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現代にダンジョンができたら潜りますか?〜私は今の仕事にしています〜  作者: 黄緑のしゃもじ
第1章「チュートリアル」

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閑話「一際目立ったあの青年」

間幕です。あの時の青年の話です。

読み飛ばしても本編には影響が出ませんが、読んでください。



「やばい!」


 目の前の起こる光景を見て、俺は全力で走り出した。





「大丈夫ですか」


 優しく地面に下ろしながら声をかける。この人の年齢は何歳ぐらいだろう。やつれていてはっきりわからないな。

 ん?人がかなり集まって来た。別にそんな凄い事したつもりないんだけど、かなり歓声が上がってる。なんでだろ。目の前で急に人が線路に落ちたら助けに行くとか、普通だろうし。


「……あ、あの」


 あ、気がついたみたいだ。別に気を失ってたわけじゃなかったのかな? 動いてなかったから心配していたし。


「大丈夫ですか。もうすぐ駅員さんが来ると思いますので、安心してください」


「いえ、あ、あの……」


 なんだろう。何か言いたそうだけど、俺も急いでいるからな。


「大丈夫ですよ。でも、俺も行かないといけない所があるのでこれで行きますね」


 人もかなり集まって来たし、ここに居続けると間に合わなくなりそうだ。先輩に怒られる。


「え? ちょ、ちょっと……」


「では!」


 駅員さんも来たし、後は任せて俺はその場を去った。







「すみません、遅くなりました!」


 静かに扉を開け、謝りながら部屋に入る。


「遅い! 伊藤相良。遅刻だぞ!」


「すみません、来る途中で色々ありまして……」


「言い訳はいい、会議中だ。とにかく座れ」


「はい」


 とにかく自分の席に座る。今日は会議だとわかっていて遅れないようにしたのだけど間に合わなかった。先輩に申し訳ないことをしてしまった。


「……というわけで今回の攻略はこのように進めたいと考えております。よろしいでしょうか」


「意義はありません。では、そのように進めてください。では次の班、お願いします」


 俺たちの班の発表が終わり、次の班が前に出る。そうやって今回のダンジョン攻略の作戦発表が進んでいく。





「みんな、お疲れ。会議で言った通りの作戦で今回はダンジョンに潜る予定だ。でも、ダンジョン内は様々なことがあるからその度その度対処はしていく。まあ、いつも通りだな」


