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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第三十七話 夢魔再び

時は慶応三年十月十五日、大政奉還が勅許ちょっきょされた。

これで長きに渡り国を動かしてきた江戸幕府は終わりを告げた。

しかし、事実上は朝廷に政権を運営する能力がないため徳川の影響は否めない。


遂に大政奉還されました。

そして、戦争が勃発してしまうんですよ。外国からも目つけられているはず。

だって日本はぐらぐらと不安定な状態だから攻めるなら今!って狙われてるのでは?


そんな折り、起きてしまったのです。

”夢魔殺人事件”


山崎「三条大橋付近にて夢魔の残骸と町民と思われる屍が数体転がっていたと報告がありました」

土方「なに!」

山南「山崎くん、死んでいたのは民だけでなく夢魔もと言うことですか?」

山崎「はい」

近藤「仮に民は夢魔に襲われたとして夢魔はどうして」

山崎「それが、我々が駆け付けた時には始末された後で」

土方「どこのどいつが始末したのか分かるか」

山崎「話によると、薩摩藩ではないかと」

土方「薩摩だと?あいつらも確か夢魔部隊を作ったんだったか。長州は動いてねえのか」

山崎「今のところは」


幹部が召集され会議が始まった。

夢魔は寿命が尽きての残骸なのか。それとも、誰かの手によって倒されたのか。

そしてなぜ、軍隊として作られたはずの夢魔が市中に出、町民を手にかけるのか。以前も似たようなことがあった。

土方さんと巡察に出た時だった。

なぜ・・・


原田「町民を手にかけるって、目的はなんだ?」

永倉「制御できねえで暴走してんじゃねえのか」

斎藤「薩摩が焦って始末するあたり、そのように考えてもおかしくはないだろう」

沖田「・・・」

瑠璃「・・・」

藤堂「でもさあ、夢魔って薩摩だけじゃないんだろ。長州も持ってるんだよな」


百合ちゃんたち、今頃どこにいるのかな。

何か手がかりは掴めたのだろうか。

夢魔という言葉を聞くと、彼女の事が思い出される。


近藤「薩摩藩邸や長州藩邸に対して明確な理由がない限り、ご用を改めるわけにもいかん」

山南「そうですね、仮説で乗り込める場所ではありませんからね。探るにしても我々は有名になりすぎましたしね」

土方「探る…か。鼠みたいな事できるやつなんて山崎の他いねえしな」


土方さんが言うように山崎くんの身体はひとつしかない。

薩摩と長州同時に探ることは不可能だ。

かといって他の観察組は島田さんのように護衛的な人ばかりでそういう仕事には向いていない。


藤堂「だよなぁ、俺らじゃ顔割れてるし。山崎くんみたいに身軽でひょいひょい飛んで行ける奴なんてさぁ・・・ああ!?」

沖田「平助くん、気づいちゃった?」

藤堂「あ、ああ。だけど、言っていいのかな」

瑠璃「何を」

永倉「平助、言いかけた事は最後まで言えよ」

藤堂「え、でも」


藤堂は瑠璃を凝視したまま悩んでいる。

それを見て、察したのか皆が反応し始めた。


土方「なるほどな」

原田「そういう事か」

斎藤「!?」

山南「ああ、その手がありましたか」

永倉「そう言うことか!」

沖田「当の本人は気づいてないみたいだけどね」

瑠璃「何ですか、じろじろと人の顔見て。気持ち悪いんですけど」

近藤「何がなるほどなのだ」


近藤もまた理解できていなかったようだ。


土方「山崎のように身軽で顔が割れてない者だろ?」


土方は諭すように瑠璃を見つめる。


瑠璃「え、それって、・・・誰ですか?」

全員「おいっ!」


皆の張りつめた空気が一気に崩れる。


山崎「君のことだろっ」

瑠璃「えぇぇ!そうだったんですか?早く言ってくださいよ」

近藤「なに!瑠璃くんを潜らせるのか。女子を一人でか?危険ではないか!」

山南「局長、我々も忘れていたのですが、彼女はそういった方面に長けています。戦闘能力に関しましても、恥ずかしながら我々以上かと」

近藤「そう言えはそうだったな。しかしっ」

瑠璃「近藤さんのお気持ちありがたく頂戴いたします。でも、大丈夫ですよ」

土方「決まりだな。決行はもう少し調べてからだ」


一旦、会議は終了。山崎くんの情報待ちといったところです。


斎藤「瑠璃、少しいいか」

瑠璃「はい」

斎藤「その、瑠璃のことは信じている。だが・・・」

瑠璃「一さん、大丈夫ですよ。人並み外れた能力がありますから」

斎藤「ああ、分かってはおるのだ。それでも心配であることに変わりはない」


好きな人には危険な目には合ってほしくないもの。

自分の目の届かない所では尚更の事だ。


瑠璃「一さん、ありがとうございます」


瑠璃は斎藤にそっと抱きついた。

腕を背に回せば彼の温もりが伝わってくる。

斎藤もそれに答えるかのように回す腕に力を入れた。

誰かに想われていること、それは何よりも己の力となる。

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