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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第四十二話 兄弟という縁(えにし)

これまでの事を振り返ると基本的な歴史の流れは変わっていないようだ

恐らくこれから鳥羽伏見の戦いが起きて戊辰ぼしん戦争へ突入するのだろう

歴史と違うのは、夢魔だのサキュバだのといった非現実的要素だ

なにより、私の存在その物がおかしい 時を超えたなどもってのほか

最近はもといた時代の風景や友の顔が霧がかかったようにぼんやりだ

私はいったいどの時代を生きているのだろう



沖田「また難しいこと考えてるでしょ?」

瑠璃「え…」

沖田「どうせアレコレ考えて、自分の存在がどうのとかまでいっちゃったんじゃないの」

瑠璃「…」

沖田「ちょっと来て。一くん、瑠璃ちゃん借りる!悪いようにはしないからっ」

瑠璃「えっ、ちょっと!」

斎藤「総司」

原田「大丈夫だ、あいつは本気で瑠璃の事を心配してるんだ。男としてではなく兄弟のような立場で瑠璃のことを見ている」

斎藤「どういう意味だ」

原田「何となくだが分かるんだ。俺たちはいつの世かで血を分けた兄弟だったんじゃねえかってな」

斎藤「…」


総司は私の手を引いてぐいぐい神社の境内奥へ進んでいく

なんだか、雰囲気がいつもの総司じゃない


瑠璃「何処行くの、手痛いしっ!」


神社の裏手にある大きな木が見えてきた その木の下で、手が放された


総司「ねえ瑠璃、君は自分の存在がこの世に悪い影響を与えているんじゃないかって思ってない?」


(瑠璃って…いつもはちゃん付けなのに)


瑠璃「何言ってるの、もうそう言うことは思って…」

総司「思ってるよね。有り得ないことが起きる度に自分を責めるように自身の存在を確認してる」

瑠璃「えっ」

総司「前に言ったよね。全ては偶然しゃなく、自分で選んで来たんだって。瑠璃はそれを覆すの?」

瑠璃「…」


人には偉そうな事言っておいて、私は何か事が起きる度に逃げていたんだ

私はこの世の人間ではないからと、言い訳ばかりしていた 最低だ

じわりと涙が込み上げてくる

泣いても解決しない!泣いても自分は変わらない!

唇を強く噛み、涙が出るのをぐっと堪えた


総司「ほら、そうやって自分を殺そうとする」


沖田がふわりと瑠璃を包み込むように抱すくめる

何が起きたのかを理解するのにそう時間はかからなかった

肩口に沖田の顔がある 彼の匂いはどこか懐かしく胸が締め付けられるようだった

それは、斎藤とは違う感情で でも、愛には代わりない 愛?

そう思った瞬間、我慢していた涙が堰を切ったように落ち始める

自分が無くした何かが見つかったような安堵感


目を閉じると、幼い二人の姿が見える いつも追いかけては離され

見つけても隠れられ それでも二人はいつも一緒だった いつも笑っていた


瑠璃「はっ、総司って・・・」


いつの時代か分からない

遥か昔の事なのか、私たちは家族だった


総司「うん、僕も最近思い出したんだ。いつの時代かは分からないけどね。僕たちは双子だったんだよ。残念なのは僕が弟って事かな」

瑠璃「どっちでもいいよ」


総司が私の背をよしよしと撫でる

私は一人じゃなかった お互いの感情が手に取るように分かった事も今では納得できる

あの時、総司を救って本当に良かった


総司「落ち着いた?」

瑠璃「うん」

総司「あのさ、もっと驚くこと有るんだけど、聞く?」

瑠璃「え!これ以上に?こ、怖いよ」

総司「う~ん、確かにゾッとするけど遅かれ早かれ分かることだから言うね」


瑠璃はごくりと唾を呑んだ


総司「僕たちの他にあと二人兄弟がいる」


それを聞いて膝がガクガク震えだした

それが、もし、一さんだったら 


瑠璃「だ、れ?」

総司「大丈夫?顔青いけど」

瑠璃「はやく!早く言ってよ」

総司「あのね、長男が鬼で二男が女たらし」

瑠璃「へ?」

総司「だから、分からないかなぁ」

瑠璃「うそぉお!土方さんと左之さん!?でも私たち全員苗字が違うんですけど!!!」

総司「うん、僕たち兄弟って濃すぎるよね」


総司は嘘をついていない これは、本当なんだ

私は力が抜けて、その場にへたり込んでしまった


瑠璃「よ、よかったぁぁ…はぁ」

総司「何か良かったさ。土方さんと兄弟だよ?」

瑠璃「いや、もういいよ。うん、それでいい。帰ろう!早く、帰ろう。」


総司は不機嫌そうに首を傾けていたけど、構うことなく戻った

あの二人はまだ知らないらしい



それから屯所に戻った私たち

何にも変わらないはずなのになんだか落ち着かない

何故?以外の言葉が思いつかないのです

皆、瞳の色が違っていて恐ろしく容姿端麗だ 総司に至っては自分と双子とは思えないほどだ

母親が皆違うのだろう もしかしてハーフ?


斎藤「瑠璃、そのようなところでコソコソと何をしている」

瑠璃「きゃっ!一さんかぁ。驚いたぁ」

斎藤「いや、驚かすつもりはなかったのだが・・・して、何をしている」


とうわけで、一さんに兄弟についての話をした

最初は悪い冗談はよせだの、証拠がどのって全く受け入れてはもらえなかった

最終的には、


瑠璃「私は一さんと兄弟じゃなくて、心から安心したんです。泣きそうになりました」

斎藤「そ、そうか。俺も、安心した」


その頃、沖田はこの事を当の二人に真面目に話した

土方は更に眉間に皺をよせ、原田は合点がいったように頷いた


廊下で左之さんに会った いつも以上に目を細めてほほ笑む


瑠璃「どうしたんですか?」

原田「いや、俺にこんな可愛い妹がいたなんてな嬉しくってよ」

瑠璃「あ、ありがとうございます」


左之さんと別れ自室へ続く廊下を進むと、


「ひゃっ」


突然手を引かれて部屋に引き込まれた!


瑠璃「何するんですかっ、って土方さん?なんですか」

土方「・・・」

瑠璃「なんで黙っているんですか、何か言ってくださいよ」

土方「おまえ、俺が兄だと聞いてどう思った」

瑠璃「え?どうって?」

土方「その、なんだ。いいとか悪いとか、だな」

瑠璃「驚きましたよ!」

土方「驚いた、だけか」

瑠璃「嬉しかったです!一人じゃなかったんだって。まさか4人兄弟とは思いませんでしたけど」

土方「そ、そうか。まあ、よろしく頼む」

瑠璃「ふふ、はい」


なんとなくそんな予感を抱いていた土方と原田

もやもやしたものが一つ消えたようだった

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