第十四話 洋装にしよう
最近の私は専ら土方さんと仕事をしている?
小姓という立場があるようで、まあ小間使いみたいなもの?
ずいぶん慣れたと思うけれど、やはり土方さんと二人は緊張する。
「土方さん、お茶淹れましょうか?」
「ああ頼む」
土方の仕事は部屋に籠り、書き物をする事が多い。
この時代の字を読むのは難しいが、お金の勘定などの計算を手伝っていた。
同室とはいえ、お互いが忙しい瑠璃と百合、女子特有の他愛ない話が出来ていない。
お茶を理由に出てきたものの・・・居ない。
「はぁ・・・居ない」
「誰か探してるのか?」
「ああ、平助。探してる訳じゃないけど、居たら嬉しかったなあと思って」
「誰だよ」
「百合ちゃん、会いたいなあって」
「そういえば最近忙しいもんな。土方さんから離してもらえねえんだろ?」
「うん・・・私もそのうち眉間に・・・げっ」
「大丈夫だ、瑠璃の眉間には皺入ってねえよ」
「平助、う、し、ろ」
「あ?げっ!!土方さんっ」
「じゃ、じゃあな」
土方が炊事場に来ることなど滅多にない。
故に、誰もが油断する場所でもある。
「悪いな、お前の眉間にまで皺作っちまってよ」
「す、すみません。」
「それより、今から出かける。お前も付き合え」
「はい」
話によると最近は隊服が洋装に変わっているらしく、薩摩や長州は一部それを取り入れているとか。
着物の隊服とは違い動きやすい。
そこの事を一番よく知っている私に洋装を見立てて欲しい、というのが今回の同行理由。
「瑠璃、見てくれ。」
「おお!想像より恰好いいですね」
「まあ見た目はとにかく、実際どうなんだこれは?」
「はい、窮屈に見えますが、かなり動きやすいですよ。ブーツは慣れるまでは重く感じますが皮でできているので丈夫です。試着して見てください」
「試着?」
「はい、試しに着て見てはどうでしょうか」
土方さんなら絶対に似合う!
いやうちの幹部たちは間違いなく似合う!
「おい」
「はい?」
「すまん、着方が分からねえんだが」
「そうですよね!ではお教えします。これはボタンと言います。これをこの穴に通す、この繰り返しです。これはベルトです。ズボンのここに通して・・はい!出来上がり」
瑠璃は土方に洋服の着方を教えた。
背の高い彼には文句の付けどころが無いほどによく似合っていた。
日本人離れした体格の持ち主だったからだ。
「おい、何呆けてる」
「あっすみません、見惚れていました」
「おまっ、そういう事を平気で言うな」
というわけで、全員この洋装に切り替えることとなった。
因みに、お願いして私と百合ちゃんの分も作ってもらうことに。
一度、着てみたかったのと 正直に言うと着物は面倒臭い。
十日程で先に幹部の隊服が出来上がった。
瑠璃は順に洋服の着方を教える。
これに伴い断髪をしたほうがよいと強く瑠璃が言う。
この時代、髷を結うために男も長髪だったからだ。
激しく抵抗されることを覚悟していた瑠璃だったが意外とすんなり提案を呑んだのだ。
「皆さん意外と適応能力あるんですね」
「瑠璃さん、私も切らなければならないでしょうか」
「百合ちゃんは・・・そのままで」
とても悲しそうに問いかけてくる百合には切れと言えなかった。
この頃までの女性は髪は本当に命だったんだろう。
瑠璃はと言うと・・・
生きていた時代が違うため女子が髪を切ることに抵抗はなかった?
本人は切る気満々でいた。