 会議が終わり各自自分の部屋に戻り班会議が始まる。


「それと、相良。すまんな。会議だったからああ言うしかないんだよ。遅れた理由が何かはみんな知ってるからな」


「いや、俺もすみません。もっと早く人助けが出来ていれば良かっただけですから。迅速に行動します!」


 胸元でぐっと拳をにぎる。

 常に動きを速くするように努めよう。理由が理由でも遅刻はダメだからな。


「お、おう。そうか。いやそのままでも十分なんだけどな。お前は自衛隊員の鑑だわ」


「天宮先輩にそう言っていただけると、光栄です。で、俺は途中からだったので作戦については、」


「そうだな、いつも通りだな。とにかくモンスターの殲滅だ。頼むぞ!」


「はい! わかりました!」


 いつも通りか。なら安心だ。とにかくモンスターを殲滅するだけだ。


「ちなみに相良、今日はどんな人助けをしたの? 少しの遅刻とかじゃ無かったし、割と大変だったんじゃない?」


「えーっと、そんなに大変なことじゃ無かったよ。線路に落ちた人を助けただけかな?優希菜でもすることだろ」


「え、ほんとに? ……うわ、本当だトレンドトップになってる。でも、そういうこと躊躇なくする相良は凄いね。でもまあ、その場面に会ったら私も助けるかもだけど」


「はは! 流石相良だな!」


 そうかな? 誰でもする事だと思うけどな。でも褒められるのは嬉しい。


「でも、相良さんこれで今月皆勤賞ですよ、遅刻の。そういう場面に会いすぎじゃないですか」


「え? ほんとに? まじかぁー俺、皆勤賞なのか。そう言われると何も言い返せない」


 そんなに俺は遅刻していたのか。


「おい、未玖それは言わないでやってくれ。こいつはこれでいいんだから」


「いえ、わかってますよ。でも、相良さんの、この時の表情が面白くて、ふふふっ」


「なっ! 未玖お前っ! 毎回俺を弄らないでくれよ。くそ、絶対もう遅刻しないからな!」


「ふふっ! それは、無理ですって」


「そ、そんなわけないだろ! たぶん」


「無理ですって。その決意毎回してますから。はははっ」


 未玖のやつ毎回俺を弄りやがって、絶対言われないようにしてやる。その為には、身体強化だな! モンスター倒してレベルアップだ。


「それで、天宮先輩。あと二人は?」


「ああ、あいつらはもう準備しに行ってる。俺らももう向かうからな。準備しとけよ!」


「そうですか! わかりました!」


 今日もこうして俺たち第3班のダンジョン攻略が始まる。






 ワイバーンの攻撃に盾が弾かれるが、体勢を崩すことなく追撃も受け止める。しかし、両方から来る攻撃は一人では受けきれない。


「マル! カバー!」


「了解!」


 前衛である天宮先輩とマルがワイバーンの攻撃を受ける。


「はあぁぁぁぁ!」


「やあぁぁぁぁ!」


 そこにすかさず俺と未玖の攻撃が入る。そして、


「みなさん離れてください! いきます! 『偉大なる雷の王よ。我に霧を晴らす一撃を貸し給え。放て。』『ライトニング』!」


 優希菜の魔法が放たれる。眩い光を放ち、確実にワイバーンにクリーンヒットする。


「やったか?」


 モンスターは身体から煙を上げて地面に伏せる。しかし、それは一瞬。ゆっくりと身体を持ち上げ始める。


「げ! まじっすか? しぶとい奴っすね!こいつ」


「マル! もう一度行くぞ! 気を引き締めろ! 相良、未玖! 頼むぞ!」


「「「了解!」」」


 気合いを入れて、もう一度戦闘態勢にはいる。


「いや、ちょっと待ってください」


 再び攻撃を始めようとしたところ呼び止められる。勇斗か。


「少しいいですか。このワイバーンにはさっきの同じ様にしても難しいと思います。特にこいつ雷耐性の補助魔法がかかってます。優希菜さん、風魔法にしましょう」


「え? でもワイバーンってドラゴン系だよね? 風って悪手なんじゃ、」


「大丈夫だと思います。このワイバーンは飛ぶのが下手なワイバーンでそこまで風に耐性があるわけでは無いと見えます。ドラゴン系統なんで弱点の雷系をお願いしていましたが、見誤りました」


 勇斗が指摘をし始める。この班の司令塔はかなり能力が高い。俺では全く考えつかない事ばかりでやはり尊敬できる。


「隊長とマルはもう少し攻撃を引きつけてくれると助かります。あと、受けるだけでなく隙あれば攻撃してください。二人の力量ならいけるはずです」


「おう、わかった。やってみる」


「了解!」


「未玖はそのままで大丈夫。思い切ってやってくれていいよ」


「わかった」


「で、相良さん。あなたもっと動けるでしょう。何か遠慮してますよね?」


 なっ、俺が隠してることが気づかれてる?


「いや、何も遠慮なんかして……」


「してます。いつもと動きが全然違いますから。まあ、協調性がどうとか考えてるんでしょうけど」


 え!か、確実にバレてる。どうしてわかるんだ。毎回毎回、勇斗って鋭すぎるだろ。


「協調性って大事だと思って、みんなに合わせた方がいいかなーって……」


「いや。あなたに対してはそれは無いです。テレビで言ってたことでも間に受けたんじゃないですか?」


 あーー。全部バレてるし。なんでだよ。


「あなたが思いっきり動いて第3班なんですから。あなたにみんなが合わせるので、と言いますか、あなたがみんなに合わせるってできるわけないんですから、考えずに思いっきりいってください」


