さんも頷いている。
「そうなんだ。わかった」
そう言った杏子さんが一瞬兼次さんの顔を見た。そして何も言わずにすぐに僕と河合さんに目を向ける。
「じゃあ、会議室借りてるから、終わったら来てくれる? シルシルも連れてね」
「わかりました」
杏子さんはカウンターの向こうにいるシャロンさんに声をかけて一緒に別部屋に向かった。
そして残っているのは不安そうな顔をしたシルクさんだ。
「お疲れ様です……この1ヵ月色々と話を聞いていたので、覚悟はできていますが……しっかりと話を聞かないといけないですよね。朝は50階層に行かれる話をしていたので、どうでしたか? 無事に終わったと思いますが……」
シルクさんの不安はたぶん、僕がパーティを抜けると言う事から来る担当変更についてだろう。それはこの後の話し合いでしっかり来まる。
今はまず決まった事を話そう。
「50階層ボスは倒しました。それで、前から話していた通り、僕は兼次さんパーティから脱退する事になりました」
「……そうなったんですね。今アンズさんに話していたのが聞こえてたので……」
そしてシルクさんは兼次さんを見た。
「そう言う事やシルクちゃん。残念やけど俊と真由は俺のパーティから出て行くことになった。ギルドでは顔を合わせるやろから、付き合いはあるけどな」
「そうなんですね……あ、マユさんも脱退ですか。ケンジさんのパーティから一気に2人も脱退とは……」
「まあ、覚悟してた話やからな。まあ、とにかくワイバーンの素材を換金してほいいんやけど、ええか?」
「……わかりました」
「割合は俊が6割。後は他メンバーで等分や。真由は今回はいらへんって事になってる」
「わかりました。すぐにしますね」
そしてシルクさんはカウンターの奥にアイテムを持って行った。
その後、シルクさんがギルドカードに換金分を入れてくれて、僕は兼次さんパーティでの最後の対応が終わった。
「兼次さん、ありがとうございました」
「ああ、俊も真由もしっかりやれよ。もし何かあれば俺らを頼ってくれたらええからな」
「はい。ありがとうございます!」
兼次さんはやっぱりいい人だな。
すると大樹さんと小百合さんも声をかけてくれた。
「俺らのパーティから抜けるんだ。さっさと先に進んでくれよ!」
「そうよ、どんどん進んで。あの二人は私達が育てたって言わせてね!」
「もちろん。頑張ります!」
「ありがとうございました」
いつものメンバーがそう言ってくれる。彰さんと美優さんは離れた所で僕達を見ていた。美優さんは手を振ってくれたけど彰さんは見てただけだ。あの二人はそこまで一緒にいたわけじゃなかったからそんなものだろう。
「河合さん……もし何かあれば言ってください。回復なら僕がすぐに駆け付けますから!」
「うん。ありがと」
そう言って桐島君と河合さんが握手をしていた。
「じゃあ、僕達は行きますね」
「ああ、頑張れよ」
そして僕達は兼次さん達と分かれた。
やっぱり分かれると言う事は心残りはあるが、ここから先は新しい事が待ち受けている。先に進めることが、ダンジョン攻略する事のワクワク感の方が勝っているのは、前を向いている証拠だろうか。
そして僕と河合さん、シルクさんの3人が杏子さん達が待っている部屋に向かう。
部屋に入ると、杏子さんとシャロンさんが座って待っていた。
「早かったね。もっとゆっくりでもよかったのに」
そう言った杏子さんの隣ではシャロンさんが少し緊張した顔で座っている。
「じゃあさっそくだけど、もう一度聞くね? おじさんのパーティを脱退したでいいんだよね?」
僕達が席に座るとすぐ杏子さんが切り出してきた。それについては僕がすぐに答えた。
「はい。脱退しました」
すると横から河合さんが答える。
「杏子さん、これからは一緒のパーティですよ!」
「うん。そだね! 矢っとって感じだけどねー。まゆまゆは一緒にってことだけど……」
そう杏子さんが僕を見たので、
「はい。僕も杏子さんとパーティを組みます。先にどんどん進むんですよね?」
