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第五百四話

ご報告いたします。

本日10月23日よりコミック「治癒魔法の間違った使い方」第17巻が発売されました!

第17巻も獣人の国のお話! こちらもどうぞよろしくお願いいたします!


そしてお待たせしました。

第五百四話です。

 空を飛べる闇魔法を持つキーラ。

 同化の闇魔法を持つフェルム。

 予知魔法持ちのアマコ。

 索敵に長け魔獣と呼ばれるほどの強さを持つブルリン。

 アマコとブルリンに関しては急ぎで集めた面々ではあるが、結構バランスのいいメンツが揃った。

 隠れ里で遭遇する相手が分からない以上、こちらも本気で臨まないといけない……が、最悪の可能性を想定するなら治癒魔法使いの僕がカズキと一緒に前で戦わないといけない場合だ。


「……火力に関しては僕がカバーすればいいけど、ちょっと不安だな」

『ウサトには爆発があるじゃん』

『火力とか何言ってんだ? つーか、火力ならボクがいるだろ』

『私の魔法も変形できますよ!!』

『グルァ』


 そもそも火力というか、腕力が有り余ってたわ。

 とりあえず救命団の正装に着替え、団服をしっかりと着た僕は、またリングルの王城の前に着地する。

 すると城門のある方から、つい先ほど別れたはずの先輩が小走りで駆け寄ってくる。


「あれ、ウサト君。もう戻って来たのかい?」

「ええ。ひとまずアマコと合流できたので戻ってきました。ナギさんは?」

「彼女なら一旦救命団に戻ったよ」


 キーラの闇魔法を解除すると内に入っている荷物も出てしまうので、マントを羽織ったまま先輩と共に王城へと入る。


「君が戻ってくるのを待っていたんだよ」

「ん? なにかあったんですか?」

「まだもう少し積み荷の準備に時間がかかるから、その間に君へエルフ族に関しての事前知識を知らせようって話が出てね」

「あー」

「アルフィが説明してくれるから私はそこまで君を連れていくよ」

「了解です」


 アルフィさんか。書状渡しの旅に出る前とかいろいろと他の国のことを教えてくれた人だな。

 でも確かに……エルフ族に関しては何気に部分的なところしか知らないから、少しでも理解を深めておきたいところではある。

 先輩がやや速足で先導し、すぐに城内の端の方に存在する大きな木製の扉の前に到着する。


「アルフィ、連れてきたよ」

『はい! ありがとうございます!! どうぞ入ってきてください!!』


 扉の奥からの声に頷き、扉を開ける。

 すぐに目に入ったのは天井に届かんばかりに積み上げられた本と足の踏み場もないくらいに散らばった資料の数々。

 最初に来た頃と全く変わらない部屋の中の光景に、僕も思わず苦笑いを浮かべる。


「あ、相変わらずですね……」

『前より酷くなってる気がする……』

『ボクでもここまで散らかさないぞ……』

『うわぁ……』


 アマコは一緒に説明を受けたことがあるけど、フェルムとキーラは普通に引いてしまっている。

 その反応に慣れているのか、亜麻色の三つ編みが特徴的な女性のアルフィさんが明るい笑顔を浮かべ、僕達を迎えてくれる。


「お久しぶりです!! いやぁ大変なことになってしまいましたねウサトさん!! 本当は貴方が同化している皆様にも自己紹介をしたいところですが、今は時間が限られているということで手短にエルフ族に関しての情報をお教えします!! まずエルフ族は人間とは離れた深い森で生活する種族で、あえて魔物が跋扈する領域に居を構えることによって他種族の干渉を退けてきました!!」

『ウサト、こいつやばい』


 顔を会わせるなりものすごい早口で説明をし始めたアルフィさんに、フェルムが唖然としてしまっている。

 うーん、この勢いも変わらないなぁ。

 でも不思議と聞き取れるし、内容もしっかり頭に入ってくる。


「早口すぎましたか!?」

「あ、大丈夫です。そのまま続けてください」

「はい!」


 続きを促すと、アルフィさんは手元の水を飲んでからまた大きく息継ぎをする。


「エルフ族は人生のほとんどを深い森の中で終える閉鎖的な文化から彼らの生活様式などは謎に包まれていました!! しかし、最近になってエルフ族の族長のご息女であるフラナさんとの交流もあって今まで謎に包まれていたエルフ族の生活の一端も明かされ、彼らが魔物と共存することで、魔物に襲われることなく安全に生活できていることが分かりました!! 関係性でいえばウサトさんとブルリンさんがとても近いと思われます!!」

