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現代にダンジョンができたら潜りますか?〜私は今の仕事にしています〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第6章「自分が強くなったという自負」

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57話-2「51階層」



 翌日、準備を整えた僕達は51階層の入り口にいた。


「体調は万全か? 装備はええか? 今日は1日長い攻略になる。大変やけど気張っていくで!」


「「はい!」」


 兼次さんの号令と共に51階層の攻略が始まった。

 まずは、昨日と同じように広い洞窟を進んで行く。相変わらず一本道をまっすぐ進むだけだ。


 周りの光る鉱物は『ルミエル鉱』と言うらしい。昨日クエストとして提出したら10個で銀貨5枚だった。51階層入り口付近のルミエル鉱は品質は良くないようでそれぐらいの値段になったが、奥に行けば行くほど品質が良くなるので値段が高くなるみたいだ。

 ちなみに、ゼロ階層のほとんどの建物の光源として使われているため、消耗品のようで需要は多い。51階層では難しいが、先に進むとこれの採掘だけでも食っていけそうだ。その場合冒険者とは言わないけどな。


 そのまま進んで行くと、昨日初めてモンスターと会った付近で同じく統率が取れたホブゴブリン5体が現れた。

 前回と同様に簡単な連携で倒すことができた。特に難しい相手ではない。




 2時間ほど進んだところで一旦休憩を挟む。昨日の折り返した地点だ。


「ここまでは昨日来た所やし、順調に来れたな。でも、ここから先は未知やからな。気ぃ張って行くで!」


 兼次さんの激で気を引き締めて先に進む。

 しかし、マッピングする必要もない程まっすぐな道で脇道も見当たらない。エリアだけで言うと49階層までの方が動き回る必要があったから、難しいと言っても過言ではない。それに道中は変わり映えのないホブゴブリンばかりで特に苦戦する事もなく進めた。




 淡々と進み、そこから2時間ほど進んだところで急にモンスターの数が増えた。5体で一組だったのが、8体に増えている。こちらと同数だ。

 小百合さんの索敵に反応があった事で兼次さんが笑う。少し変化があったからか、みんなのやる気も少し上がる。


「昨日の予想通りやな。8体に増えた所で変わらへん。こっちも連携してやっていくで!」


 現れたモンスターは盾と剣を持ったホブゴブリンが2体。双剣、杖、弓が1体ずつ。それに加えて片手剣を持ったのが3体だ。こっちの戦力で一人一体ずつとすると数は合うが、タイプが違う。

 この場合は早急に一体でも数を減らすことが先決だ。


 こっちが臨戦態勢に入った瞬間、相手も走り出した。

 まずは盾2体が走り、片手剣2体が双剣を守る様にしながら攻めてきた。残り1体の片手剣は魔法と弓を守る様に陣取っている。

 同じようにこちらも兼次さん、大樹さん、彰さん、美優さんが距離を詰める。


 そしてその間に僕と河合さんが魔法を構築する。

 ホブゴブリンよりも早く小百合さんの弓が相手の魔法と弓を牽制する事で兼次さん達がスムーズに戦闘を開始した。一対一の戦力であれば兼次さん達が負ける事はない。なら数の有利を作るために、相手の遠距離攻撃を始末すればいい。


