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現代にダンジョンができたら潜りますか?〜私は今の仕事にしています〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第5章「中級冒険者」

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47話-2「40階層」



「こいつがボスか……」


 中心に降り立った蛾と蜂を足した様なモンスターを見て呟く。

 蛾の特性が強そうだが、蜂の様な尻尾に巨大な針。あれに刺されたらたぶん死ぬ。それに僕と河合さんの魔法で倒せない防御力。


 昆虫系モンスターは火が弱点なのは今までの戦いで感じていたけど、これはどういうことだ。


「『サークナ』」


 名前は『クイーンビーモス』、そのまま合体した様な名前だ。


 しかし、このまま火魔法で攻めていいのだろうか?

 剣を抜きながら様子を伺う。


 たったのこの情報だけで気を付けないといけないのは、まずは毒針の可能性。それに蛾であるなら鱗粉に毒がある可能性。このきらきら光っているのが鱗粉なら近づいて呼吸すると危ないかもしれない。それを前提で戦う。

 それにもう一つ厄介そうなのが、周りにいる蜂の様なモンスター『オブルビーモス』。デリジェンスビーに似ていて見た目は蜂だけど、顔が蛾だ。


 というか、ここまでまじまじと巨大な虫を見ていると鳥肌が立ってくる。

 さっさと倒したい。



 その様に思考していると、オブルビーモスが一斉にこちらに向かい飛んできた。


「河合さん! もう一回炎魔法で! 僕はこいつらを蹴散らすから!」


「わかった!」


「『ウィンド・ストーム』!」


 左手を突き出し、短詠唱で発動した風魔法でオブルビーモスを吹き飛ばす。ついでに近くまで漂って来ていた鱗粉も吹き飛ばす。これで接近できる。

 間髪入れずに走り出し、風で吹き飛んでいたオブルビーモスを剣で仕留める。強さは他の昆虫系モンスターと変わらない。


 上空で魔法が効かなかったのはたぶんオブルビーモスがクイーンビーモスを守っていたからだろう。落ちてきた黒い何かがその証拠だ。

 だったら、数をできるだけ減らせばダメージは通る。


 できるだけクイーンビーモスに近づくために迫ってくるオブルビーモスを剣で仕留めていく。中に『ファイアーボール』で攻撃しても倒しきれない個体がいるので剣で攻撃することを優先する。


 でも昆虫系モンスターなのに火が効かないのはなぜだ。

 そう考えながらもオブルビーモスを倒していくと、河合さんから声がかかった。


「奥山君!」


 オブルビーモスも減らした。この数ならダメージは少しでも通るだろう。

 河合さんの詠唱が完了すると同時にその場から『瞬動』で離脱する。


「『フレイムバンナート』!」


 再度爆発的に燃え広がる炎がクイーンビーモス達を襲う。


 オブルビーモスもあの数では守り切れないだろう。これなら少なくともダメージを与えられてると、思ったのだが……。


「まただ……なんで魔法が効かない?」


 炎が消えると、その場にクイーンビーモスが浮かんでいた。周りにいるオブルビーモスは数体は燃えているが、まだ残っている。

 河合さんの全力の火魔法でもダメージがまともに与えられたようには見えない。

 後ろで「なんで……?」と河合さんの声が聞こえたが、瞬時に切り替えて魔法を構築する。


 だったら、動きを鈍くして剣で倒せばいいと。


「『コールドエア』!」


 凍るような空気がクイーンビーモスの周り一体を包む。


「これなら……っ!?」


 しかし、それもダメだった。明らかにクイーンビーモス自体は動きが鈍っていない。それに周りのオブルビーモスも何もなかったかの様に空中でホバーリングしながら浮かんでいる。

 地面に落ちていないと言う事はそういう事だ。


 ここまで魔法で攻撃してもダメージが通っていないと言う事は……まさか。


 そこまで考えて走り出す。

 今までのモンスターでは見なかった現象。ほとんどのモンスターが火魔法で倒すことができていたのに、このモンスターには効かない。それどころか、気温を下げても効いていない。それが魔法の影響だからなら……。


 考えられることは一つ。


 さっきの河合さんの魔法でオブルビーモスが少し減っていた事で、少し倒せばクイーンビーモスの数メートル近くまで接近することができた。


 しかしその瞬間、クイーンビーモスを守るかのようにオブルビーモスが僕の目の前に立ちはだかる。


「仕方ない、ここから……」


 ここまでだと左手に魔力を込める。

 そして、無詠唱で出来上がった特大の『ファイアーボール』をクイーンビーモスに向かって放った。


 しかしその瞬間、クイーンビーモスが羽を羽ばたかせ、光る粉が大量に舞い散る。それがクイーンビーモスを庇う様に僕との間に壁の様に集まった。そして、その壁に阻まれる様にファイアーボールが広がる様に燃えた。


