ラーメン爆発しろ
「な……何やってるのよ、あの二人!」
聖痕十文字学園中等部二年、炎浄院エナが憤怒の呻きを漏らした。
謎のJCラーメンブロガー『なえタン』の中の人として、
東京駅ラーメンストリートに新規出店した、自身のラーメン舎弟でもある人気店『闇野川圧勝軒』の味を確かめるべく行列に並んだエナは、そこで信じられないモノを目撃したのだ。
「あー。あと十人待ちかよ。地元で食べればこんな事ねーのに……」
「まあまあコーちゃん、行列も楽しみの内よ!」
列の前の方に二人で並んでいるのは、エナのBFでもあるクラスメートの時城コータと、燃え立つ紅髪を揺らした冥条琉詩葉だったのだ。
「コータくん! あたしに隠れて、冥条さんと何を……!」
行列の合間から二人を睨むエナの目に、メラメラとジェラスの炎が燃え上がって行った。
#
「今日は付き合ってくれて、ありがとな琉詩葉!」
「なに、いいってことよ。コーちゃんの為なら……」
店内に入ったコータと琉詩葉が、カウンターに並んでそんな言葉を交わしながら談笑をしている、その背後では、
「つ、つ、『付き合う』……! 『コータくんの為』……! だと!」
テーブル席に貌を伏したエナが、目を白黒させながらブツブツ何かを呟いている。
あまつさえ、
「へい、カッポーラーメンお待ち!」
「ななななな……!」
店主がコータと琉詩葉の前に運んで来たのは、カップル限定に供されるこの店の特別メニュー。
一杯で二人前の『真冬のラブラブラーメン』だったのだ。
「いいコーちゃん。こういうのは、タイミングが重要だからね!」
「ああ、わかった琉詩葉……」
ラーメン丼を前にして、箸をとってそう肯き合う二人に、
「ぎゃー! 何やってるのよ! あなたたち!」
堪えかねたエナは、テーブルから跳ね上がって二人を指差す。
「エナ……?」
「エナちゃん……?」
「ふふふ不潔! 不純! ううううちのクラスは、そういうの禁止なんだから!」
驚いた様子でエナを振り返る二人。
完全に取り乱して、クラス委員長の権限を振りかざして店内で二人を糾弾するエナに、
「しょうがないなぁ……。コーちゃん、あたし先に出てるね……」
困り貌の琉詩葉は席を立つと、紅髪を揺らしてそそくさと店を出て行ってしまった。
「あのさ、え、エナ、これ……」
コータが、手に下げた紙袋から恥ずかしそうに何かを取り出した。
「琉詩葉に選ぶの手伝って貰ったんだ。もうすぐ誕生日だったろ? それに、ラーメンの味も確認しておきたくてさ……」
「あ……あえ……コータくん?」
エナにむかって照れ臭そうに、3℃の包装紙にくるまれたネックレスを手渡すコータに、エナの貌が見る見る真っ赤になっていった。




