第九十五話 布陣
夕餉後、瑠璃と山崎は土方に昼間の事を話した
土方「聞いたことがある。何かの書物で読んだのかもしれねえが、それにその男は本当に時を越えて来たってのか?」
瑠璃「恐らく」
瑠璃の件もある、そういう者が他に居ないとは言えなかった
土方「その方位で言うなら、俺は東、左之助が北、総司は西で斎藤が南って事だな・・・なあ、瑠璃お前は?」
瑠璃「私ですか?そもそも私は方位の神ではないですからね」
土方は何かを考えるように、目を閉じた
山崎「土方さん」
土方「・・・何かが分かりそうな気がする。少し外してくれ」
瑠璃「・・・」
土方を一人残し、皆の待つ広間に戻った
沖田「土方さんは何て?」
瑠璃「何かが分かりそうだから一人で考えたいって」
沖田「いい句が浮かんだのかな」
斎藤「総司っ!」
山崎「沖田さんっ!」
原田「お前ら気が合うな、ははっ」
瑠璃も考えていた
この謎が解けたら五稜郭の結界も解けるかもしれない
だって、まだ本領発揮出来てないのだから
私は入る事が出来た、場所問わず
ん・・・
(何かここは違う感じがするな)
土方さんが違和感を感じたのは何処だったっけ
左之さんは分からなかった場所
確か、東門だったはず 東門?
東門=東=青龍=土方さん
瑠璃「分かったぁ!」
土方「分かったぞ!」
瑠璃と土方はほぼ同時に声を上げた
原田「なんだ、随分息がぴったりだな」
土方「瑠璃、お前もか」
瑠璃「たぶん同じ意見だと思いますが」
斎藤「それは五稜郭の結界の事ですか」
土方はにやりと笑い「ああそうだ」と囁いた
土方の解釈はそれぞれが司る方位に従えば
五稜郭の結界が解けるのではないかと言う内容だ
門はそれぞれに方位を表す名がついていた
瑠璃も土方とほぼ同じ意見だった
違うのは今後の戦いもその方位を崩さないと言う事だった
原田「なるほどな、けど瑠璃はどうなるんだ」
沖田「瑠璃は何処からでも入れそうだったよね」
瑠璃「はい」
土方「けど、何処でもいいって訳じゃねえだろ。お前が本来の能力が出せる場所は何処なんだろうな」
斎藤「瑠璃は太陽神だったな」
瑠璃「はい、確か・・・」
山崎「中央でしょうか」
神田「試してみれば良いだろう」
瑠璃「きゃっ、びっくりするじゃないですか!いつも急に現れますね。心臓に悪いんですけど」
乾 「失礼致しました」
瑠璃「ふわぁっ、乾さんもですっ」
百合だけは玄関から失礼しますと入って来た
左之さんの後ろに控えるように座る三人
沖田「左之さん、出世しましたね」
原田「何言ってんだ」
土方「明日、試してみるか」
斎藤「はい」
そして翌日
方位に従ってそれぞれが並んだ
東西南北の配置に従うと、四人の身体から光が放たれた
蒼、白、朱、紺色の光だ
そして、瑠璃が位置を探るように移動する
四方を周ったが変化は見られなかった
最後にゆっくりと中央に向かって移動をする
すると、これまでで一番の輝きをそれぞれが放ち始めた
瑠璃は直視出来ない程の黄金色を放っている
感じたことのない熱さと漲る能力を
それぞれが感じていた
輝きは激しさを増し、土が木が空気が炎のように揺らめき立ち、地がぐらぐら揺れはじめた
乾 「くっ、これ以上はっ!」
土方「止めだ!」
余りにもの激しさに大地が悲鳴をあげていた
神田「力を制御出来るように成らねばならんな、蝦夷が崩壊する」
百合「これが四獣神の力・・・」
山崎「瑠璃くん!大丈夫かっ」
山崎が瑠璃の異変に気づいて駆け寄った
瑠璃は手を付き肩で息をしている
突然、皆の力が自分に集まってきたのだ
斎藤「瑠璃、大丈夫か」
斎藤が背に手を当て自らの気を瑠璃に分けた
暫くすると、瑠璃の呼吸は整った
土方「瑠璃どうした、何を感じた」
瑠璃「私はやはり中央なのだと思います。ただ、今の私は四神獣の目覚めた力を受け止めるには未熟過ぎました」
沖田「僕たちの力が瑠璃に集まってしまうんだね」
原田「他に方法はねえのか」
瑠璃「大丈夫です!ちょっと油断しただけです。もう少し時間を下さい。気をもっと上手く操ればいいのです」
土方「やれるのか?」
原田「土方さんっ!」
瑠璃「やれます!」
沖田「瑠璃・・・」
斎藤「・・・」
土方「いいか、焦るな。時間は死ぬほどあるんだ。自分の能力をゆっくりでいい、手得するんだ」
瑠璃「はい!」
四神獣は中国の伝説の神だと聞いた
気を操るのも中国古来から伝わる術だろう
昔、主こと父親から貰った教本を広げた
これを習得する必要がある
能力は授かって終わりではない
更に高めるには努力以外はない
私が此処に居る意味が今、分かった気がした