「……っ!!」


 それを見て『瞬動』をバックステップ替わりに使いその場から離脱する。


 なるほど、やっぱりそういう事か。


 離れた所で立ち止まり、自分の身体に異変が無いか確認する。

 痺れや呼吸器系に異常はない。まともに鱗粉を被ったはずだけど、身体に変化はない。つまり鱗粉には毒が無いって事だ。その代わりに鱗粉には他に重要な役割がある。

 それが、魔法に対しての壁になる役割。


 河合さんの所に走り向かいながら考える。


 今まで通りなら、あの距離であれば確実に『ファイアーボール』は直撃していた。でも、今回は何かに阻まれたように当たらなかった。それが鱗粉の役割。


 そう考えると、最初の河合さんとの合体魔法で燃え尽きなかったのは鱗粉に守られたから。

 周りにいるオブルビーモス達も鱗粉を纏っていのるかクイーンビーモスの近くに居たやつはダメージが少なく見えたし、逆に鱗粉を吹き飛ばした後のオブルビーモスは焼き焦げていた。

 と言う事は、鱗粉による高い魔力耐性。それをどうにかしないとこいつは倒せないって事か。


「奥山君」


 河合さんと合流する。


「ごめん一人で攻撃させて。でもわかったよ」


 河合さんも僕の攻撃を見て思い至ったようだ。


「たぶんだけど、あのモンスターには高い魔力耐性があると思う。だから火魔法が効かなかったんだと思うんだけど……。ここは私が牽制するように魔法を放って奥山君が接近できる道を作るよ。だから、奥山君が剣で倒す感じで……」


 しかし河合さんが話しきる前に止める。


「待って。それは僕も考えていた。でも、さっきの接近でわかった事がある……」


 さっき考えていた内容を河合さんに話す。


「……なるほど。だったら、あの鱗粉をどうにかする事が最優先ってことか。さっきは風魔法で飛ばせたんだよね?」


「そのはず。オブルビーモスも鱗粉を纏っていると思う。だから、火魔法を食らって燃えていたのは、鱗粉がはがれたからだと思う」


「なるほどね」


 そして今僕か河合さんのどちらがあのモンスターの弱点をつけるか、僕の意見を言う。


「だから、僕が風で鱗粉をできるだけ吹き飛ばすから、そのタイミングで河合さんが高火力の魔法で攻撃する方がいいと思うんだけど」


「えっ? でも、奥山君の方が上手い事魔法を使えるでしょ?」


「いや、僕の火魔法より河合さんの方が威力は高い。そう考えたら河合さんの方が適任だと思う」


 目を見て真剣に言う僕に河合さんが頷いた。


「……わかった。でも、完全に鱗粉を吹き飛ばせなかったら倒しきれないから、奥山君も剣で止めを刺す事は頭に入れといて」


「了解。じゃあ、それで動こう」


「うん。でもまずは、このオブルビーモスを倒しきらないと」


「だね」


 目の前に迫ってきていたオブルビーモスを剣で斬り倒す。


 オブルビーモスは剣で一撃で倒せるほど弱いのに鬱陶しい。その理由が、クイーンビーモスが常にオブルビーモスを生み出しているからだ。


「増えてるから、これをまずはどうにかしないとね……」


 降りてきた当初は十数体だったオブルビーモスもさっきのでかなりの数を倒したと思っていたら、今は同じ数に戻っている。僕達がこうやって作戦を考えている間に攻撃してこないのは今もなおオブルビーモスを生み出しているからだ。


 じっと眺めると、鱗粉が固まり、形作る様にオブルビーモスが生まれる。こいつの鱗粉が万能すぎる。


 鱗粉で形作られている時点でオブルビーモスにも魔法が通用しにくいのはわかるが、オブルビーモスになった時点で鱗粉ではなくなり鱗粉を纏っているだけ。だから、風で鱗粉を飛ばせば魔法も通用する。


「じゃあ、まずは私も鱗粉を吹き飛ばすね!」


 そして河合さんが詠唱に入る。それに合わせて僕も魔法を構築する。


「「『ブロウ・ウィンド』!」」


 詠唱もそこまで要らない、威力もそこまで強くない風魔法だがオブルビーモスの鱗粉をはがすだけなら十分の威力だ。クイーンビーモスの近くにいる奴には届かないけど、僕達の近くにいるやつにの鱗粉は剥がせたと思う。


