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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第五十話 大阪入り

鳥羽伏見での敗戦後、旧幕府軍は大阪へと退いた

土方たちも大阪へ向かう

夢魔部隊は旧幕府軍の跡を辿るように動いていたからだ


瑠璃「あの、また歩きですか?」

沖田「くくっ、もう降参?」

瑠璃「そう言う意味ではなくて、歩きだと出遅れる場合があるじゃないですか。事件は既に起きていて、到着した時には終わっていた!なんてよくある話ですよ?」

沖田「必死だね」

原田「瑠璃が言いたい事は分かるぜ?なあ、土方さん」

土方「まあな」

藤堂「瑠璃まだ分かんねえの?」

瑠璃「え?」

永倉「俺たちが向かってる先だよ」

瑠璃「・・・」

斎藤「淀川、だ。」

瑠璃「淀川?」

土方「まだ分からねえのか、相変わらず鈍感で可愛いやつだな」

瑠璃「それ全然褒めてないです」

山崎「舟で下る」

瑠璃「そういう事ですか!もったいぶらないで早く言ってくださいよ」

斎藤「そう怒るな。皆、瑠璃に構いたくて仕方がないのだ」

瑠璃「そうでしょうか・・・遊ばれてるような気もしますけど」


山崎くんが手配した舟に乗る

兎に角、舟に乗ったことが無かったので楽しくて仕方がなかった

そんな浮かれた気持ちがばれてしまったのか分かりませんが

土方さんには「はしゃいで落ちたりするんじゃねえぞ」と、憎まれ口をたたかれ

左之さんには「俺の膝の上で見物するか?落ちねえように掴まえといてやるよ」とからかわれ

それを聞いた一さんが真剣に「ならば、俺の膝に」なんて言うから皆で爆笑した

心地よい揺れとゆっくりと流れる景色を見ていたら

瞼が重くなってきた

これで寝たら皆から何て言われるか分からない 我慢、我慢・・・


永倉「なあ、瑠璃ちゃん」

瑠璃「…」

永倉「瑠璃ちゃん?」

瑠璃「はいっ、はい!なんですか?」

永倉「おお、起きてたのか」

瑠璃「寝てませんよ」

沖田「寝てた人に限って寝てないって言うよね」

瑠璃「・・・」

山崎「まだ暫くかかる。今のうちに休んでおくのも良いと思います」

斎藤「ああ、無理せずに横になれ」

原田「膝なら沢山あるからよ、遠慮するな」

藤堂「なんか左之さんが言うと…」

瑠璃「ん?」

永倉「平助が心配しなくても、瑠璃ちゃんはお前の膝で寝たりしねえよ」

藤堂「な、なんだよ!それ、新八っつぁんにも言えることだからな!」

土方「お前ら煩え…瑠璃こっち来い」


はぁ、全くこの人たちは…

分かりやすくため息をついて見せた


瑠璃「私は山崎くんの後ろで横になります。山崎くん宜しく」

山崎「瑠璃くん!」


何か騒いでいるけど放っておこう

この小舟にあれだけ見栄えのする男どもが揃って乗っている

目立って仕方がないと思います

私は聞こえない振りをして、ごろりと横になった


--------------------------------------。


目が覚めると辺りは真っ暗で、何故か私は一人だった

(あれっ、皆は?一さん!何処?)

はぐれてしまったのかな

すると、遠くか音が聞こえてきた

ザッ、ザッ、ザッ…、音は乱れることなく一定だ

段々と音は大きくなり、こちらに近づいていることが分かる

目を凝らすと赤い光が二つ…いや無数だ

軍服を着た黒い男たち、目だけが赤く光っている

(夢魔!)

逃げようとするも足がいう事を利かない

腰の刀に手をやる、刀が重くて抜けない

どうしよう、声も出ない 此処で死ぬのかな


--------------------------------------。

「うっ、うう。た、す…」


「瑠璃、瑠璃!」

「ん…」


斎藤「気が付いたか」

沖田「どうしたの?うなされていたけど」

永倉「顔色悪いな」


目を開けると、いつもの顔ぶれが上から私を見ていた

ああ、夢だったんだ ゆっくりと体を起こした


瑠璃「夢を見ました」

藤堂「夢?」

瑠璃「皆と逸れてしまって、そうしたら大勢の夢魔が近づいて来たんです。逃げようにも足が動かないし、戦おうにも刀は抜けないし、挙句は声も出ないし、怖かった」

土方「夢だろ?ちゃんと俺たちはお前の側に居る。置いてったりしねえ、安心しろ」


土方が頭をポンポンと軽く撫でた


途中、新政府軍が朝廷の錦旗を上げたのを見た

これで討幕派は正真正銘の官軍になったのだ

国の戦争に首を突っ込むつもりはないが、夢魔を操っての戦争は許しがたい


日も暮れかかった頃、私たちは大阪に着いた

今夜は宿で体を休めることができる

大阪は商人の町と言われるだけあって活気があった

宿への人引きもたくさんいる


瑠璃「さすが大阪、活気の具合が京とは違いますね。なんだかお祭りみたい」

原田「ははっ、祭りか。まそういう見方もあるな」

山崎「京と違い、よそ者をあまり嫌わないようです」

瑠璃「そうなんですね」


宿に着き夕餉も済ませ、各々の部屋へ

風呂の設備があるようで、自由に入って構わないと言われた

そう言えば世間的には私はどちらなのだろう

取り敢えず、副長に確認しなければ


瑠璃「土方さん、瑠璃です。今、宜しいですか?」

土方「ん?ああ入れ」

瑠璃「失礼します」

土方「どうした、眠れねえのか?」

瑠璃「いえ、これからお風呂に行こうと思ったんですが、その前に確認があります」

土方「なんだ」

瑠璃「私は女湯に入っていいのでしょうか」

土方「・・・は?」

瑠璃「は?じゃなくて。私は世間的に女なんですか?男なんですか?」

土方「くくっ、なるほどな。お前はどっちがいい」

瑠璃「どっちって、今更どっちでもいいんですけど、宿では女湯に入りたいです」

土方「じゃぁ、女湯に入れ。男湯はいつまで経っても入れねえしな」

瑠璃「はい!そうします」


満面の笑みを浮かべた瑠璃が部屋を出て行った

これまで彼女には無理と我慢を強いてきた

泥に、血に塗れて戦場を渡り歩かなければならない事を思うと

風呂ぐらいはゆっくり浸からせてやりたい

いつかは女らしく着飾らせてやりたい

それは土方の願いでもあった


あの日、運命を知った日から人の世と神の世という

重い荷を背負ってしまったのだ

この使命が果たされた時を想いながら進むしかない


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