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現代にダンジョンができたら潜りますか?〜私は今の仕事にしています〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第6章「自分が強くなったという自負」

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58話-3「本当の冒険者とは」



 51階層から52階層に続く階段を降りると、見えるのは52階層。そこは51階層と同じく洞窟の階層だった。


「52階層も見た目は変わらんな。広さも同じに見えるし」


「光ってる鉱物も同じですね」


 広い洞窟をルミエル鉱の光が照らしている。


「じゃあ、さっきの通り今から2時間進むで。同じ感じやったらマップを作る必要もないやろうけど、モンスターは変わってくるかもしれへん。気を付けて行くで!」


「「はい!」」


 そして僕達は進んで行く。


 進み始めて数分。まず現れたのは3体のホブゴブリン。盾と剣を持つ個体が2体、剣のみが1体の編成だった。連携は51階層と変わらない程度だったので、兼次さん達前衛だけでも対処できた。


 次に現れたのは5体のホブゴブリン。盾剣が2体、剣が2体、弓が1体。それも今までと変わらず簡単に対処できた。


 淡々と進んで行く。


「ここまではそう変わらへんな。強さもほとんど同じやし」


「言った通りだろ。51階層となんら変わらない」


「まあ、まだ最初だし。ここから先は変わってくるかもしれないけどね」


 彰さん達の言葉を聞いて頷く。

 まあ、僕は可能性を言っただけだし、変化がないという答えがわかるから、探索しない理由にはならない。


「じゃあ、先進むぞ。美優の言う通り先に進めば何か変わるかもしれないだろ、彰」


「かもな。でも、俺は変わらんと思うけどな」


 大樹さんと彰さんが軽く言い合ってから、僕達は先に進んで行く。




 そしてそこから先に出て来たのは、ホブゴブリン8体だった。それは51階層と武器の構成が少し違っている。しかし彰さんは鼻で笑う。


「また同じだな」


「そう呟いてんで、いくで!」


 51階層と同じ連携で兼次さん大樹さんが盾を構えて、迫りくる盾剣のホブゴブリン2体を相手する。その横から剣を持つ個体が2体、彰さんと美優さんに向かっていく。そして双剣が1体様子を見ながら美優さんに向かう。そして弓2体が兼次さん達ではなく後衛を狙い、その後ろで杖が魔法を使おうとしていた。


「俊、頼むで!」


「はい!」


 僕を含む後衛に一声だけで指示を出す兼次さん。する事は変わらず、僕が切り込んで相手の後衛を潰す。それか河合さんの範囲魔法を食らわせる。

 この場合なら、


「奥山君、撃っちゃっていいよね?」


 すでに河合さんが魔法を構築していた。ここまでしているなら撃たせた方がいい。


「うん、撃っちゃって」


 すでに小百合さんが相手の後衛に牽制をしている。こうなるなら、僕は前衛に参加した方がいいだろうか。

 そう考えている間に河合さんが魔法を放った。


「『フレイムバンナート』!」


 爆発するような炎が相手の杖を含む後衛を包み込んだ。その威力は絶大。一撃で河合さんはホブゴブリン3体を葬った。


「上出来ですよね?」


「よかったわよ。私の仕事は一瞬だったけれどね。威力はまゆちゃんには勝てないから私は地道に牽制するだけだけど」


「河合さん! 流石です!」


 と、後衛はひと段落したと盛り上がる。

 その間に前衛も戦闘が終わりを迎えていた。

 彰さんが剣と双剣を倒し、ほかのメンバーがそれぞれ1体を倒したら終了だ。ホブゴブリンに対しては彰さんが一撃で倒せるので油断しても全然大丈夫だろう。


 僕と言えば、一言指示を出しただけで今回は何もしていない。河合さんが魔法を撃つか、僕が攻めるかで後衛を倒す事ができるので、河合さんが頑張れば僕の出番はなくなる。


 ……だったら、52階層も余裕を持って進めるはずなんだよな、このメンバーなら。


 そう思いながらすでに倒されていたホブゴブリン達のドロップアイテムを拾いに向かう。

 彰さんは満足そうな顔をして美優さん達と話していた。


 まあ、余裕を持てるなら彰さんの意見を尊重してもいいかもしれないな。早く進みたい気持ちもあるけど、足並み揃えて行かないと。足並み揃えると言っても僕のレベルが一番下だから、僕がレベルを上げないといけないんだけど。

