第百零七話 目覚めよ、光と風の聖なる龍
空気の渦が舞い上がる 竜巻だ
その竜巻の中央でインキュバスとサキュバがひとつになろうとしている
土方「どういうことだっ、二つの身体が一つになっていくぞ!」
原田「くそっ」
原田が槍を投げるが、その渦の中に入ることなく弾かれる
沖田「これって不味い展開じゃない」
斎藤「魔力が倍になるとでも言うのか」
山崎「まさかっ」
目の前で起きていることに何も出来ない
ただ融合して行く成りを見ているだけだ
瑠璃「うっ、強い!」
徐々に体が合わさっていく、そのたびに彼らの能力がぐんぐんと上がる
融合が完了した悪魔の身体は一回り大きくなっていた
身体は一つなのに対し、頭は二つある 恐ろしい姿だ
そして、竜巻は静かに消えた
ゆっくりと舞い降りたのはインキュバスとサキュバの融合体
「見たか!我らの真の姿を」
叫び声が地鳴りのように響いた 内臓が揺れている
背中を冷たい汗が流れた
どう戦えばいいのか 誰もが思考を巡らせているだろう
刀を握る手にも汗が滲む
不安を払拭するかの様に何度も握り直す
「どうだ!手も足も出らんだろう!」
剣をひと振るいしただけで、痛烈な風が襲う
「うわあっ」
「うっ、ぐふっ」
いとも簡単に壁に叩きつけられる
これの繰り返しでは身体がもたない
剣を振る度に三日月型のような疾風が土方たちを襲い
刀で斬られたように体中から血が吹き出した
決して深くはない、まるで獲物を半殺しで逃がし
その様を楽しんでいるように思えた
瑠璃が何度も黄金色の光で治癒を繰り返す
原田「くそっ!」
土方「左之助、短気になるなよ。考えろ俺たちは何者だ」
原田「あ?」
沖田「人間と神の間の子だよ」
斎藤「守護神が付いている」
山崎「四神獣・・・」
(四神獣は方位を間違えたら能力が発揮出来ないからね)
瑠璃「はっ!方位!!」
土方「そうだ!俺たちの然るべき場所で体制を立て直せ!」
北に原田、西に沖田、東に土方、南に斎藤
そして、中央に瑠璃、側には山崎が
これで結界を破ったのだ 再び体制を整える
「何をしても無駄だという事が分からんのか」
土方「煩え!いいか、勝つのは俺達だ!」
原田「当たり前だっ」
土方と原田の言葉を合図に互いに気を高める
原田から4つの脚を地につけ立ちはだかる玄武が
沖田から牙をむき出し激しく威嚇する白虎が
土方から紅蓮の風を巻起こす青龍が
斎藤から大きく翼を広げた朱雀が
そして、瑠璃から眩い光を放つ黄龍が
悪魔の前に舞い降りた
悪魔と神の力がぶつかり合う
僅かに四神獣が悪魔を押している
しかし、融合した悪魔も譲らない
原田を先頭に皆が刀を抜き
インキュバスとサキュバに斬りかかる
「貴様らっ!うぉぉぉー」
悪魔の雄叫びで黒い気が立ち籠める
蝕むようにそれは四神獣の動きを封じようとしていた
原田「なっ!脚が動かねえっ」
沖田「くっ、腕が上がらない!」
土方「くはっ、息がっ持たねえ」
山崎「こ、これは・・・」
前方にいた四人の動きが止まる
(瑠璃と斎藤は光と風、この二つが交わればとてつもない力となる)
斎藤「瑠璃!怯むなっ、前だけを見ろ。光を放てっ!」
瑠璃「っ!はいっ」
瑠璃は気を高め、黄金色の光を悪魔に向けて放つ
その光を押すよつに斎藤が朱雀の翅を羽ばたかせ
風を起こす
闇を光で押し返そうとはしている
「なにっ!お前たちは、まさか!」
尚も黒い気が押し返してくる
瑠璃「うぅっ」
斎藤「瑠璃、俺は此処に居る」
瑠璃「はい」
斎藤が瑠璃の背に右手を当て気を送ると
風が起こり朱雀が黄龍の背に付く
まるで龍に翅が生えたように見える
異国に伝わる翼を持った聖なる龍だ
闇は押し戻され、原田たちの呪縛が解けた
土方「機は一度しかねえ!行くぞ!」
沖田「行くよ!」
原田「おらぁ!」
「絶対に許さん!道連れにしてでも逃しはせぬぞぉぉ!」
そうサキュバが叫ぶと
インキュバスが何かを瑠璃めがけて投げた!
土方と沖田の間を見えない速度で通り過ぎる
土方「なにっ!」
沖田「!?、瑠璃っ!」
瑠璃「えっ!」
速い!避けられないっ!
ドンッ! グググッ、ズザッ!
「ぐはぁっ」




