表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Time Trip to Another World 〜暁〜  作者: 蒼穹の使者
第三章 結〜蝦夷編〜
102/113

第百零二話 五稜郭、突入の刻

想像していた通り、新政府軍の進軍は早かった

いよいよ二股口も落ちるという時

ようやく五稜郭の動きが慌ただしくなった


乾 「五稜郭内の旧幕府軍は出陣準備をしています」

神田「明朝には出撃するだろう」

土方「分かった。明朝、此処を立つ。合図まで動くな」

神田「我々は原田と共に北門から援護しながら入る、乾には上から瑠璃殿の動きを確認させる」

土方「頼んだ」


神田たちは再び五稜郭の監視に戻って行った


土方「日が上る前に出る。今日は早く寝ろ、しばらく寝られなくなるぞ」


そう言うと土方は一人出ていった

五稜郭が見える丘に立ち上から眺める

仁王立ちとはこの事をいうのか

新選組鬼の副長と呼ばれた男が悪魔の城を睨む



沖田「一番寝なさそうな人から寝ろって言われてもね」

原田「まあな、目だけでも瞑った方がいいらしいけどな」


二人も広間を出て行った、

原田は無心に槍を振り、沖田は広い夜空を見上げた

勝っても負けても、これが最後の戦いだ



瑠璃「・・・寝れないと思う」

斎藤「風呂でも入ったらどうだ、当分入れんぞ」

瑠璃「そうですね、準備してきます。皆も入ってくださいね」

山崎「手伝う」


瑠璃と山崎は風呂の準備をし

斎藤は刀の手入れを始めた 自分の刀と瑠璃の刀だ

刀を振るうのも最後になるだろう

この刀で悪魔を斬り

この刀が瑠璃の身を守ってくれれば、それでいい 

それだけでいい そう願いを込めて


皆、それぞれ思うことがあるのだろう

無言でその時を過ごした

世に知られることなく この戦いを終わらせたいと



*********************


日付が変わってまだ暗い中、五人は静かに動き出した

いつもよりきつくベルトを締め、刀をゆっくり確かに差す

大きく息を吸いゆっくりと吐き出す


土方「これよりサキュバが潜む五稜郭に侵入する。怯むな、俺達は絶対に負けやしねえ!自信を持て、俺達が最強だと!」

全員「はいっ!」


土方が刀を鞘から僅かに抜くと

皆も差した刀を同じだけ抜く 

そして、刀の刃を一人づつ順に交えた

それは絶対に生きて勝つという誓いの証


闇に紛れ、土方たちは五稜郭に向かった


土方「ここで二手に分かれる。左之助、総司、そっちは任せたぞ」


北と西へ向かう為、此処で彼らと分かれる

乾はカルラに変幻(へんげ)し闇の空に舞い上がった


原田は瑠璃の頭をいつものように撫でる

「瑠璃、頼んたぞ」

沖田は瑠璃と抱擁を交わす

「適当に、力抜きながらやりなよ」

「うん、二人とも頑張ってね」

百合が瑠璃の手を取り

「瑠璃さん、お気をつけて」

「うん、百合ちゃんも」


そして、南の入口付近にて土方と分かれる


土方は片方の手で瑠璃を抱き寄せると

背をポンポンと叩いた

「大丈夫だ、お前なら出来る」

「はい、必ず」


土方の背中が闇に消えて行った


斎藤は瑠璃の手を取り、南門である正門付近に移動した

ここからが中央に直線距離で一番近い

瑠璃と山崎はここから侵入する


斎藤は瑠璃と手を繋いだまま何も言わない

いや、言わなくても分かる

彼の右手からじんじんと伝わってくる 

大丈夫だと言っている


静かに乾の合図を待っていた



東の空が白み始めると、正門から兵士たちが出て行く

それを黙って見送る 握る手に汗が滲むのを感じた



乾 「全部隊、五稜郭を離れました!」

山崎「了解っ!」


山崎が振り向き目で合図を送ると、先に立ち門へ進む


「一さん、行きます!」


振り向くと、行けない気がした

だから背を向けたまま、そう言って立ち上がった


その時、斎藤が後ろから瑠璃を抱き締める


「決して振り向くな、前だけ見ていろ。直ぐに行く」

「はいっ」


涙が出そうだったのを、大きな声で吹き飛ばした

泣くな!まだ、何も始まっていない



瑠璃と山崎は南門を難なく抜け

中央を目指して駆け出した


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