「『フレイムバンナート』!」


 まずは河合さんの炎魔法が炸裂する。数メートルの距離が開いていても命中率は見事なものでホブゴブリン3体を業火で焼き尽くした。

 いや、焼き尽くしてしまった。


「……あれ、オーバーキル気味だった?」


 その魔法の威力に河合さんが首を傾ける。

 魔法が消えるとホブゴブリンは消えていた。僕の出番はなかったみたいだ。

 魔法を構築していたが使いどころがなくそのまま維持する。


「多分ね。もう少し魔力抑え気味でいいわね。ワイバーンよりも全然耐久は無いみたいだし。所詮ホブゴブリンね」


「そうみたいですね……もう少し抑えます」


 河合さんが苦笑いする。

 今までの強敵と同じようにすればオーバーキル気味になるだろう。僕の『リア・スラッシュ』の時と同じだな。

 それにしても僕もこの魔法が不発なので勿体ない。とにかく撃ちに行くか。


「小百合さん、僕撃てなかった魔法兼次さんところで撃ってきます」


「キャンセルできないの?」


「キャンセルしても魔力が四散するだけですからね……勿体ないかなって」


「うーん。でも、前衛もすぐに終わりそうよ?」


 そう言われて前衛を見ると兼次さんと大樹さんが盾剣ホブゴブリンを倒した瞬間だった。

 盾剣ホブゴブリンの左右から彰さんと美優さんを狙うように片手剣ホブゴブリンが攻める。しかし、それを見て彰さんが笑う。


「はっ! お前らの武器ぐらいなら一撃なんだよ! リア・スラッシュ!」


 その一撃でホブゴブリンは片手剣ごと真っ二つにされる。

 その反対側で美優さんも剣の攻撃を避けながら数回ホブゴブリンに短剣を刺している。彰さんと違って一撃では倒せないようだが、数撃で倒せるだろう。しかし、そのタイミングで双剣ホブゴブリンが片手剣ホブゴブリンの陰から美優さんを強襲する。


「うそっ! また私っ!?」


 ぎりぎりのタイミングで双剣を躱すが、片手剣ホブゴブリンに止めを刺せていない。


「あーもう! パワーシュート!」


 それは弓のスキル。それを美優さんが短剣を投げる事で発動させた。

 短剣が片手剣ホブゴブリンの眉間に刺さり光の粒へと変える。


「カバームーブ!」


 その瞬間、大樹さんが美優さんと双剣ホブゴブリンの間に割り込む。剣を受け止めた大樹さんに美優さんが謝る。


「ごめん大樹」


「全然! やれ、彰!」


 反対から走ってきた彰さんが美優さんと大樹さんの脇を『瞬動』ですり抜け、その勢いのまま大剣を横薙ぎに振り抜く。


「言われなくてもなっ! リア・スラッシュ!」


 その勢いに慌てた双剣ホブゴブリンが剣で守る様にバツを作るが、それも意に介さず大樹さんの大剣が双剣ごと真っ二つにした。


 ……大剣の威力が高すぎる。僕の剣でも真っ二つにできるが、武器ごとできるかと言うとSPを大量に使えば『リア・スラッシュ』でできるけど、あまりしたくない。でも、彰さんは僕よりも少ないSPで真っ二つにしている様に見える。たぶん少しはSPの最大値が彰さんの方が多いと思うが、何度もあれだけ使うのでは使用SPが違うとしか思えない。と言う事は、剣自体の重さ、刃渡り、切れ味で変わってくるのは確かだろう。片手剣と大剣では根本的に物量が違う。


