第八十三話 結局は歩きなんです
神と人間の間に生まれ、特殊な能力もあるというのに
移動手段は基本的に歩きだ
なんかこう、びゅーんって空飛べたりしないのだろうか
何気に広い空を見上げた十月の空
雲は薄く真っ青な空が何処までも続いていた
沖田「ふははっ、確かに飛べたら楽だよね」
瑠璃「総司っ」
伝心したつもりはないのに
総司にだけは分かってしまう さすが双子
原田「なんだ、お前ら相変わらず犬っころみたいだな」
瑠璃「犬っころって」
会津を出てから、かれこれひと月が経つ
陸奥は遠い、日本の地形は縦に長いから仕方がない
時折、山崎くんと土方さんが地図で確認している
そう、地図があるんです
一度見せてもらったけど、思わず惜しい!
と、言いたくなるような形をしていた
山崎「間もなく、陸奥に入ります」
藤堂「くはぁ、やっとだな」
永倉「陸奥も広い国だからな、まだまだだ」
津軽海峡を渡るんだから
どっちかの半島の先っぽまで行く必要がある
津軽半島と下北半島、どっちかな?
土方「八戸で船が出ている所を聞いてみるか」
大久保「そうだな、地元の者なら知っているだろう。それにしても山越えが多いな」
地図を見る限り、北の地は気高い山がたくさんある
幸なのは熊は冬眠に入る時期だということだ
瑠璃「林檎の産地ですよね?」
全員「りんご?」
瑠璃「え、まだ無かったのかな林檎。丸くて赤い果実ですよ」
山崎「ああ、病にも効くらしいですね。しかし高級過ぎて出回っていません。俺も実際は見たことがありません」
瑠璃「へえ、そうなんだ」
藤堂「じゃあさ、此処で見れるかもしれねえな」
りんごが本格的に栽培され始めたのは
明治五年頃、政府の意向でアメリカより輸入してからである
町民「船ねえ、蝦夷との交流は殆どないからねえ。おまえ知ってるかい?」
町民「知らねえな、漁師に聞いてみたらどうだい。あの人たちなら知ってるかもしれないよ」
土方「何処に行けば会えますか?」
町民「この辺の漁師より大間の漁師がいい」
土方「大間ですか」
町民「あそこが一番蝦夷に近い港町だ。もしかしたら船出してるかもしれねえ」
大間は下北半島の先端にある町だ
私たちは大間を目指すことにした
町を通る度に、旅役者だと思われてしまう
まあね、そう思われても仕方がないよね
沖田「いっその事さあ、殺陣でも披露したら?」
原田「そいつは面白いな。で、誰がやるんだ?」
瑠璃「みなさんの殺陣なんて見せたら、腰抜けちゃいます」
沖田「うーん、じゃあ一くんの居合は?あれなら問題ないでしょ」
斎藤「俺の居合は見世物ではない!」
ある意味ここに居る全員の能力は凄い
中国雑技団も真っ青だと思います
だんだん寒くなってきた
瑠璃は井上が選んでくれた襟巻きを取り出した
大久保「使ってくれていたのだな」
瑠璃「はい、これからの季節は重宝します」
その襟巻きの中には井上源三郎の誠の鉢巻を忍ばせている
(井上さん、力を貸してくださいね)




