第二十四話 髪を切りました!
屯所に帰ると、予想通り大騒ぎだった。
百合ちゃんは瑠璃さんが可哀想だと涙ぐみ。
総司はにこにこしながら、可愛いといってくれた。
左之さんは短髪が似合う女は瑠璃以外にいねえだのと、これまた大袈裟に褒めてくれた。
平助と新八さんは二人して顔を真っ赤にし突っ立ったまま何も言ってはくれない。
そこへ、土方さんがやって来た。
「おい、幹部が揃にも揃って何やってんだ。瑠璃、あいつ等どうにかしてくれって…おまっ!」
土方さんは口をぽかんと開けて、私をじいっと見る。
「こいつは驚いた、意外と似合ってるじゃねえか。なあ斎藤!」
「っ、あ、はあ」
くくっと笑いながら去って行った。
やはりこの時代に女子が短髪にするのはあり得ない事なんだと改めて認識した。
でも、誰一人おかしいなんて言ってこない。
そこが彼らの良い所だと思う。
(一さん、私疲れちゃいました。お部屋でゆっくりしませんか?)
「ああ、行くか」
(はい!一さんの部屋でいいですよね?)
これから忙しくなると思うので今のうちに一さんとゆっくり過ごしたいと思ったのです。
部屋では一さんが刀の手入れをしている。
この刀で数々の戦いをくぐって来たんだなと思うと胸が苦しくなってきた。
たった一人で潜り抜けてきたんだろうなんだか、涙が出てきた。
「ん?瑠璃どうした。泣いているのか!」
(一さんが刀の手入れをしている姿を見ていたら、なんだか泣けてきて)
「なっ、なぜそれで泣く」
(その刀で数々の修羅場を潜ってきたのかな?とか考えてたらつい。私なんて平和な世界で温温と育ってきたのに、一さんは、うっぇ)
「あんたは感情が豊かすぎるな」
そう言って、涙を拭ってくれました。
「その…俺は果報者だと思っている。瑠璃に出会えた故。瑠璃はこんな乱世の時代に来て、苦労しているがな」
(私も幸せですよ。一さんに見つけて貰えて、一さんの事を好きになって。前の時代よりも毎日幸せです。)
「瑠璃…」
一さんの私を見つめる瞳がゆらゆらと揺れている。
潤んだ瞳には私が映っていた。
私は一さんの事がたまらなく愛おしくなって自分から唇を寄せた。
少し驚いた一さんは一瞬戸惑ったようだったけれど、仕返だと深い口付けを返してきました。
「瑠璃、本当に幸せか?」
「はい…しあわせです。一さん」
「ん!?、声、声が出ているぞ」
「本当だ!ふふふ、一さんのキスのお陰ですね」
「き、す、とは?」
「はい、キスは口付けと言う意味です」
「なっ!」
「やっぱり、一さんが治してくれました」
「瑠璃、あんたは…」
一さんは、何か言いたげだったけれどその先の言葉は呑み込まれてしまったので知りません。
瑠璃はいつも真っ直ぐに俺を見ていた。
左利きを、凄いと自分の事のように喜んだ。
俺は瑠璃をこの時代に、俺の目の前に送り込んでくれた事に感謝している。
俺の冷え切った心と身体に温もりを蘇らせたのはお前だ。
何があっても離しはしない、己の命に代えても必ず守る。
「一さん?」
「?」
「ふふ、一さんって可愛いですね」
「なにっ!」
「怒らないでください、褒め言葉です」
「そのようには聞こえん」
「普段とのギャップが堪らないです」
「ぎゃっぷ?」
「ええ、普段は表情を変えず、任務は怠らず、冷静沈着な堅い人。でも、実は表情も感情も他人より豊かで、時に子どものようです」
「そ、それは、あんたの所為だ」
「えっ?」
「瑠璃の所為だと言っている。お陰でこの有り様だ」
「私って凄いですね?」
「ああ、瑠璃には敵うまい」
これから激しくなるだろう戦いもきっと乗り越えて行ける。
あなたがいる限り。




