第六十七話 信じること
近藤さんを利用して私たちの力を封じようとしている
このまま彼らの思い通りになる訳にはいかない!
瑠璃「土方さん!私、残ります!」
全員「何っ!?」
土方「おい!お前は何を言っているのか分かってるのか!」
原田「瑠璃、気持ちは分かるがどう仕様もねえんだ、な?」
瑠璃「どうしようも無くないんです!」
藤堂「落ち着けって」
土方「一時の感情で物を言うんじゃねえよ」
瑠璃「一時の感情ではありません。聞いてください!何かモヤモヤしませんか?会津に向うと思わせ、突然官軍が彰義隊征伐。やむを得ず新選組を分離、官軍の早い撤退、近藤さんの江戸入り。そしてこの包囲網!初めから罠だったんですよ」
原田「だったら、なんで俺たちを彼奴らは追わねえんだ」
瑠璃「目的は近藤さんだけなんです。近藤さんを人質にして、私たちの力を封じ込めようとしているんですよ。現に私たちは近藤さんの命令に背く事が出来なかったじゃないですかっ」
土方「・・・」
藤堂「それと瑠璃が残るのと、どう関係があるんだよ」
瑠璃「私は新選組隊士ではありません。実際、お触書には私の名も人相書きも出ていません。新政府軍は私の存在を知らないんです。だから、このまま残って近藤さんの身の安全確保と救出の機を狙います」
原田「危険すぎるだろ!」
瑠璃「殆どが会津に向かうはずですから、危険は少ないです」
藤堂「土方さん、何か言ってくれよ」
土方「決心は硬いのか」
原田「土方さんっ!」
土方「黙ってろ。勝算はあるのか」
瑠璃「負け戦はしない主義です」
土方「ふん、上等だ!ならば、お前に任せる」
山崎「俺も瑠璃くんと共に残ります。同じく俺の存在も相手は知りません。一応、彼女の暴走は止められると思います」
土方「そうか、頼むぞ山崎」
原田「おまえ、本当に大丈夫なんだよな?」
瑠璃「はい、お二人の妹ですよ?信じてください」
瑠璃はいつもと変わらない笑顔でそう答えた
初めてだ、瑠璃が自分から意見を言うなんざ
しかも、既に決定事項の様に言いやがる
全くあいつは突拍子もねえことを言いだす奴だ
だが、あながち間違ってはいないだろう
暫くは相手の思うように動いてやるか
土方「此処で解散だ、会津にて落ち会う。二人とも頼んだ」
「はいっ」
瑠璃と山崎は闇に消えていった
原田「なあ、総司と斎藤に何て言うんだ」
土方「あ?ああ・・・左之、お前に任せた」
原田「おいっ、そいつは困る。平助、頼んだぜ」
藤堂「えっ!何で俺なんだよ!無理だって」
島田「藤堂さんならきっと分かってもらえますよ」
藤堂「ちょっ、適当な事言うなよ」
土方は瑠璃と別れた
会津に入る前に宇都宮で官軍と新政府軍の戦いを見る事にした
此処で双方の戦い方が分かるはずだからだ
土方「島田、斎藤たちに文を出す。後で取りに来てくれ」
島田「はっ!」
土方「左之、平助、いいか?宇都宮では何が起きようと絶対に手は出すなよ」
藤堂「何でだよ。夢魔が暴れてもか?」
土方「ああ、奴らの戦い方を知るためだ。それと、夢魔が現れる度に俺たちは制止に力を注いだ。向こうもそのつもりで居るはずだ、敢えて俺たちは見逃す。近藤さんが捕らえられた影響を匂わせる必要がある」
原田「なるほどな。俺たちが元気に暴れたんじゃ、何か策があると思われて瑠璃たちが感づかれるかもしれねえしな」
土方「兎に角そういう事だ」
土方が率いた新選組は三つに別れた
会津に斎藤、沖田、永倉
宇都宮の土方、原田、藤堂、島田
江戸に瑠璃と山崎
いつ何処でサキュバが姿を現すかもしれない
例え神の子であっても五人が一緒で無ければ勝てるか分からない
まだ見ぬサキュバがとても巨大な魔物にも思えた
沖田「一くん、土方さんから」
斎藤「・・・」
沖田「何?顔ヒクつかせて」
斎藤「近藤さんが新政府軍に捕らわれた」
永倉「なんだと!」
沖田「近藤さんが?なんで!」
斎藤「宇都宮を経由して入るらしい・・・瑠璃と山崎は除かれている」
永倉「なんだよ、何がどうなってるんだ!」
沖田「土方さんは何してるの!近藤さんは捕まって、あの二人がなんで外されてるの!」
斎藤「・・・何か理由があるに違いない」
沖田「何言ってるのさ!一くんは瑠璃の事心配じゃないの!」
斎藤「っ!心配に決まっている!だが、此処で自分を見失うわけにはいかんだろ!それぞれが己の使命を全うすべく動いているのだぞ」
永倉「近藤さんが簡単に捕まる訳ねえし、土方さんがそれを許す訳ねえ、絶対に何か裏がある。二人の名前が書かれてねえのは漏れたら不味い事があるからだろう。信じるしかねえんだ」
沖田「くっ・・・」
今はお互いの能力を信じるしかないのだ
それぞれに与えられた任務を全うする為にも




