第八十七話 誓い
私たちが函館に着いた時は松前城と五稜郭は
榎本率いる軍隊に落とされていた
大政奉還で各藩は幕府から朝廷へ還されたことになっていたので
それを旧幕府軍が力づくで取り返したという流れ
土方「旧幕府軍は松前城と五稜郭を落とした、着々とこの函館を中心に共和国設立に動いてる」
原田「新政府軍が黙っちゃいねえだろ」
山崎「話によると新政府軍も艦隊を率いて此方を目指すそうです」
土方「俺の想像が正しいなら、冬が終わってからだ」
瑠璃「正解です」
斎藤「知っているのか」
瑠璃「私は未来で生活していましたから、大体の事は知っています」
沖田「そうだったね、すっかり忘れたいたよ」
でも、具体的な話は分からない
私は歴史オタクでもなければ研究家でもなく
期日は分からなかった
分かっているのは新政府軍の圧勝だけ
そして驚いたのは、この旧幕府軍の軍隊に彰義隊と会津の遊撃隊が含まれていた事
彼らには違う道を歩んでほしかった
また、この厳しい戦争に立ち向かうなんて
土方「春までは榎本武揚の思うがままってことか・・・それにしても彼奴は何処に隠れていやがる。戦争は人間どもにやらせておくしかないが、彼奴が絡むとなるとやっかいだ」
サキュバも蝦夷に来ているはず、どこに潜んでいるのか
そして神田たちはもう到着しているのだろうか
そんなことを考えていた
山崎「引き続き調べてみます」
土方「ああ、俺たちも個々で動く。まとまると目立つからな」
全員「はい」
私たちは宿を引き払い、古くなった空き家を買い上げた
冬を越せるよう隙間の空いた戸や壁を少しずつ修復した
土間、炊事場、風呂場、部屋は三つ
庭と井戸もある 十分に設備は整っていた
そしてここからは五稜郭が見える
それだけ高い場所なのです
瑠璃「わぁ、星形だぁ。すごい!」
斎藤「ほしがた?」
瑠璃「はい、五稜郭の敷地を上から見ると☆の形をしています」
斎藤「星はあのような形をしているのか?」
瑠璃「え?違うんですか?」
斎藤「・・・」
まだあれを星形と言わないのだろうか
確かに実際の星はあんな形ではないけれども
瑠璃「とにかく不思議な形ですよね」
斎藤「ああ、確かフランスの城を真似ていると聞いたが」
瑠璃「へぇ」
ここはフランスの影響を受けているのかぁ
そう言えば陸軍の伝習隊はフランス軍直伝だと言っていた
開国を機にこの国は一気に変貌を遂げようとしている
みんなが未来に行ったら驚くだろうな
瑠璃「私は未来の日本の姿を知っています。一さんが見たら腰抜かしますよ」
斎藤「そんなに違うのか」
瑠璃「はい。とても便利な世の中ですよ!でも、失くしてしまったものもありますけど」
斎藤「変る為には何かを捨てなければならないからな」
瑠璃「そうですね・・・」
しんみりしている訳ではないけれど、
何かを噛みしめたい気分だった
斎藤「今、言うべきか迷ったが、あの時言っておけば良かったと後悔はしたくない故・・・言わせてもらう。聞いてもらえるだろうか」
瑠璃「なんですか?急に」
斎藤「我々の戦いも恐らくこの地が最後になるだろう。サキュバを打ち取り、人の世を平定する。サキュバを倒した後の事だが・・・その・・・」
瑠璃「はい」
斎藤「俺と、その、俺と共に生きてもらえないだろうか」
瑠璃「・・・え、それって」
斎藤「俺と婚姻を結んでもらいたい。必ず幸せにする、生涯!瑠璃を大切にする」
一さんの瞳が私だけを映している
揺るぎない想いが私の胸を突き刺した
瑠璃「一さん・・・喜んでお受けします」
一さんは耳まで真っ赤にして私にプロポーズしてくれた
将来を約束されることがとても嬉しかった
とても幸せだった
瑠璃「そしたら私、斎藤瑠璃になるのですねっ」
斎藤「っ!! そ、そういう事になる」
私は一さんと生涯を共にする
死が二人を分かつまで そう誓った