 なっ……思いっきり言ったなこいつ。流石の俺でも無茶苦茶言われているのはわかるぞ。

 でも、


「そうだよな、わかった。いつも通りやる。勇斗が言うなら間違い無いしな」


「あなたの良いところを活かしてください。それが最高の作戦ですから」


 なんか良いこと言うよな、勇斗は。


「やっぱ、勇斗は良いこというな。その通りだ、相良。お前は自由にしろ! あと思いっきりな!」


「わかりました!」


 天宮先輩に思いっきり肩を叩かれる。それで気合が入る。


「じゃあ、あいつも起き上がったことなので、いきましょう!」


「「「おう!」」」


 再び攻撃が始まる。


 あの少しの指摘でここまで動きが変わるとは思わなかった。


「はあああぁぁぁぁ!」


 俺は言われた通り自由に動き回る。足を攻撃したり、胴体を攻撃したり、翼を攻撃したり。俺が攻撃を受けそうならマルがカバーに入り、すかさず俺が攻撃に移る。

 なるほど、俺が走り回ることで攻撃が分散されるのか。そうなるとみんなも動きやすいのか。

 徐々にワイバーンに傷が増えていく。しかし、急所は狙わせてくれない。どうやって狙うか。


「隊長! マル! いけます!」


 勇斗が叫ぶ。


「いくぞマル!」


「了解です!」


 天宮先輩とマルが一瞬の隙からワイバーンの胴体に潜り込む。


「「シールドバッシュ!!」」


 その瞬間ワイバーンの身体が浮き上がる。かなりの重量を持ち上げた二人前衛が持つ盾のスキルは発動とともにワイバーンを怯ませる。


「相良さん合わせます! 放ってください!」


「わかった!」


 その隙に俺と未玖がスキルを合わせて放つ。


「リア・スラッシュ!!!」


「パイルバンカー!!!」


 剣による斬り落としと槍による突きが、ワイバーンの両側から同時に放たれる。怯んだ隙を突いた攻撃はワイバーンが避けることなく命中する。


 よし、ラストスパートだ。


「優希菜さん補助魔法をかけます。『セカンドアップ』。やってください」


 勇斗が優希菜に補助魔法をかけている。これは大きいのが来る。


「みなさん! 離れてください!」


 優希菜が叫ぶ。すぐにワイバーンから離れる。


「『善良なる暴風の王よ。我に全を切り刻む刃を貸し給え。放て。』『ブラストハッシュ』!」


 大きく魔力が膨れ上がり暴風の一撃が繰り出される。周りの床ごと無数の風が斬撃となりワイバーンを、切り刻む。


「これでいける!」


 魔法が弱まるタイミングで俺は走り出す。あの攻撃で仕留め切れてないと思ったからだ。やはりワイバーンはしぶとい。

 だが、これで終わらせる。


「はああぁぁぁぁ!」


 優希菜の魔法の効果が切れる。その瞬間ワイバーンの懐に潜り込み首を目掛けてスキルを放つ。


「バースト、ブレイカーぁぁぁ!」


 俺が放てる最大の一撃。爆発するような斬撃はワイバーンの重量を無視してその首を斬り落とした。


「うおっしゃあぁぁぁぁぁ!」


 首を無くしたワイバーンが大きな音を立てその地にひれ伏す。そのままその場で俺は大きく叫び上げる。


 また強敵を倒した。モンスターを倒す。その感動はいつになっても変わらない。ただ俺たちに向かって来る敵は全て叩き伏せる。それだけだ。


「やったあっ!」


「やった!」


「よっしゃぁ!」


「しゃあ!!」


「よし!やりましたね!」


 俺の後ろでワイバーンが光の粒となっているのがわかる。体に流れ込む魔素が心地いい。頭に流れるレベルアップの音。しっかりとワイバーンを倒したと告げる音だ。それを聴きながら仲間の元に戻る。


「また、最後良いところを取りましたね。相良さん! くそっ!」


「私の魔法で倒せなかったな……」


「やっぱり相良さんですね!」


「流石相良さんです! あの一撃は痺れましたよ!」


「流石だ! よくやった!」


 みんなからの賞賛が凄い。嬉しいけど、嬉しいけど、そんな褒められると調子に乗りそうだ。でも、これは真摯に受け止めよう。


「ありがとうございます! ワイバーン、強敵でしたけど倒せました!」


 みんなにお礼を言う。最後の一撃を決めれたのもみんなのおかげだからな!


「なんで相良が仕切ってるのよ! 最後は相良が決めただけだから! 私の魔法が有ってこその止めみたいなものだから」


「相良さん、次は絶対私が仕留めますから」


「おう、わかってるよ。でも次も俺が倒すからな」


 いつもモンスターを倒すとこんな感じだ。でもこの空気が俺は好きだな。


『50階層、ボス「ワイバーン」を討伐しました。これにより50階層クリア条件を満たしました。』


「よし。作戦終了だ。地上に戻ろうか」


「「「了解です!」」」


 無事作戦が成功し先輩から帰還の指示が出る。45階層から始まり約5日。1日1階層のペースだ。40階層まではそんな事もなかったのだが、階層が上がるにつれて帰還ゲートが少なくなっている。旅みたいなものだ。はじめの頃はダンジョンで寝泊まりするとは思っていなかったけど、俺はこれはこれで楽しんでる。


