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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第三章 結〜蝦夷編〜
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第九十四話 もう一人の未来人

あれから五稜郭が良く見えるこの高台に暇があれば来ていた

やはり考えずにはいられなかったからだ

いつもは一人で来ているけれど、今日は何故か山崎くんと一緒だ

彼も飽きるまで見てみたいらしい

真意は分からないけれど、二人でじっとそれを見つめていた


どれくらい時間が経っただろうか

吐き出す息も白く、指先が痛いくらい冷えてきた


瑠璃「そろそろ、戻りましょうか」

山崎「ああ」


そう行って、来た道を振り返った


男 「おお!綺麗な形をしてるなぁ」


息を切らせこの高台に上ってきて、男はそう呟いた

此処からの眺めは確かに素晴らしい、自分達以外が来てもおかしくはない

そう思いながら、その場を去ろうとした


男 「あれっ!もしかしてあの時の」

瑠璃「え?」

男 「豊玉発句集は持ち主に届きましたか?」

瑠璃「ああ!!あの時の人ですか!」

男 「やっぱり、また会えましたね!」


その男は土方の句集を瑠璃と斎藤に託した人物だった


山崎「何者ですか」

瑠璃「何者かは分かりませんが、土方さんの句集を拾ってくれた方ですよ。あっ、そう言えば総司の名を当てた人」

山崎「この人が・・・」


山崎は探るようにその男を監察した

特に不審な物を持っている訳でもない

放つ気も、普通の人間と変わりはなかった


瑠璃「あの時はありがとうございます。持ち主も戻って来て喜んでいました」

男 「そうですか!それは良かった」

瑠璃「所で、何故此処に来たのですか?寒いでしょ」

男 「ああ、せっかく函館に来たのだから五稜郭は見ておこうと思いまして。いやぁ、綺麗な星形をしていますね」


星形、男はそう言った

一さんにはその言葉は通じなかったのに

彼は自分からそう言った


瑠璃「星形?」

男 「ええ、ほら上から見ると星形に見えますよね。あれっ、この時代では星形では通じなかったかな・・・」

瑠璃「はい、通じませんよ。私以外には」

男 「・・・」


ほら、驚いている この人も時を越えて来たのかもしれない

確証はないけれど、予感はしている


山崎「瑠璃くん?どう言う事だ」

瑠璃「さあ、どう言う事でしょうね」


どう言う反応をするのか男の様子を見ていた

男は嬉しそうにカカッと笑い、こう言った


男 「そうかぁ、俺だけじゃなかったのか」


男は自宅で眠りについた後、気づいたらこの時代に居たという

自分が此処に居るのは何か意味があると信じ

帰る手段を探すのを止めたらしい


そして、沖田に会った

未来の歴史では結核に冒されたはずの彼が健在だった

そして、人間ではない化物を見てしまった事を話した


彼は歴史や神話、宇宙や方位に詳しかった

驚いたのは、四神獣の存在までも知っていたのだ


男 「きっと、四神獣が救ってくれるよ。何千年も昔から繰り返し悪魔を成敗してきたから。復活したのかな?四神獣は方位が重要だからね。それぞれの方位を間違うと能力(ちから)が発揮されないらしい」


瑠璃「方位、ですか」

男 「うん、知らない?青龍は東、白虎は西、玄武は北、朱雀は南を表すんだ。中国の伝説の神です」

瑠璃「へえ・・・」


男 「すみません、足止めしてしまって」

瑠璃「いえ、面白い話が聞けたので」

男 「ははっ、そうですか。なら良かった」


男は満面の笑みを浮かべた


瑠璃「あの建物には近づかないでください。旧幕府軍が占拠していますから」

男 「五稜郭に?はい、分かりました」

瑠璃「それから、私は佐伯と言います。あなたは・・・」

男 「僕は福山と言います」


男はニカッと笑い、頑張ってねっと言った・・・気がした

何となく彼には見透かされているような気がしてならない


山崎「何でしょうか、不思議な人としか言いようがありません」

瑠璃「そうですね」



山道を下りながら、先ほど聞いた話を思い出していた

方位が大切・・・方位かあ。


瑠璃「ね、山崎くん。さっきの人が言った方位覚えてる?」

山崎「ええ、確か青龍は東、白虎は西、玄武は北、朱雀が南と」

瑠璃「それ土方さんたちの事だよね。もしかして布陣が間違えていたのかな」

山崎「布陣・・・」



そう、いつもどんな時も土方さんを先頭に戦いに出た

もしくは感情的になってしまった自分が前に立つ事も・・・

それは間違いだったのかもしれない


山崎くんと二人、無言で家まで帰った

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