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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第一章 起承~京都・大阪編〜
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第十八話 気を操るべし

ある晩、またあの声の主が夢に現れた。


「相変わらず元気そうでなによりだ」

「今度は何でしょうか」

「治癒能力だか、普通の怪我や病気なら寿命を削らずとも使える手段がある」

「えっ?教えて下さい!」

「気功を身につける事だ。気の流れを上手く操れるようになれば何でも出来る」

「ああ、中国武術ですね。でも、どうやって学べば」

「これを」

「わっ、これ映画で見たことあります!教本だ。でも、読める気がしません」

「読むのではなく、感じるものだ」

「………は?」


「また意味不明なことを・・・」と言おうとした時には消えていた。

何て身勝手な方なんだ!と強く叫びたい!

あの人は誰なの!


「瑠璃さん?起きてください!朝餉なくなってしまいますよ」

「んー。おは…えっ!寝過ごしたぁ。先に行ってて、直ぐに追いかけます」


急いで身なりを整え、布団を畳もうと持ち上げる。

”ドサッ!”

え?何か落ちたのかな・・・教本だ!

あれは本当だったんだ。

パラパラと捲ってみると、難しい漢字と怪しげな絵が脳に直接交信してきた。

“気”を操る方法が頭に入ってくる。


「はあ、はあ」

なにこれ?疲れる。でも嫌な疲れではないような。


「瑠璃、まだ部屋にいるのか?」

「あっ、一さん!すみませんっ、今行きます!」

「どうした。汗をかいている」

「えっと、ちょっとしたハプニングが起きまして。そうだ、朝餉残ってますか?」

「パプ・・・」


百合ちゃんのお陰で、何とか朝餉にありつくことがでた。


「なぁ、瑠璃」

「何でしょう?左之さん」

「お前、今日はすげえ元気だな」

「そうですか?いつもと変わらない気がしますが」

「隣に座ってるだけなのによ。俺まで力がみなぎってくる様な気がするんだ」

「そうですか?」


左之さんがお世辞言う時の目とは違う。

今日の私は絶好調なのでしょうか?


部屋に戻り、ふと考える。まさかアレ(教本)の所為?

取り敢えず試してみよう。

今日は非番なので、裏の境内ですることにした。


瑠璃は木の下に座り、教本を広げ、瞑想で精神統一をする。

斎藤が道場でしているのを見たことがある。

彼の居合は精神の研ぎ澄まされた者にしか出来ない早技だ。

それを真似てみようと考えたのだ。

目を閉じると勝手に腕と指が動く、手のひらの中心には何か温かい物を感じる。

何度か繰り返しているうちに、


「分った!これは治癒だけでなく、武術にも使える。相手の力を利用して反撃も出来る。凄い!これを作った人っていったいどんな人なのかな」


教本をまじまじと見ていると、どこからともなく足音が近づいてくる。


「此処にいたか」

「一さん、どうしたんですか」

「瑠璃の姿が見えなかった故、その、探していたら気配がこちらからしたのでな。やはり、間違いなかったな」

「姿が見えないから探してたって。寂しかったんですね」

「いや、そのような事では・・・」

「そういう事にしておいて下さい。私は嬉しいんですから」

「全く、あんたには勝てる気がせん」


斎藤は怒ったような、拗ねたような、少し照れた表情をしている。

その顔は瑠璃にしか見せない表情でもあった。


「それはそうと、此処で何をしていた。何か大きな気配を感じたが」

「もしかして一さん分かるんですか!“気”が」

「気?ああ気配とは違う何かだった。誰か居たのか」

「いえ、私が気を操る練習をしていたのです」

「そのような事が出来るのか」

「実は気を上手く操れば、自分の命を削らずに済むようなんです。しかも治癒だけでなく、武術にも成果が出るんです。気で体力も回復させることが出来ます」

「・・・なるほど、何となくだか理解できる」

「一さんも、知らないうちに操っているんだと思いますよ。一さんの居合は並外れていますから」


夢に出てきた主の話と手に入れた教本の話をしながら、屯所へ戻る。


「帰るぞ」と斎藤は瑠璃の手を取った。

斎藤と手を繋ぐと、お互いの気が混ざり合ってくように思えた。

やはり彼は瑠璃にとって唯一無二の存在なのだろう。

斎藤もまた瑠璃に触れると、身も心も落ち着ついていくのを感じる。

この様な感覚はこれまで味わったことがなかっただろう。

瑠璃となら何が起きても切り抜けて行ける。

そんな気さえしていた。


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