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現代にダンジョンができたら潜りますか?〜私は今の仕事にしています〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第6章「自分が強くなったという自負」

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57話-4「51階層」



 片手剣ホブゴブリンに向かって一気に距離を詰める。


 それにしても、戦力の分散をまず考えるなんてゴブリンリーダーの指示は的確だ。先にゴブリンリーダーを潰したいが、ここをおろそかにすると瓦解する。


「はあぁぁぁぁっ! リア・スラッシュ!」


 迫っていた片手剣ホブゴブリンを一撃で葬る。オーバーキル気味でいい。ここでSPをケチってたら致命傷になりかねない。


「『ファイアボール』!」


 その勢いのまま迫っていた双剣に魔法をぶつける。そして剣を振り下ろすが、双剣に阻まれた。

 彰さんほどの威力がなければ一撃では難しいか。


「……っ!」


 その瞬間、遠く……ゴブリンリーダーの方から魔法が飛んできた。自分に着弾する前に避けたが、まだ魔法は続いている。


 しかしそれが落ちる前に別の魔法で相殺された。


「奥山君! この魔法を打ち落とさないとダメ! サブリーダーは牽制できないけど! やるよ!」


 ナイスだ河合さん!


「うん、それで! 河合さんはそのまま、魔法を相殺して……」


 そう叫びながら双剣と剣をぶつけあった瞬間、思ってなかった出来事が起こった。


「うぜぇな! やっぱり、リーダーを先に倒さないとダメだろ!」


 僕よりも先に戦闘に入っていた彰さんが双剣ホブゴブリンを倒した瞬間に叫んでいた。

 それに加えて、美優さんに向かって叫ぶ。


「美優! 残りの双剣はお前が倒せ! 俺はリーダーを潰す!」


「えっ!? アキくん……っ!?」


「ちょっ! 彰!」


 その瞬間彰さんが単独行動でゴブリンリーダーに向かって走り出した。


「河合! ゴブリンリーダーに向かって魔法を撃て! なんでもいい!」


「え……っ!?」


 河合さんにも指示が飛ぶ。

 その指示で迷った河合さんが魔法への対処を一瞬遅らせた。


「あっ!」


 その瞬間撃ち漏らした魔法が落ちてくる。その一つが僕に向かってくる。


「くそっ!」


 この一瞬ではあの魔法を対処できない。なら!


「おらぁぁぁっ!」


 双剣を弾き、ホブゴブリンを盾にして切り抜ける。背中に火球が当たった事で一瞬怯んだ。そのうちに剣を構える。


「パワーチャージ!」


 そして再度その距離を詰めて放つ。


「リア・スラッシュ!」


 その一撃で双剣ごと斬り倒した。


 ……くそ! なんであの人は!


 悪態を吐きながらサブリーダーに目を向ける。すると、そいつはこっちではなくゴブリンリーダーに向かって走りだそうとしていた。


 ……行かせるか!


 一気に『瞬動』で距離を詰め剣を振り下ろす。

 しかし、サブリーダーも剣で僕の一撃を防いだ。


 一瞬の膠着。その一瞬で今の状況を把握する。

 こっちの相手は残りはサブリーダーのみ。大樹さん達は自分の敵を倒し終えてる。しかし、兼次さん側は片手剣と双剣とサブリーダーが残っている。

 仕方ないが、ここは……


「河合さん! ゴブリンリーダーに魔法を! 特大の!」


「えっ! う、うんっ」


「小百合さんは兼次さん側に! 大樹さんはゴブリンリーダーの方に!」


「「わかった!」」


 小百合さんは言われる前に矢を放ち、大樹さんは僕の横を抜けるように走り出す。

 ここで河合さんが魔法を撃たないと彰さんはやられる。

 彰さんが動かず、まずサブリーダーチームを倒していたらこういう事にはならず、河合さんの魔法で相手の魔法を相殺している間に制圧できたはずだ。

 それを。なんであの人はあのタイミングで向かったんだ!