「もちろん」
杏子さんは満足そうにうなずいた。
「じゃあ、この3人でパーティ結成ですね」
「そうだね。今思うと最初はそんなこと考えてなかったな―。杏子さんが誘ってくれたからできたパーティだね」
「わたしもワクワクしてるよー」
そう僕達が新しいパーティに思いを馳せていると、シャロンさんが声を上げた。
「あの、いいでしょうか? それで、そのパーティーはどっちの担当になるのでしょうか?」
その言葉にシルクさんがびくっと体を震わせる。
「担当の話か―。まゆまゆとしゅんしゅんは何かある?」
「うーん。そうですね。こういう場合は普通どうなるものですか?」
河合さんが質問するとシャロンさんが答えた。
「大体、どちらかの担当にまとめられますね」
「じゃあ、杏子さんはそのままシャロンさんで、私達はシルクちゃんのままってわけにはいかないんですか?」
「そうですね。ギルド側としてもパーティは担当一人がまとめて管理している方がわかりやすいので。今回の様な場合だと、アンズさんの担当の私にするのが無難ですね」
「……っ!」
シャロンさんがそう言うとシルクさんが目を見開く。しかしいつものシルクさんなら食って掛かりそうなのに今は黙ったままだ。
シルクさんは担当を外れたくないだろう。しかしシャロンさんも杏子さんを手放したくないはずだ。今の空気ならシャロンさんが優勢なのにシルクさんが声を上げないのはおかしい。
ってことは、ここでは声を上げられないのか?
少し確認してみよう。
「今の言い方だと、どっちが担当になるのかギルドに明確な決まりがないみたいですが?」
「……そうですね、明確にどっちがしないといけないって事はないですね」
するとシルクさんが声を上げた。
「そうですシュンさん! 決まりはないです。一つだけあるとしたら、冒険者の方が決める事になるんです!」
そう言う事だろうな。つまり、シルクさんが嫌とは言えない。だからシャロンさんに言われたら黙るしかなかった。でも説明なら言うことができる。
「……そういうことです。私かシルクか、どちらにするか決めるのは冒険者の皆様になります」
「なるほど……」
河合さんが頷きながら考えだす。すると杏子さんが声を上げた。
「じゃあ、わたしはどっちでもいいかなー。シャロシャロにはここまでお世話になってるけど、担当は別にどっちでもいいからねー」
「えっ!? アンズさんっ!?」
シャロンさんが驚いた顔をする。杏子さんにそう言われるとは思ってなかったのだろう。僕もびっくりしてる。
「だって大体は換金だけでしょ? あ、訓練場の許可もあったか。でもそれだったらシルシルでもできるでしょ? だからわたしはどっちでもいい」
そう言われてシャロンさんは「まじか……」と顔をしていた。
ってことはと、河合さんはどうなんだろうか?
「河合さんはどう?」
「私? 私はそうだね……奥山君に任せるよ」
「僕に?」
僕に任せるのかよ! ちょっと河合さん、最近選択を僕に任せすぎじゃないですか?
そしてシルクさんを見たら僕の顔をじっと見ていた。
まあ、僕は決まってるんだけど。
「じゃあ、僕はシルクさんがいいです」
「えっ!!」
明らかにシルクさんの声のトーンが上がった。
「シャロンさんは前に僕の事誘ってくれましたけど、ちょっとシルクさんを出し抜こうをしてましたからね。そう言うのは嫌いじゃないですけど……シルクさんは最初から担当してくれてるので慣れてるので、選ぶならシルクさんですね。シャロンさんには申し訳ないですけど」
「シュンさんっ!!」
シルクさんが立ち上がって嬉しそうな顔をする。
久しぶりだけど、うん。シルクさんは可愛いな。
すると杏子さんが手を挙げた。
「じゃあ、わたし達の担当はシルシルで良いかな。わたしは別に問題ないよ。まゆまゆもいいよね?」
「はい。今までと変わらないのでそれで大丈夫です」
「じゃあ、シルシルこれからはよろしくね!」
「はいっ! みなさんありがとうございます!」
シルクさんが目一杯頭を下げた。