「魔物と共存ですか……」

『グルアァ』


 魔物が跋扈する危険な森の奥深くに住める理由は、その危険な魔物と共存しているからか。

 僕とブルリンみたいな関係というと……手懐けるというより、純粋に友好関係を築いているという感じなんだろうな。


「最初にご説明しましたが、エルフ族は非常に排他的な面も持っております。先の騒動を解決したカズキ様は受け入れられているかと思われますが、ウサト様に対してどのような対応をするかは正直予想できません。カズキ様と親しいご友人ということで敵視はされないはずですが、確約はできません」

「フッ、怪物扱いされなきゃどうとでもなりますよ」

『無理そう』

『無理そうだな……』


 アマコとフェルムが即座に否定してきやがった。

 僕だって初コンタクトでえげつないムーブするつもりはないからな? やるとしてもそれは戦っている時か嘗められた時だから。


「あとはエルフ族には守り神と呼ばれる存在がいるということでしたが、その存在については秘匿されるべき重大な事項ということだったので、フラナさんからも明かされることはありませんでした」

「前にフラナから少し聞いたけれど……未確認生物好きとしてはものすごく気になるね」


 先輩って未確認生物好きなんだ……全然意外でもないな。

 しかし、以前フラナさんが言っていたシシェコンラッド……ってやつかな? 僕も気になるけど、それよりも重要なことがある。


「エルフの方を相手にやっちゃいけないこととかありますか?」

「私が知る限りは特別なものはありませんね。強いて言うなら彼ら自身と自然に害を及ぼすことでしょうか? まあ、その点についてはウサト様は問題ないでしょう」


 それでも気を付けておかなきゃな。

 僕たちの常識がエルフ族にとっての常識なわけがない。

 そう内心で決めていると、僕達のいる部屋の扉が叩かれ「失礼します!!」という声と共に、息を切らしたウェルシーさんが入ってくる。


「ウサト様、積み荷の用意ができました! いつもの訓練場に集めさせているということなので、ご同行をお願いします!!」

「分かりました! ではアルフィさん、ありがとうございました!

「はい! ウサトさんもお気をつけて!!」


 短い時間だけれど、前知識としては十分すぎるくらいだ。

 アルフィさんにお礼を言って、僕と先輩はウェルシーさんについていっていつも集まる訓練場へと足を運んでいく。

 訓練場にはたくさんの騎士の人たちが箱に詰めた物資を並べており、積み上げられた分だけでもかなりの量の物資が集められていた。


「ウサト様をお連れしました!!」

「「「おおっ!!」」」


 ウェルシーさんの声に騎士の皆さんの声が返ってくる。

 そして積み荷を運んでいる騎士の他に、移動向けの軽装の鎧とマントと剣を身に着けたカズキもいる。

 白色を基調とした見た目ではあるけど戦争の時に着ていたマントはなくなって、首元にはゴーグルのようなものがあるな。

 うーん、かっこいい……先輩の黒色の団服とは違う方向性の軍服っぽさがある。


「ウサト、来てくれたか!」

「うん。そっちは新しい装備?」

「ああ。空を飛んでいくからな」


 空を飛ぶからにはゴーグルがあると便利そうだ。


「かっこいいね、そのゴーグル」

「うんうん。まるで一昔前の飛行機乗りのようなレトロさと、ロマンを感じさせるナイスデザインだね!!」

「はは、ありがとうございます」


 先輩、ゴーグルの褒め方のクセが強いっす……。

 しかし、僕も空を飛ぶからゴーグルとか用意した方がよかったか?