「しかし、50階層にやっと来ましたね。これで半分。僕的には少し先を覗いておきたいですけど」


「勇斗お前の意見もわかるが今回は一旦戻ろう。みんな疲れの色が出ているしな。ちなみにお前もな、勇斗」


「そうですね。わかりました」


 先輩はよく仲間をよく見ている。それが凄く尊敬出来る。


「隊長。50階層攻略したからもしかして報奨金もらえる感じですよね? これって! かなり期待できるんじゃないっすか!?」


 マルが興奮しながら話している。貰えるものは多ければ嬉しい。俺らの本分は国の為、人の為に働く事だと思うけど、貰ったお金で新しい武器が作れるのは凄く楽しみだ。


「そうだな。期待できると思う。上にもこれは言ってないからな、今日はぱーっと飲もうか!」


「よっしゃぁ! 待ってました! じゃあすぐにでも戻りましょうよ!」


「もう、マルは興奮しすぎよ! でも私もちょっと楽しみかも」


 こういう時一番に叫び出すのはマルだな。でも、俺の後輩ながら場を盛り上げるのは凄いと思う。ムードメーカー、そこは尊敬するな。あ、もう走り出しているし。


「みんな何してるんすか! 早く行きましょうよ!」


 先走るマルに背中を押されるように、俺たちは50階層を後にした。









「これが50階層攻略の報奨金です! 受け取ってください」


 先輩とマルがギルド職員のシュナさんから報奨金を貰っている。俺はあまりお金には興味ないので少し離れて待っている。

 それにしてもマルは好きだな。「すげー!」とか「やべー!」とか声が聞こえてくる。先輩が注意している。


「ねえ、相良。欲しい武器とかあるの? オーダーメイドで作れるぐらいの金額みたいよ?」


「そうだな。俺は別にこいつのままでいいと思ってる。扱いやすいし、初めて先輩からのプレゼントだからな。愛着もある」


 このミスリルの剣は天宮先輩から貰ったものだ。俺が一番武器の消耗が激しかったのでお金を優先的に回して貰っていた。その事があるから今は何も欲しいとは言えない。


「そうね。私は違う魔法を覚えたいな。魔導書があるみたいたがらちょっと交渉しようかなーって思ってる。値段は高いけどね」


 そんな話をして待っていると、天宮先輩達が戻ってきた。


「お前ら待たせた」


「お待たせしました! もう、今回の報奨金はすごかったすよ! 早く酒場に行きましょう! いっぱい武器が買えるっすよ!」


「ほんとに! やった! 期待してもいいかも?」


「早く行きましょ! 私も欲しい武器があるから……」


 そんなに報奨金は多かったのか。50階層攻略は凄い事だったのかな。


「待て。お前らちょっといいか? 行く前に聞いてくれ」


 天宮先輩が話に割って入ってくる。何か大切な事なのか、


「大分昔の話になるのだが、俺らがこのダンジョン『ライトロード』に潜り始めた時を覚えているか? そして、一人一人がチュートリアルの洗礼を受けた事」


「覚えていますけど、それがどうかしましたか」


「その5階層はランダムでボスモンスターが選ばれていたと思うが、中にかなり強いモンスターがいただろ」


「虐殺のオーガですか」


 先輩の質問に瞬時に勇斗が答える。


「そうだ、オーガだ」


 俺も良く覚えている。割と強かったオーガだ。


「そのオーガに東京のダンジョンで生き残っていた仲間たちが次々とやられた。当たった奴は運が悪かったとしか言いようがないぐらいだった」


「そうでしたね。そのオーガに勝ったのは相良さん含めて10人ぐらいでしたからね」


「そうだ。かなりの強敵だったからな、最初で躓いてしまった」


 実際、東京のダンジョンが難航していて、大阪にダンジョンが出来たから半数が移動してきたんだったような。東京で活躍していたメンバーはそのまま残っていたはずだった。


「で、そのオーガがどうしたのですか?」


 優希菜が質問する。


「そのオーガをだ。初めてダンジョンに潜った奴が倒したらしい」


「はっ? え? 本当ですか!」


 先輩の言葉に勇斗が大きく驚く。俺はあまりピンと来ないが、勇斗が驚くのなら凄い事なのだろう。


「名前はオクヤマシュンというらしい。そいつに会うことがあれば、声をかけたいものだ」


「そうですね。仲間に出来るならしたいものですね」


「そういう事で、お前ら少しこの話は覚えておいてくれ。まだ、俺たちの階層には来るとは考えられないが、これからのダンジョン攻略に必要になるかもしれない」


「なるほど、わかりました。覚えます」


「わかりました」


 理解はできた。そういう奴になら俺も会ってみたいな。見た目から強そうなんだろうな。


「じゃあ、この話はここで終わりにして。お前ら! 飲みに行くぞ!」


「よっしゃぁ! 待ってましたぁ!」


「そうですね、行きましょう!」


「私は武器が欲しいです」


「やっと、終わりですね。エールが美味いんでしたよね」


「はい! 俺も、今日は飲みます!」


 やっと、5日間の疲れが取れそうだ。一番はしゃいでいるのはマルだな。あいつはいつも元気だな。


「じゃあ、向かいましょう!」


 そう言うマルの仕切りで俺たちは今回のダンジョンの疲れを癒しに酒場に向う。


「はは。やっぱりいいな」


 こういう感じが第3班らしいと俺は思いながらみんなの後をついて行くのだった。




 

読んでくださりありがとうございました。

次からは2章です。

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