第百零一話 新政府軍上陸
四月に入ってすぐ、山崎は五稜郭の見取り図を手に入れた
それを元に、方位の確認と踏み込む時期を模索していた
間もなく、新政府軍の船が北海道に入る
上陸は何箇所かに分かれて行われるはずだ
土方「新政府軍は旧幕府軍に奪われた松前城から奪還にかかるだろう。かなりの軍事力を持っている。五稜郭まで来るのも時間の問題だ」
神田「この戦争はそう長引くことはないだろう」
乾 「新政府軍はイギリスやアメリカからの最新兵器を装備しているので早くに決着がつくと思われます」
原田「俺達はいつ動く」
斎藤「新政府軍が五稜郭に入る前に終わらせなければ」
沖田「五稜郭の兵士が援軍で出る時」
瑠璃「それはいつなの?」
土方「二股口が落ち、弁天台に差し掛かる頃」
神田たち三人が新政府軍の動きを監察
他は山崎と五稜郭の内部を分析することとなった
鍵となるのは瑠璃だ
瑠璃は結界など関係なく侵入が可能
それぞれの方位に従うならば瑠璃は中心部に留まる必要がある
しかし、そこは箱館奉行所がある場所だ
まさに中心核でありサキュバが潜んでいる可能性が高い
原田「瑠璃を一人で入れるのは危険すぎる」
沖田「だけど他に方法が」
瑠璃「大丈夫です!やれます」
土方「・・・」
山崎「俺が一緒に入ります」
全員「出来るのか!?」
山崎も入れたのだろうか、そこは確認していなかった
山崎「確信はないのですが、恐らく俺も入れます」
土方「なんで分かるんだ」
斎藤「・・・」
山崎が言うには、自分は神に仕えるものとしての勘だと
神に仕えると言っても、どの神に仕えていてのか
これまでの事を思い起こせば自分は瑠璃に仕えていたのだと
山崎「俺は命に替えても彼女を守ってみせます!これが自分の使命だと信じています」
瑠璃「山崎くん」
山崎の瞳が輝き、隼が羽を広げたように見えた
それに応えるよう反応したのは瑠璃だ
身体から黄金色の光が放たれる
土方「分かった、瑠璃を頼む」
山崎「御意!」
機が訪れたら、瑠璃が山崎と先に侵入する
中心部に辿り着いたら、同時に結界を破る
失敗は決して許されない、失敗は瑠璃と山崎の死を意味する
それはこの世の終わりを意味するのと同じだ
土方「その時は近い、皆心して準備にかかれ」
「はいっ!」
それぞれの能力を最大限に引き出せるよう
結界を破る時は五人の息が乱れないよう
方位布陣を敷き、訓練をした
中央に集まる気は円を描きながら瑠璃の掌に乗る
瑠璃がそれを回しながら気の球を作る
これの繰り返しだ
その球が放たれた時に結界は破れるだろう
斎藤「瑠璃、大丈夫か?」
瑠璃「はい、問題ないです」
斎藤「そうか」
瑠璃「でも・・・本当は、怖いんです。勝てなかったらどうしようって、こんな事考えてはいけないのに。すみません」
斎藤「皆同じだ」
瑠璃「え?」
斎藤「恐怖が無くなることはない。しかし、負けるわけにはいかない。その想いだけが支えになっている」
そう、絶対に負けるわけにはいかない
たとえこの命と引換えても、サキュバを倒さなければならない
こんなにも重い使命はないだろう
避けることも、逃げることも許されない
これが運命というやつなのだろう
山崎「斎藤さん」
斎藤「山崎か、どうした」
山崎「俺も恥ずかしながら恐怖が消せません、しかし信じてください。自分が死ぬ事より瑠璃くんを失う事の方が恐ろしい。必ず無事に辿り着かせます!」
斎藤「お前の能力を疑ったことは一度も無い。瑠璃を頼む」
山崎「はい!」
新政府軍は松前城の奪還に成功
圧倒的な軍事力だと聞いた
もう間もなく二股口も落ちるだろう
五稜郭突入は、もう直ぐそこまで迫っていた




