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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第四話 居候として

とにかく暇で仕方がない。

せめて時間が経つことをしたいと思った。

何か手伝いがしたいと申し出たところ、とにかく何をするにも副長の許可がいるそうだ。

私は緊張しながら副長室へ向かった。


「佐伯です。宜しいでしょうか?」

「入れ」


張りつめた空気、まるで面接に行く時のようだ。

入り口付近に静かに座る、もちろん正座で。


「何か用か?」

「はい、副長の許可がないと何もできないと聞いたので」

「それで?」

「はい、ここへ来てもう半月が経とうとしています。保護していただいたあげく、上げ膳据え膳で何もしていない状態です。勝手にうろつくわけにもいきませんし、信用されていないのは重々承知ですが、暇なんです!何か仕事ください!」


状況説明しているうちに妙に感情がこもってしまい、つい声が大きくなった。

チラリと土方さんの顔色を伺ってみたものの相変わらず手元の筆は止まらない。

眉間には皺が刻まれたまま。


「・・・暇、か」

「はい、暇で体も頭もおかしくなりそうです」

「取り敢えず、真田の手伝いでもしろ」

「はい!ありがとうございます!」


嬉しくて、スパーン!と戸を閉めてしまった。

障子が跳ね返って少し開いた。


「おい!障子も静かに閉められねえのか、ばかやろう!」

「ひゃっ、すみません!」


こ、怖い。そんなに怒らなくてもっ。

次からは気を付けようと、その場を後にした。


さて、真田さんを探そう!


「藤堂さん、真田さんを知りませんか?」

「百合なら洗い場にいたぜ。ってかさ、藤堂さんはちょっと堅くないか?」

「そうですか?」

「あぁ、平助でいいよ」

「呼び捨てはちょっと、藤堂さん歳は?」

「ん?俺?二十歳だけど」

「若いとは思いましたけど、私より年下なんですね」

「えっ、嘘だろ。お前俺より年上なのか?」

「はい、二十三歳です」

「はああ!!」

「おい、平助。なに騒いでるんだ。土方さんにどやされるぞ」

「左之さん大変なんだって。こいつ俺より年上なんだってよ!」


原田さんは上から下、後ろから前と私をくまなく見る。

何か問題でもあるのだろうか。


「斎藤や総司と同い年か」

「あの、お二人とも何か問題でも?」

「いや、てっきり十八ぐらいかと思ってたからよ」

「は?十八って・・・」


この騒ぎに現れたその他の幹部の皆さん勢揃い。


「では藤堂さんは私より年下なので平助って呼びますね。あと真田さんも百合ちゃんって呼ぶことにします。他の皆さんはこれまで通りでよろしくお願いします」


すると、沖田さんが近くまでやってきた。


「平助は平助って呼ぶんなら僕の事も総司でいいよ。同い年でしょ?」

「えっ、まあ沖田さんがいいのなら」

「なら、俺の事は左之助でいいぜ」

「いや原田さんは年上ですから、せめてさんは付けさせてください。左之さんでいいですか?」

「おお、じゃぁ俺も名前で呼んでくれよ」

「永倉さんもですか、では新八さんで・・・」


私は何も発しない斉藤さんに一応聞いてみた。


「あの、斉藤さんは・・・」

「・・・」


怒ってるのかな?


「・・・でいい」

「はい?すみません、もう一度いいですか?」

「あんたの好きなように呼んでいい」

「そうですか。では斎藤さんは一さんと呼びます。いいですか?」

「あ、あぁ」 


斎藤さんの顔が少し赤い気がするけれど気にしないでおこう。

皆さんにも私のことは「瑠璃」と呼んでもらうことにした。


こして、ようやく軟禁状態から居候に昇格。

早速、百合ちゃんのお手伝いをしようと張り切ったものの私は平成の日本で育ったのだ。この昔の生活がなんとも難しい。

まず、窯に火を入れる、キャンプで体験したけど結局自力では点けたことがない。

貴重なマッチを無駄に出来ないというプレッシャーに負け、まだ火入れは見ているだけ。

一人ではお湯も沸かせないのです。


隊士のまかないを作る鍋は大きく重い。

便利な家電に囲まれた生活をしていた私。

この時代では間違いなく飢え死にするだろう。


洗濯に至ってはとてつもなく重労働だった。

見たことはあったけれど”洗濯板”、これでゴシゴシ擦る。

脱水機なんて当然ない、手で絞る。

これ一日では乾かないと思う。


次に綻んだ隊服を縫う。

家庭科の裁縫を放棄してきた自分が恨めしい。

針に糸を通すのに時間がかかり、縫ってはいけないところまで縫い、日が暮れた。


「百合ちゃん、ごめんなさい。私何もできなくて」

「瑠璃さん大丈夫です。まだ初日ですよ!すぐに慣れますから」

「ありがとう。頑張るから見捨てないでね」


百合ちゃんは笑顔で優しく教えてくれる。

本当にいい娘だと思う。

自分はなんて恵まれた暮らしを送っていたんだろう。

なんだか泣きたくなった。

それでも毎日やっていれば慣れるもので不器用なりにも、一通りはこなせるようになっていった。

三か月もかかったけれど・・・

でも、誰も私に文句を言ってこなかった。


少しは役に立てているのだろうか?

信頼は得られているのだろうか?

時々、孤独感に襲われそうになる。


私はどうして此処に居るんだろう。

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