 彰さんへの悪態を吐きながらゴブリンサブリーダーと剣を打ち合う。


 ……こいつ、思ったよりも手ごわい。

 でも、そんな事言ってられない!


 神経を研ぎ澄ます。


「らあぁぁぁっ!」


 足払いをし、剣を弾き、蹴りを入れ、魔法を放ち、そして剣を振り下ろす。


「リア・スラッシュ! ……ちっ!」


 ぎりぎりの所でバックステップを取られ致命傷を与えられない。でもその距離なら。


「『サンダー・ボルト』!」


 弾かれたようにゴブリンサブリーダーが体から煙を上げる。雷の麻痺による硬直で動きが止まる。

 そして、『リア・スラッシュ』で止めを刺した。

 ゴブリンリーダーを見る。


「彰さん! 大樹さん!」


 河合さんの声に盾と打ち合っていた彰さん達がバックステップを踏む。


「『ライトニング』!」


 その雷がゴブリンリーダー5体に落ちる。しかしその前にゴブリンリーダーが叫び周りが動いていた。

 そのせいで、倒せたのはローブと盾の1体ずつだ。ゴブリンリーダーはまだ生きている。

 しかしそれを見て彰さんが笑う。


「あと3体だ! 一気に決めるぞ! パワーチャージ!」


 剣を横に流す様に構えて力を溜める。そのSP量は一撃で3体とも倒すつもりだ。

 それをわかってか、大樹さんが彰さんの前に立ち守る様に盾を構える。それは倒せていない前方の3体に対する防御。


「アキくんっ! 後ろぉぉぉっ!」


「え……っ?」


 その声に振り向いた瞬間、彰さんの腹部に剣が刺さった。

 兼次さんと美優さんが倒しきれていなかったサブリーダーの一撃だ。


「ぐっ……」


 そのせいでスキルがキャンセルされる。


「アキくんっっ……っ!」


「あきらぁぁぁっ!」


 兼次さんが距離を詰め、彰さんに刺していたサブリーダーに向かって剣を振り下ろす。剣を引き抜きその一撃を受け止めるサブリーダーだが、兼次さんの左手に持つ盾で吹き飛ばされた。


 僕もゴブリンリーダーに向かって走り出す。


「佑! 彰を回復や!」


「はいっ!」


「アキくん! 今回復を……」


「いや、大丈夫だ。致命傷じゃない……」


 身体を支えようとした美優さんを彰さんが手で止める。血が出ているが倒れるまでではないようだ。しかし怪我によってすぐに攻撃に復帰できない。


「そっか、良かったわ。でも、とにかく回復や。美優は彰を見といてくれ。俺はあいつを倒す」


 飛ばされていたゴブリンサブリーダーが兼次さんに向かって走っている。


「俊、大樹! ゴブリンリーダーは任せたで!」


「了解です!」


「ああ!」


 言われなくてもこのまま倒すつもりだ。


 大樹さんが3体の猛追を一人で受ける。そこに河合さんの魔法が加わった。

 これで少し溜めれる!


 魔法を練る。魔力を多く込めて、ここでぎりぎりまで使うつもりで、構築しろ!


「大樹さん下がって!」


「カウンターシールド!」


 僕の声で大樹さんが距離を置く。

 ローブのホブゴブリンは河合さんが倒した。残り2体。

 そして僕が放つ魔法は氷。


「『アイスエイジ』!」


 一瞬にしてその2体が氷の世界に閉じ込められた。

 その瞬間光の粒となって消えたのは盾のみ。ゴブリンリーダーはまだ消えておらず、氷が震えている。しかし、ここまで魔力を込めた氷はそう簡単には砕けない。


「大樹さん、合わせてください。この一撃で僕のSPもなくなります」


「俺もギリギリだ。合わせる。一撃で決めるぞ!」


 そして剣を構える。


「「パワーチャージ!」」


 両方の剣が光る。

 両方が残りのSPを使い切る程。オーバーキルでいい!