「終わっちゃったわね」


 隣で見ていた小百合さんがモンスターの殲滅を見て笑う。


「余裕でしたね」


「そうね……どうするのその魔法?」


「ですね。キャンセルするか、無駄撃ちするかどうか……とにかく兼次さんに聞いてみます」


 そう言ってドロップアイテムを拾っている兼次さんの元に向かう。


「兼次さんお疲れ様です」


「おう、お疲れさん……ってどうしたその左手! なんか光ってるやん!」


 僕の左手を見て驚く。


「えっと、魔法を使おうとしたんですけど、河合さんの魔法だけで倒せてしまって、兼次さん所に加勢しようと思ったんですけど早く終わってしまって、この状態です」


「ほー、魔法って置いとくとそんな状態になるんか。知らんかったわ」


 まじまじと僕の光る左手を見て呟く。

 これは無詠唱または短詠唱だからできる芸当みたいなんだけどな。


「属性までは構築しているんですけど、まだ魔法を完成させていない状態がこれです。でも、これをキャンセルすると魔力の無駄ですし、どうするか迷ってて……」


「うーん。なんか勿体ないな。どうしよか?」


「ですよね……ん?」


 その時、おあつらえ向きに『サークナ』に反応があった。奥から8体モンスターが向かって来ている。


「奥から8体また向かって来ているので、撃ってきていいですか?」


「おっ、なんやタイミングええな。ええで、撃ってき」


「ありがとうございます」


 兼次さんの許可も取れたし撃って来よう。

 そしてドロップアイテムを拾っている美優さん達の横を「ちょっと撃ってきます」と言いながら通って、一番前に陣取る。


「みんなー、新しく8体来たわよ。戦闘態勢」


 小百合さんの言葉にアイテムを拾う手を止める。


 そして奥から来るホブゴブリン達が僕の姿を確認し走り出した。しかしまだ魔法は完成させない。あと数メートル。

 そして相手の魔法が届く少し手前の距離、つまり魔法ゴブリンが止まる前、そのタイミングで魔法を完成させる。

 それを見たホブゴブリン達が慌てるように左右に散らばる。この距離なら魔法を撃つことが見てばれる。それにしても、魔法とわかった瞬間動けるのはやはり統率が取れてる。でも、その距離ならこの魔法は避けられない。


「もっと散らばってたら無理だけど、それぐらいなら許容範囲だ」


 完成させるのは雷属性の魔法。


「『サンダー・ボルト』!」


 詠唱と共に弾けるように細い稲妻がホブゴブリン達に向かって走る。逃げるホブゴブリンを追いかけるように走った稲妻は、ホブゴブリンを感電させた様にその場に倒した。戦闘不能にするには十分な威力だった。

 しかし、まだ光の粒とはなっていない。


「兼次さん! 倒れてるうちに始末してきます!」


「ちょ、ちょっと待ち! 大樹と彰も行ってこい」


「ああ」


「おう。奥山ちょっと先走るな!」


 兼次さんに言われて大樹さんと彰さんが走ってくる。

 このレベルなら僕一人でも大丈夫なんだけどな。


 実際ホブゴブリン達は8体とも立ち上がることなく止めを刺すことができた。大樹さんは笑っていたが、彰さんは少し怒っていた。

 起き上がったら面倒くさい事になるから早く処理したかったんだけど、ちょっとパーティの輪を乱したのは確かだから反省する。


 でも、ここでわかった事は、一人でも51階層はやりようがあるって事だ。杏子さんがソロで進める理由も少しわかった。







 それから先に進み、数回の休憩とお昼休憩を挟み、51階層の攻略想定時間である13時間に対して残り3時間。攻略も残り2割近くになった。


「残り3時間ぐらいや。このまま気合入れて進んで行くで! 油断するなよ!」


「「はい」」


 兼次さんの声に返事をしながら進んで行く。

 大抵兼次さんが声を出す時は、みんなの集中力が落ちている時だ。10時間もの間休憩も入れているが同じような景色にモンスターであれば気が分散される。こういう時に油断すると死ぬ可能性がある為、気を付けなければならない。


 今はパーティでの行動なのでお互いに注意し合うが、もしソロだったらどう集中力を切らさないようにするか考えないとな。今のところソロは考えてないけど、先に進んで行けるなら51階層ぐらいはソロで潜っても訓練にもなるし、稼ぐこともできそうだ。


 そうこうしているうちに『サークナ』にモンスターの気配が引っかかった。えっと……これまで通り、8体か……いや、奥からもう8体来てる。じゃあ、16体か!

 小百合さんもその数に少し顔をしかめる。


「兼次さん。16体が向かって来てるわ。まず先に8体。その後すぐに8体。たぶん統率がとれた二組が来てるって思って間違いないわね」


「そっか。じゃあ、俊が想像していた通りやな。この数やったらまずは、真由と俊の魔法で数を減らして生き残りを俺らで叩く感じやな。生き残りの数が多いか、連携取るグループが二組いるなら昨日話した通りのチーム分けで倒すで」


「「了解です」」


 昨日ミーティングしておいてよかった事態だ。

 全員が兼次さんの指示に頷いた。






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