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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第二章 転~江戸・会津編~
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第六十四話 人相書きっ!

江戸の町は今日も変わらず賑やかだ

戦争が起こるかもしれないなどと、微塵も感じさせない程活気があった


沖田「それにしてもお触書だけじゃなく、人相書まで出回るとはね」

瑠璃「でも全然似てないし、鉢巻絞めてる。これは誰なの?」

沖田「あー土方さんだね」

瑠璃「ちょっ、これ。丁髷ちょんまげしてる!」

沖田「これは新八さんだね」

瑠璃「こ、この顔に傷がある人って・・・」

沖田「ああ、原田って書いてある。顔じゃなくて腹なのにね」

瑠璃「ねえ、総司はどれ?」

沖田「僕?どれかな、ああこれ」

瑠璃「・・・髭が付いてるよ?」

沖田「因みに此れが平助で、こっちが一くん」

瑠璃「わっ!平助がゴリラみたいに、えっ、一さん?禿てる」


誰が誰に言われて描いたのか、酷い絵だった

歩く度に、角を曲がる度にこの紙が貼られてあり目に付く


瑠璃「ふっ、ふふふ」

沖田「?」


瑠璃は俯き口元を手で押さえ、肩を小刻みに揺らしている

沖田は心配になり瑠璃の顔を覗き込むと目尻に涙を溜め、声を必死で堪えているようだった

瑠璃はそんな沖田の行動を片方の手で制しようとする


沖田「瑠璃っ!どうしたのさ、どこか具合でも悪いの」

瑠璃「・・・」

沖田「ねえ、答えて」

瑠璃「ふふ、ふはっ。だ、大丈夫だから。見ないでぇ、あははは」


瑠璃は堪えることが出来なくなり、腹を抱えてその場に屈む


沖田「笑って、る?」


沖田はなぜ瑠璃がこうまでして笑うのか今一つ理解できなかった

理由を聞けば聞くほど瑠璃の笑いが止まらなくなるからだ

道行く人が奇妙な目でこちらを見ている

沖田は瑠璃の手を取り皆が待つ家まで急いで帰った


原田「お?どうした息切らせて」

沖田「左之さん、瑠璃の笑いが止まらないんだけど」

永倉「なんか悪いもんでも食ったのか」

瑠璃「あ、新八さん。ぷははははは」

原田「おいっ、総司」

沖田「何も食べてないですよ、僕が聞きたいくらいです」


そこへ斎藤と山崎が戻ってきた


斎藤「ここで何をしている」

藤堂「一くん、瑠璃ちゃんがおかしいんだって」

山崎「どこか悪いのか」

瑠璃「お、おかえりな・・・ひゃひゃひゃ、もう駄目!」


瑠璃は耐えられないとでも言うかのように、部屋へ戻って行った

(だって、あの人相書きとこの人たちが同一って。可笑しくてお腹が痛いよ)


土方「おい!お前ら入り口で騒ぐんじゃねえ。目立つだろうがっ」

沖田「土方さん、瑠璃が変なんですよ。ずうっと笑いが止まらないんです」

土方「は?」


土方と斎藤は瑠璃の部屋を訪ねた 部屋の中は意外に静かだった

二人は顔を見合わせる (静かだな)


土方「おい、居るか?入るぞ」

瑠璃「・・・」

土方「どうした、皆心配してたぞ。何か悪いものでも食ったのか?」

瑠璃「ぶっ、ちがっ。ふっ、食べっ、た、じゃなぃ・・・見、た」

斎藤「見た?何を見たというのだ」

瑠璃「ふはははっ、皆の、に、に、ははっ。人相書きっ、似てなっ、おかしっ、ふふふ」

二人「・・・は?」


土方「斎藤、あとは任せた」

斎藤「え、あ、はぁ」


何かと思えば、俺たちの人相書きで笑ってやがった

土方の眉間の皺が一層濃くなる


土方「おい!お前ら、至急この近辺に貼ってある人相書きを引っ剥がして来い!」

全員「え!」


その後、闇に紛れて一通りの人相書きを持ち帰った

それを見ても何があそこまで瑠璃を笑わせたのか理解ができなかった

この時代、全く似てないのは当たり前の事なのだ

土方が今までにないくらい大きな舌打ちをしたのは言うまでもない


斎藤「大丈夫か、治まったか」

瑠璃「はぁ、はぁ、なんとか」

斎藤「そうか」


斎藤は暫く瑠璃の背を優しく撫でていたらしい

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