「バーストブレイカー!」

「リア・スラッシュ!」


 その両側から一斉に撃ち出された一撃は、ゴブリンリーダーを凍りごと斬り、光の粒へと変えた。


「……ふう」


 その場に座り込む。自分の魔力とSPの量がギリギリしか残っていない状態に息を吐く。

 ここで使った量が通常よりも多かった。もっと節約して倒すことはできただろう。でもあの状態では無理だ。


「俊、お疲れ」


 立っている大樹さんが僕の肩に手を置く。


「兼次さんも終わったみたいだぞ。これで全部倒したな」


 振り向くと小百合さんの助けを受けながら、兼次さんがゴブリンサブリーダーを光の粒に変えた瞬間だった。

 そりゃ兼次さんなら倒せるだろう。信用している。


 僕は立ち上がり兼次さんの所に向かう。すると兼次さんはそのまま彰さんの元に向かった。


「大丈夫か彰?」


 彰さんが兼次さんを見て起き上がる。


「ああ。大丈夫だ。急所でもないし佑の回復魔法で治った。少し危なかったけどな」


「少しどころじゃないよ! すごく焦ったよ!?」


「ごめんごめん。でも、あれぐらいの傷なら今までにあったし、ポーションもあるし佑の加入で回復が通常になってたからな。少し無茶したかもな」


 無茶どころじゃないと思うけどな。5体に1人で突っ込むなんて。それもゴブリンリーダー相手に無謀だろう。


「俺らが間に合ったから良かったものの。こっちは俊が3体即倒して動けたんだ。俊に感謝しろよ?」


「いや、俺だって双剣を1体倒して向かってるからな。奥山なら3体ぐらい倒せるだろ。それも込みで動いたわけだし」


「いやいや、それなら先に行動を伝えておかないと。美優ちゃんも焦ったでしょ?」


「焦ったよ! 急に一人で向かうなんてびっくりしたよ! アキくんみたいに双剣ホブゴブリンを一撃で倒せないんだからね!」


「まあそれは相談不足だったけど、あの状態なら難しかっただろ?」


 いや、あの状態で難しいって思ったらならその行動を取らなければよかっただろ。


「まあまあ。一旦ここでは辞めとこうや。時間も遅いし話は後にしてな」


「「兼次さん……」」


 みんなが兼次さんに言葉を止める。それで止めると反省が……。


「今は51階層突破出来るって事を噛みしめてな。ドロップアイテムを拾ったら出口に向かうで」


「「了解です」」


 時間も遅いしドロップアイテム拾って帰るか。仕方ない。

 そして、僕達はドロップアイテムを拾って出口に向かった。所詮ゴブリンだったのか良いアイテムは無かったのは残念だったが。






 出口はいつも通り洞窟だったので安心する。

 モンスターに襲われないってわかってるだけで、ここまで安心できるんだな。

 みんなも安心したのか少し気が抜けていた。


 すると歩きながら兼次さんが彰さんに声をかけた。それを僕は横で聞いていた……聞いてしまった。


「彰。さっきの話やけど、俺は無茶やと思ったけどな。もう少しこっちで倒してから向かっても良かったと思うで?」


「それもある。でもな、悪いのは俺だけじゃないと思うぞ。俺的にはもっと奥山がフォローできると思ったんだけどな」



 ……。



「……は?」


 僕も気が緩んでいたのか、そのタイミングで来た理不尽な言葉に、一瞬で溢れるように押えられなかった言葉がこぼれた。


「……じゃあ、どういう理由で彰さんはあのタイミングで無謀にも一人でゴブリンリーダーに向かったんですか?」


「奥山君っ!?」


 河合さんが焦る様に僕を見たが止まらなかった。


「あのタイミングで行く意味はなかったでしょ。あのまま戦ってたらサブリーダーのチームを倒しきる事が出来ましたよね? その後ゴブリンリーダーは全員で囲めばよかったじゃないですか?」


