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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第二話 拾い物

何故かその場に置いてくることが出来ななった。

行く当ても、頼る相手も居ないことはこの女の表情から見て取れた。

具合でも悪いのか俺の背で眠ってしまった。

規則正しい息遣いからは問題はなさそうだが。


「さて、副長には何と報告するか。いや、その前にあの者たちに何と説明する」


そう思案していると、


「はじめくーん!」

「平助、か」

「おぉ!って、何それ?・・・女じゃん」

「不逞浪士を始末している所に居合わせた。目撃者だ」

「ふぅん、美人だね」

「っ//」

「あっ、左之さんたちだ。左之さーん!」

「おぅ!この雨の中散々だったな。で、斎藤この女は?」

「あぁ、その、参考人だ」

「へぇ、それにしても別嬪だな。生きてるのか?」

「もしかして怪我してるんじゃねえの?」

「山崎を呼んどいてやるよ」

「新八、すまんが宜しく頼む」


屯所らしき所に着いたのか、部屋で布団に寝かされた。

頭では起きなくてはと思うのに、身体が言うことをきかない。

瞼が重い。ただ、ただ眠い。


「で、その女は」

「今は寝ています。山崎が言うには特段変わった様子はなく、ただひどく疲れているようだと」

「そうか。あの女何者だ、身なりも顔だちも言う事ねぇが」

「はぁ、それがよく分からないのです」

「分からない」

「はい、不逞浪士を追っていると、突如空から降ってきたもので、まだ名も知りません」

「は?降ってきた?」


土方は眉間に皺を寄せ斉藤を睨む。

斎藤は視線を動かくすことなく、真っ直ぐ座っている。


「・・・」

「土方さん、僕が探りましょうか?」

「総司か。まあいいだろ、目が覚めたら女の様子を探ってくれ手荒な真似はするな、後で面倒が起きても困る。平隊士には伏せておけよ!」

「はいはい、うまくやりますよ」

「御意」


二人が部屋を出て行ったのを確認し、土方は一人愚痴る。


「はぁ、何だあの女。しかし珍しいな、総司や原田ならまだしも、斎藤が拾い物とはな」


 **********


どれくらい寝ていただろう。

目が覚めたのはいいものの、辺りは暗い。


「はぁ」 


ため息を漏らすしか出来ない。

何度見直しても、ここは和室で電気はなく、畳に薄っぺらい布団を敷いている状態だ。

相変わらず外は雨が降っているようだった。


ガタっと音がしてスーッと障子が開いた。


「起きたか」


あの、人を斬った男だった。


「は、はい」


男は静かに部屋に入り、灯りを点けた。

灯りと言っても蝋燭のような頼りない灯りだ。

そして男はこちらへ向き直った。

ぼんやりとしか顔がうかがえないけれど背を伸ばした姿は美しい。


「名は何と言う」

「え?あ、瑠璃と言います。佐伯瑠璃です」

「何故あの場にいた」

「なにゆえって・・・」

「なぜあのような所に女子(おなご)が一人でいたのかと聞いている」


ずいぶんと自分がいた世界と口調が違う、時代劇のようだ。


「なぜと言われましても、私の意志でここへ来た訳ではないので分かりません」

「お前の意志ではない、と。ならば誰がお前を連れてきた」

「ええっと、その、その人が誰で何者なのか私にも不明です。気が付いたらこの時代劇のような世界に落ちてしまっていて、ここは何処ですか?」

「なっ、からかっているのか!」

「違います!私だって知りたいのにっ!!」


なんだか妙に腹が立って、目の前の男性を怒鳴ってしまった。

どうしよう斬られるのかな私。


「っ・・・」


目の前の男性は驚いたのか、目を見開きこちらをじっと見つめたまま動かない。


「す、すみません。大きな声を出して。でも本当に分からないんです。だから怖いんです。ここは何処で、いつの時代で、私はどうしたらよいのか」


恐怖と混乱で泣きそうになるのを堪えていた。


「す、すまない。あんたが一番困っていたのだな」


あんた?おまえよりは怖くないからいいか、などと妙に冷静な自分がいた。


「取り敢えずもう少し休め。明日の朝、もう一度皆にあんたが分かる範囲で話をしてくれ。俺は斎藤一という。では、邪魔したな」


そういって斎藤という男は部屋を出ていった。


じゃましたなって・・・本当にここは何処ですか!

 

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