 そんなことを考えながら先に進んでいく。






 そして、52階層の攻略を開始してから2時間が経過した。


「よし、みんな集合や」


 兼次さんが全員を集める。


「これで2時間や。ここまで51階層とあまり変わらへん感じやったけど、みんなは何か感じたことあるか?」


 ここまでの道中は51階層と比べても変化はなかった。ホブゴブリンが統率を組んで攻撃して来るだけで、数も変わらない。少し編成が変わったりしたが、このまま進んでも51階層の延長だと思えるレベルだ。大したことはない。


「特になかったわね。51階層と変わらなかったんじゃないかしら?」


「そうだな。同じにしか見えなかったな」


 すると彰さんが笑う。


「なっ、変わらないだろ? 50階層までも変わらないエリアばかりだったんだから、早々変わらないだろ。俺の言った通りだろ? 奥山」


「そうですね。僕から見ても変わりはありませんでした。でも、それもここまで来たことでわかった事です。それに危険もなかった事もわかりました。僕はここまで進んで正解だったと思います」


「……まあな。危険はここまでは無かった。それは認める。でも、ここに来る必要は無かったなら、51階層でレベル上げしてても同じことだったなってな」


 ……どうにか自分の意見が正しいと認めさせたいのだろうか。その意見は間違っていないけど、「実際に目で見た情報」と「たぶん」では全く違うと僕は思うんだけどな。


「まあ、彰。奥山にそんな意地悪言うなや。彰の方がダンジョンの先輩なんやし広い心で見といたれ」


「そうだな。今回でわかったから、次からは様子見も危険になるような事もしないだろ。だったら、俺もそこまで言うつもりないしな。奥山、すまんな。今のは冗談って事で」


「ははは。いいですよ」


 僕は笑う。

 言い方も好きではないし、あまり彰さんを好まない。でも。高火力アタッカーとしては実力がある。このパーティのバランスとしては必要な人材だからな。これから彰さんの性格を知って、折れるところは折れて、いいパーティにできたらいいと思っている。


 ……会社と同じだな。




「これで、51階層を余裕で突破できるようになれば、52階層は進めれそうやってわかったな。それでもこの先が全く同じと言うわけではないけど、難しい、危険やと思って進む必要は無くなりそうや」


 兼次さんの言葉に頷く。


 ここからの方針としたら、51階層のモンスターの連携を全員が余裕で対処できるようになればいいだろう。そうなると、こちらの連携が肝になる。最終は51階層出口にいる30体ほどのホブゴブリン達を危なげなく倒すことを目標にすれば、この先のこのメンバーの連携は盤石となるだろう。

 そうするには、僕達の息を合わせるしかない。訓練あるのみで、51階層の前半であれば死ぬことが無いだろうし充分訓練ができそうだ。その前にもう一回51階層に戻ると30体を倒さないといけないはずなので、それは骨が折れそうだが、たぶんみんな同じような考えに至っていると思う。

 そう考えれば、次回の52階層への挑戦は、そこまで期間が開かないんじゃないだろうか。


「じゃあ、帰るでー」


 兼次さんの言葉で、全員が返り支度をする。

 剣を鞘にしまい、水を飲む。散らばっていたドロップアイテムを片付けるついでに、不必要な物もしまう。


「奥山君、彰さんに色々言われてるけど、大丈夫だった?」 


 いつの間にか近くにいた河合さんがが、少し心配そうに聞いてくれた。


「まあね。兼次さんの言う通り慣れるしかないし。あれぐらいなら会社に比べて楽だから」


「そっか……続けられそうならいいよ。あまりぎくしゃくしてると大変だからね」


「そうだね。ありがとう。頑張って合わせてみるから」


 そんなことを話していたら、小百合さんが河合さんの事を呼んだ。


「まゆちゃーん、ちょっといいかしらー?」


「はーい。じゃあ、私行くね」


 そう言って、河合さんは小百合さんの所に走って行った。


 まあ、仕方ない。我慢する事もこのダンジョンで稼ぐためには仕方ない事だ。まだこのパーティは始まったばかりだし、見えてない事も多い。これから調整していけばいいパーティになると思う。