「「『ファイアーボール』!」」


 そして繰り出すのは数個の『ファイアーボール』。河合さんと合わせて20個を超える。

 無詠唱ではなく短詠唱であれば数を作れるようになっている。無詠唱で練習してきた事でイメージの確立ができているからだろう。


 20個の火球が全て近づいていたオブルビーモスに直撃し、燃やす。


 通常の『ファイアーボール』だけで倒せるレベルだ、強くはないが数が多い。これを繰り返してこの場にいるオブルビーモスを駆逐したいが……。



 同じ作業を数回繰り返した。

 しかし、この距離ではクイーンビーモス本体には届かないし、こっちに向かっているオブルビーモスしか鱗粉を剥がせない。

 そして、倒しても次に生み出されるオブルビーモス。


「数が減らない……」


 河合さんが言葉を漏らす。

 別に減っていないわけではない。少しずつでも減っているのだが、目の前で次々と新しいオブルビーモスが生み出される。このままだと時間だけが過ぎて、魔力が持つかどうか……。


「……奥山君!」


 河合さんが何かを決心したのか、僕を呼ぶ。


「やぱりこのままちまちまオブルビーモスを倒してても埒があかない。これは嫌な役だろうけど……」


 河合さんが言いきる前に僕もうなずく。


「僕も考えてたところ。その代わり特大の攻撃を期待するけど」


「もちろん。全力でやるよ」


 そう言った河合さんが僕を目を見る。


「奥山君。いける?」


 その目は僕を信じている目だ。

 そんな目をされたら、任されるしかない。


「わかった、いける。だから、オブルビーモスは任しても?」


「大丈夫。鱗粉さえ剥がしてくれたら、雑魚は必ず仕留める。奥山君の道は切り開くよ」


 河合さんが頼もしい。


 だったら、行くか!


「了解!」


 走り出す。


 クイーンビーモスに近づくにつれてオブルビーモスが邪魔をしに来る。しかし、僕は剣でちまちま倒すより後ろにいる河合さんを信じる。

 僕がする事は鱗粉をはがすだけ。


「『ブロウ・ウィンド』!」


 風魔法で近づいてくるオブルビーモスの鱗粉をはがす。するとその直後火球が次々と命中していく。

 僕が攻撃する必要はない。ただ前に進むために風で道を作るだけ。


 そして一定の距離になった瞬間『瞬動』で距離を一気に詰める。


 それを見かねてか、オブルビーモスが一気に集まってくる。それを見て背筋が凍りそうになるが、歯を食いしばる。


 そして、剣を横に構えて振り切る。


「リア・スラッシュ!」


 目の前に群がりかけたオブルビーモスは蹴散らしたが、まだクイーンビーモスには届かない。でも魔法なら届く。


「少しでも風なら届くか! 『エアーハンマー』!」


 風の塊をクイーンビーモスにぶつける。しかし鱗粉によって本体までは届かない。

 でも、思った通りだ。


「止まった……」


 クイーンビーモスがしていたオブルビーモスの生産が中断された。

 つまり、クイーンビーモスが攻撃されているうちはオブルビーモスが増えないと言う事。鱗粉が生産に使うよりも防御に使われるからだろう。

 だったら今集まっている鱗粉をはがせば一気にチャンスになる!


 その危機を感じてか、オブルビーモスが僕に群がる瞬間、


「『ウィンド・ストーム』!」


 自分の周り360度。そして、クイーンビーモスの周りの鱗粉を全て剥がすイメージで魔法を放った。

 自分を中心に風が吹き荒れる。魔法による風が周囲の空気を巻き込み、押し流す様にクイーンビーモスとオブルビーモスに纏わっていた鱗粉を吹き飛ばす。


 それが一瞬の好機。ダメージが通る瞬間。


 そのタイミングに合わせたかのように河合さんの詠唱が完成した。


 そして僕はその場を離れる。


「『フレイムバンナート』!」


 次の瞬間、今回三度目の爆発的に広がる炎の渦がクイーンビーモス達を包み込んだ。

 目の前で燃えるオブルビーモス。きっちりと鱗粉を吹き飛ばせていたとわかる光景だ。この感じならクイーンビーモスも倒せただろう。


 でも、念には念とMPポーションを飲み、剣を構える。


 徐々に炎が弱まっていく。

 そして、その中心に残ったのは地面に倒れた黒く焦げたクイーンビーモス。


「倒したのか……?」


 その言葉が漏れた。それほど大ダメージを与えられたと確信していた。しかし、光の粒となってない事実。


 そして、黒く焦げていたはずのクイーンビーモスが動き出す。


 黒く焦げていた何かが剥がれ落ち、その中から元のクイーンビーモスの身体が見え始める。

 孵化する様に起き上がったクイーンビーモスが羽を広げる。


 その瞬間、蛾の様な羽が落ちた。


 その後から生えるのは蜂の様な羽。


 そして、ブブブという蜂の様な巨大な羽音を鳴らしながら、再びクイーンビーモスが浮かび上がった。






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