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Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第三章 結〜蝦夷編〜
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第百十二話 償い

山崎が針の治療をするために中に入るとそこに福山がいた


「あれっ、山崎さん!こんにちは」

「ああ福山さん。あなたも此処に?」

「ええ、有難いことに役人の何人かに指名されていまして」


彼は施術師であり評判もいい、定期的にこうして呼ばれているのだろう

お互いに依頼された仕事が終わると園庭に出た。


「この後はもう終わりですか?」

「はい、連れを探してそれから戻ります」

「お連れって・・・佐伯さん?」

「え、あ、はい」


福山は空を見上げた 青く澄み渡る空に独特な模様の雲が浮かぶ


「あっ!あの雲っ!」

「どうかしましたか」

「ほら、あの龍の形をした雲が西の空に浮かんでいるでしょ」

「龍の形?そう言われたらそう見える気がします。それが?」

「そろそろ帰る時期かもしれない」

「え?」


福山はにんまり笑うと山崎の肩をポンと叩いた


「あっちでも会えたらいいですね!俺は会えると思っているんですが」

「は?」

「じゃぁ、また!」


そう言って、彼は去って行った

あの雲には何か意味があるのか、あっちでも会えたらとはどういう意味だ


赤松の木が立っている場所に向かうと

瑠璃がその木の根元で休んでいた 

眠っているのだろう その姿が儚げでまた山崎の胸を締め付ける

どう声を掛けたらいいのか 暫く瑠璃を見つめたまま動けないでいた


「おい」

「っ!?」


誰かが山崎の肩を叩いた、すっかり油断していたのだろうビクリと肩を揺らす


「すまん、驚かせたか」


振り向くとそれは歳三だった


「土方さんっ」

「くくっ、俺はもう土方じゃねえぞ・・・まあ、いい。瑠璃はずっとあのままか」

「恐らく、俺も先ほど戻ったばかりなので」

「そうか」


頼むと言いつつも心配で仕方がなかったのだろう

幹に寄り添う瑠璃のもとへ静かに歩み寄る

顔を覗き込めば涙を流した後が頬にあった

歳三はそれを見て、思わず瑠璃の身体を抱き寄せた


「なんでだ、なんで瑠璃がこんな思いをしなくちゃならねえ!」


時間が解決するだろう そう思っていた

だが、どんなに時間が流れても瑠璃は斎藤を忘れない

瑠璃の命がある限り、斎藤は生き続けているからだ

いっそあの時、斎藤が死を選んで瑠璃も一緒に連れて行ってくれたら

そうしたら、こんなに苦しむことはなかったのではないか

こんな辛い思いをするのは俺達だけでよかったんだ



「んー。あ、歳三兄さん・・・」

「目が覚めたか、お前こんな所で寝てんじゃねえよ」

「あれ、寝てました?」

「おう、よだれ垂らして寝てたぞ」

「ふふ、嘘ばっかり」


だが、ふわりと笑を浮かべるその表情を見ると

そんなことを少しでも考えた自分が愚かだと気付く

瑠璃が居ないと俺達は駄目になる

斎藤が守り抜いたこの命は何がなんでも守ってみせる

俺がお前の盾になり、槍にもなるさ


歳三は瑠璃の手を取り起こすと山崎の方を向いた


「帰るか」

「はい」


そしてもう一度、赤松の木を振り返った その時

見覚えのある影がひとつ


「あんた、今頃何しにきた。また何かの依頼か」

「いや」


その見覚えのある影とは神でもある彼らの父親だった


「瑠璃、すまなかった」

「え?」

「詫びて許されることではないと理解している、私はお前をこの時代に呼び戻し神にも背負えない使命を与えてしまった。親として失格だ。だからせめて今より平和で穏やかな時代へ・・・」

「おい、まさかまた瑠璃を!」

「嫌ですっ!私、私は此処に居ます。皆と離れたくない!一さんと離れたくないっ!」


瑠璃は歳三の背中にしがみつき肩を震わせながら泣いていた

そこへ他の兄弟たちも駆け付けた


「親父!?何してるんだ」

「僕たちの運命を弄ばないで!」


左之助と総司も瑠璃を隠すように囲んだ


「分かっておる、私は最低な父親だ。それは変わらない。お前たちを離すことは絶対にしない」


「だったら何をしに来た」

「歳三、分かってくれとは言わない、だが償わせてほしい神としてではなく、親として」

「・・・」

「これも一方的で申し訳なく思うが、私にできることはこれしかないのだ。出来るだけ、影響のない時代と土地で平和に穏やかに暮らしてほしい。許せ!」


「おい!!」


突然、激しい稲光で目が開けられないほどの強い光に包まれる

父親が赤松の幹に手を添えると、中から押し出されるように斎藤の姿が現れた

それと入れ替わるように父親は幹の中に入る

そして


ドドーン 激しい雷鳴が轟き 皆、意識を飛ばした


-------------------------。


「瑠璃、聞こえているか」

「え?」

「本当にすまないことをしたと思っている。お前が愛した者たちを可能な限り一緒に送る。私はお前たちの幸せをずっと、ずっと祈っている」

「どうしてそんな事を言うの?ねえ・・・教えて、くだっ・・・」


身体が突然浮いた。

ぐんぐんと押し上げられるように何処かへ飛ばされいるようだった

死ぬの?いや、この感覚はどこかで・・・

そう思った瞬間、目の前が暗くなり瑠璃も意識を失った


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