 だから今はこのままゆっくり足並み揃えて進んでいけたらいい……のかもしれないな。


 そう思いながら帰る準備を進めた。






 そして準備を終えた全員がその場を後にして歩き出す。


「まあ、これぐらいだったら悪くはなかったかもな」


「アキ君、調子いいんだから」


「彰、もう少し俊と仲良くしてくれよ」


「それは大丈夫だろ。まだ始まったばかりだからな」


「まあね。俊くんと彰の相性はそこまで悪いとは思わないんだけど」


「彰も折れるところは折れや。先輩なんやから」


「……兼次さんにそう言われると、仕方ないな」


 帰還の隊列として一番後ろにいた僕は前方でみんなが話しているのを見ていた。元の5人は1年ほど一緒に行動しているから仲がいい。河合さんも今は桐島君と話している。

 一度進んだ道は2時間程なら新しくモンスターもポップしにくいから、気持ちに余裕ができる。


 だから、まだ52階層の途中なのにそんな日常を切り取ったような光景を、少し離れて見ながら僕も歩いていた。


 そう、つまり安心していた。


 ここまで大きな危険がなかったので、危機察知が薄くなってた。何もない、何も起こらないと思い込んでしまっていた。

 尚且つ、広げていた『サークナ』に反応がなかったことも要因だろう。




 だから、気づかなかった。


「……っ!!」


 その瞬間、背後で全身を刺すような殺気が溢れた。


 吹き出す冷汗。足を止め、今までの中で最も早い反応速度で殺気の元凶を見た。


 数メートル後ろをこっちに向かって歩くモンスター。遠くから見えるのは、人型で赤い髪をし、右手に太刀を握っている。そして、額に見える一本の赤黒い角。


 ここまで近づかれていた事に一瞬思考が持って行かれた。

 その間、2秒も経っていない。しかし、その一瞬でモンスターは僕達との距離を詰めた。


「兼次さんっ!!」


 そう叫んだと同時に剣を抜く。一瞬にして戦闘態勢に入る。

 兼次さんを呼んだのは咄嗟に頼れるのがその人だったからだ。この状態では他の人を気に掛ける事ができない。目の前に迫るモンスターに釘付けの視界は、周りに目もくれずそのモンスターの行動を追う。


 明らかにそのモンスターのスピードは今までのモンスターとは違った。スキル『瞬動』。その一瞬にして距離を詰めるスキルを使ったとしか言いようがない。


 一番後ろにいた僕が最初に狙われると踏んで、正面に立つように移動する。


「おぉぉぉぉぉっ!!」


 叫ぶ。圧倒的な威圧が襲ってくる感覚があるが、気合で吹き飛ばし、対峙するように構える。

 しかし、


「は……っ!?」


 そのモンスターは僕の横を通り過ぎた。


 一瞬意味がわからず硬直する。後手に回ってしまった事で対応が遅れた。

 その行動が示すのは一つ。僕ではなく後ろのメンバーを襲うことだ。


 振り向き、剣を振る。しかし一拍置いた反応ではモンスターに攻撃を食らわせる事が出来ず、空を切る。


 その瞬間、パーティのメンバーの行動が目に入る。

 兼次さん達が戦闘態勢を取っているが、動きがバラバラだ。


「カバームーブ!」


 一番先頭に居た兼次さんがモンスターの目の前に移動するが、モンスターはそれすら気にせずに兼次さんの横をすり抜けた。

 それを追う兼次さんの剣も空を切る。


 そして、そのモンスターが狙っていたのは……




「えっ……ごほっ……」


 兼次さんの後ろにいた女性が口から血を吐いた。


 滴る鮮血。


 僕達の防御と攻撃をすり抜け、目的に辿り着いたモンスター。




「河合さぁぁぁぁん!」


 赤黒い一本の角を生やした『鬼』が、河合さんの腹部に太刀を突き刺していた。






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