「は? 無謀ってどういう意味だ? 先にゴブリンリーダーを潰さな無理だっただろ? あのタイミングで行くのがベストだと思ったから向かったんだが?」


「なるほど、あのタイミングがベストですか。でも彰さん、ゴブリンリーダーを倒せてませんよね?」


 その言葉に彰さんが声を荒げた。


「おい! その言い方はどういう意味だ! 俺が間違ってたってことか!」


「間違ってるも何も、結果がそう言ってますよ。それに僕だけじゃなくて他の人も指摘したのに反省する気が無いみたいなんで、もう一度僕が言わせてもらいます。あれは周りに迷惑かけてましたよ」


 その言葉で空気が静まり返る。

 だから、間髪入れずに言葉が溢れた。


「それに僕は十分フォローしたと思いますけど? はっきり言うと、ゴブリンリーダーの指揮は厄介でしたがそれを守る盾ゴブリンもゴブリンリーダーもこっちを攻める気配はありませんでした。遠距離の弓と魔法は僕が指示して、河合さんが魔法を打ち落としてた事で魔法を抑えられてましたし、小百合さんが弓を倒しきれました。そのあと、全体を見てもろい箇所に攻撃する事で牽制もしながら相手を崩せます。ダメージを食らったら桐島君の回復魔法で回復できる事で、少し無茶な行動ができます。だから、各自1体ずつ倒せば数の有利ができます。そうすればさっきよりも簡単に倒すことができたはずです。でもそれを彰さんが勝手に行動する事で、彰さんのフォローをしないといけないイレギュラーができました。流石に彰さんでもゴブリンリーダーを含めた5体を一人で倒すことはできないでしょう。実際がそうでしたから、僕の判断は間違ってなかった。それに、自分の行動のための連携にならない指示を美優さんと河合さんにした事で、タイムラグができた事も危険を増やした原因です。最終的に自分はダメージを食らって戦えず、ゴブリンリーダーを倒したのは僕と大樹さんです。迷惑かけた事は自覚してますか?」


 まくし立てるようにすらすらと不満が僕の理論を纏って口から出てくる。

 僕が今までにないような怒りを見せている事に全員が戸惑っているのはわかるが、ああ言われたら止まらなかった。


 そして、彰さんを見ると怒っている様に拳を握っていたが、回答はない。


「意味わかりましたか? 今回、どれだけ自分が迷惑かけたって事を……」


 しかし僕の言葉を遮る様に彰さんが言った。


「そうだな。俺は迷惑かけたよ。でもな、お前は全く迷惑かけてないって言えるのか? お前も一人で魔法を撃って、一人で行動しようとして俺らに迷惑かけただろ。それを俺らは文句言わずにフォローしたぞ? それなのにお前はだらだらと文句を言うのか? パーティは助け合う事が前提だろ? こういう時にフォローし合うのがパーティだ。お前はずっとソロでしてきたし、まだダンジョンに来て日が浅いからわからないだろうけどな。ちゃんと周り見て言葉を言え!」


 は? そう言う事なのか? 僕が間違ってるのか?


「いや、僕が言ってるのはあのタイミングで一人で行った事がパーティのバランスを崩したってことですよ。僕の場合は自分一人で対処ができると確信して行ったんです。迷惑をかけたかもしれませんが別に命がかかった場面じゃ……」


「じゃあお前は一人で対処ができないミスは絶対するなって事だな。そんななんでもかんでも一人でできるならパーティ組む必要が無いだろ。だったらお前は……」


「待て! 彰!」


 彰さんが全部言う前に兼次さんが止めた。


「それ以上言うな。頭冷やせ! さっきのお前一人での行動はお前も悪い。でも、俊お前もや! こんな所で怒りながら言う事やないやろ! お前も頭冷やせ!」


 兼次さんの言葉に少し冷静になる。


 言いすぎた事は確かだ。でも、いや……。


「とにかくこんな所で言い合うな。ゼロ階層に戻るで! ミーテイングや!」


 兼次さんがいつもと違い乱暴に僕と彰さんの腕を引っ張って帰還ゲートに向かって行く。


 そして後ろからは驚きと安堵の声が聞こえた。






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