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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第二章 転~江戸・会津編~
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第六十八話 斬首刑!

土方たちと別れた瑠璃と山崎は

近藤が連行された新政府軍の詰所に張り込んでいた

飛脚を装い、仕出し人に化け様子を探っていた

夜は交代で屋根裏に潜んむこともあった

幸いな事に近藤に対する扱いは悪くはなかった

土方が木戸に解放を願う、署名を送ったからだ


瑠璃「これといって変わった動きはないですね」

山崎「ああ、だがかなり守衛が固い。交代もまめに行っている、近づくにも隙がない」

瑠璃「ねえ、かれこれ二週間は経つけど土方さんや一さんたちに連絡取らなくていいのかな」

山崎「大丈夫だ、昨日文を飛ばした」

瑠璃「飛ばした?」

山崎「ああ、隼を使ってだが」

瑠璃「えっ!鳩じゃなくて隼!!」

山崎「は、はと?なんだ其れは」

瑠璃「そっか、文送ったんだ。私も書きたかったな・・・」


かれこれ、一月近く会っていない

元気です!くらい伝えたかったな 

江戸と会津じゃあ、心の交信も難しいし はぁ…


山崎「そ、その書くか?斎藤さんに」

瑠璃「えっ、いいんですか?」

山崎「ああ」


瑠璃は嬉しそうに文をしたためている


山崎「瑠璃くんの字は変わっているな。分かりやすいが」

瑠璃「え?ああ、時代が変わると文字も変わりますからね。だから皆さんみたいに流れるような文字は書けません」


山崎が隼の脚に文を結びつけると、瞬く間に飛び立った


瑠璃「あ、行き先大丈夫ですか!」

山崎「大丈夫だ、斎藤さんに必ず届く」


なんで、届くんだろう…不思議だ



そして更に二週間が過ぎた頃、突然、詰所内が慌ただしくなった

偉そうな人物がやって来て何か指示を出している


山崎「なにっ!!」


一瞬にして青ざめる山崎


瑠璃「なに?何て言っていたの?」

山崎「近藤さんの執行日が決まった、と」

瑠璃「執行日って」

山崎「斬首刑、罪名は池田屋における無実の浪人刺殺」

瑠璃「それって死刑執行、いつ!」

山崎「明朝だと」

瑠璃「・・・」


今まで何も動く気配が無かったのに、急に執行だなんて

私たちに残された機会もその日しかない

どうする?被害は最小にして近藤さんだけを救う方法


瑠璃「山崎くん、聞いて・・・」


瑠璃は山崎に近藤を救う最後の機会は執行寸前しかないと伝えた


そして、いよいよ決行の日

生身の人間は傷つけてはならない、失敗は絶対に許されない!


瑠璃「山崎くん、いい?」

山崎「ああ、機は絶対に逃さないっ」


山崎は近藤が座る裏手の茂みに身を隠した

瑠璃は野次馬の人だかりの中に紛れる

新選組の近藤勇が斬首刑になると聞き、大勢の人が集まっていた

そして、近藤が連れられて来た

真白の着物に身を包み、肩から腕にかけて後に縛られている

中央の(むしろ)の上に正座で座る

右側に刀を持った男が立っていた


瑠璃はごくりと唾を飲み込む、男が刀を振り上げ落とす瞬間

その時に全てが決まる 握る手に汗が滲む

山崎も同様に緊張の高まりで額から汗が流れる

そして、役人が合図の腕を振り上げ・・・下ろす!!


瑠璃は人だかりから前に出、強く跳躍する

目に見えない速さで指から空砲を放つ

それが刀を振り上げた男の腕の付け根に当たる

男は腕を振り上げたまま動きが止まる

山崎が飛ぶように駆け近藤の背を突き気絶させた

瑠璃は気を一気に高め 黄金色の光で一体を包む

光は一本の帯となり天に向かって突き上がった

やがてそれが稲妻の如く地に落ちる

雲を呼び、風が吹き、激しい雨が降り出した


町人「祟りだぁ!首なんぞ落とすから天が怒ってるぞぉ!!」


混乱した町人たちはわらわらと走って逃げてゆく

役人も顔色を変えて走り去る


瑠璃「山崎くん!近藤さんは?」

山崎「大丈夫だ!」


二人は近藤を抱え、その場を去るべく山手に向かおうとした


侍 「待てっ!」


一人の侍が二人の前に立ちはだかる

その男の目は赤く、髪は真白だ、そして異様に強い気を放っている


山崎「なぜ、夢魔がっ」

瑠璃「この夢魔、只者じゃない」


瑠璃と山崎は刀を拔いた、二人は激しく気を放つ

しかし相手は気にも留めない、そして笑ったのだ

これまでの夢魔は表情など無かった


瑠璃と山崎は握る手に更に力をこめる


山崎「簡単には行かないかもしれない」

瑠璃「それでも負ける訳にはいかないっ!」


キーン、キーン、ズザッ…


何度斬りかかっても払われてしまう

斬っても直ぐに塞がる傷、二人同時に掛かっても

心臓まで刃先が届かない


瑠璃「はぁ、はぁ、心臓に届かない」

山崎「ここは退くしかない。近藤さんの命が最優先だ!」

瑠璃「はい、山崎くん近藤さんをお願い。私が可能な限り踏ん張るから、この先の関所目指して走って!」

山崎「無茶だ!」

瑠璃「私は近藤さんを背負って走れない!」

山崎「っ!・・・分かった!すぐに戻る!死ぬな!」

瑠璃「死なないよっ!」


山崎は近藤を背負い走った、安全な場所を探して

瑠璃が降らせた雨は止む気配がない

雨を降らせながら戦うという事は体力を削ることになる

それでも止めないのは、近藤の姿を隠すため


侍 「おまえも人間ではないだろう?」

瑠璃「貴方は何者ですか、只の夢魔ではないですよね」

侍 「確かにあれとは違うな」


受け身だったその男が反撃をしてきた

速い!しかも、遊んでいるかのように剣を振る

男が持つのは刀ではない、西洋の(つるぎ)だった

受け止めるだけで精一杯だ 

そして突き飛ばされた


瑠璃「うっ、くっ」


激しく背を打ち付けうまく呼吸ができない

駄目だ、力が入らない 次第に雨足が弱まる


男は剣を瑠璃に突き付けこう言った


侍 「お前のその再生能力が欲しい、死にたくなければ私と来なさい。二人でこの世を支配するのだ」

瑠璃「支配・・・貴方はサキュバ!」

侍 「ははは、賢い女は好ましい。ならば話は早いだろ?さあ」

瑠璃「嫌です、うっ…。死んでも貴方なんかとはっ。ぐはっ…」


瑠璃は激しく血を吐いた


侍 「そうか、残念だ。望み通り楽にしてやろう」


ギラリと男の剣が光り、瑠璃目掛けて振り下ろされた



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