 そんなことを内心で考えていると、唐突に頭周りを何かが覆う感覚がすると同時に僕の視界が真っ暗になる。


「え、なにこれ。真っ暗なんだけど」

『飛ぶときにこれがあると便利なんだろ?』


 どうやらフェルムが闇魔法で作ってくれたみたいだ。

 即興でほぼ同じものを作れるのは凄いけれど……。


「いやこれ、僕なにも見えないんだけれど」

「レンズ部分も真っ黒だからむしろアイマスクだよね、これ……」


 作ってくれたのはありがたいけど、これじゃあ使えな―――、


『お前は目とは別の感覚器官が発達してるから別に問題ないだろ?』

「君はいったい僕をなんだと思っているんだ?」


 別の感覚って魔力感知のことか。

 否定しないし、別に見えなくても問題はないけれどもっと言い方があるだろうが。

 僕だって自分の目で見て動く方が好きなんだぞ。


「……とりあえずゴーグルはいいよ」

『仕方ないから、改良しておく』

「ありがとう、フェルム」


 ゴーグルは後の楽しみにしておこう。

 とりあえず、今はこの大量にある積み荷だな。

 ここを出発する前に、この荷物をキーラの闇魔法のマントに詰め込むだけだ。


「ウェルシーさん、この積み荷を全部、詰め込んでいきます」

「ウサト様、騎士の皆さんに積み荷を……」

「大丈夫です。こっちで放り込んじゃいますから」

「え……」


 口で言うより、やった方が分かりやすいか。

 キーラの闇魔法のマントを広げると同時に、同化状態のフェルムの闇魔法を操り、四本の腕の形状へと変化させ積み荷へと伸ばす。

 鷲掴みにするように積み荷を掴み、ぽいぽいぽい、と放り込む。


「やっぱり君の魔法は凄いな、キーラ」

『ふふ、ありがとうございます』


 空を飛ぶのも凄いけど、この物を収納できる力が本当に規格外だと思う。

 ものの一分とかからずにその場にあったほぼ全ての物資を闇魔法のマントに積み終えた僕は、ウェルシーさんへと振り返る。


「よし、準備完了です」

「はい! 準備完了ですね!! ええ!!」

「ウェルシー、だんだん投げやりになってきてない……?」


 若干頬を引きつらせたウェルシーさんに先輩も苦笑い。

 因みに周りの騎士の皆さんは……。


『まあ、ウサト殿だしな』

『相変わらずだなぁ、ウサト殿は』

『いつも通り、奇抜なお方だ』


 引いてはいるものの普通に受け入れてくれている。

 僕としてはありがたい限りである、うん。


「カズキ、その剣もこっちで預けれるよ」

「お、いいのか? じゃあ、頼む」


 カズキが背に備えている剣を受け取り、マントの中に納める。


「積み荷はこれで全部、こっちは準備オッケーだよ。カズキ」

「じゃあ、今度は俺の番だな」


 カズキが右手を前に構え魔法を発動する。

 生成された光の魔力弾は、継ぎ足されるように大きさを増やしていき、一定の大きさになったところからその方を変えていく。

 最初は円盤、それから楕円、端を鋭角的に、最終的にサーフィンのボードのような形になったソレは地面から浮き上がりながら停滞している。


「こいつに乗るのはちょっと久しぶりだけど……よっと」


 カズキが光魔法のボードに乗る。

 見た目以上に安定しているようで、ほとんど揺れずにカズキの思いのままに動くみたいだ。

 仲間は集めた。

 物資も全部積み終えた。

 今一度、確認してから僕はカズキと共にウェルシーさんと先輩の方を見る。


「では先輩、ウェルシーさん。そろそろ出発します」

「ああ、私も向かうことができないのは心苦しくは……クッ、エルフの隠れ里……エルフ耳……」

「言葉に出してから心苦しくならないでください」


 だんだんと苦しそうな顔をする先輩に呆れる。

 でも、こういう時あえて気が抜けることを言ってくれるんだよな。

 多分、この人も分かってやっている。


「心配するなウサト君!! 後の楽しみにする!! いずれは獣人の国、エルフの隠れ里をコンプリートしに向かう女だからな私は」

『下手な侵略者より厄介そう』

『誰よりも煩悩にまみれているだろ、こいつ』


 握りこぶしを作って宣言する先輩にアマコもフェルムも引いている。

 なんだかんだいつか先輩も獣人の国に連れて行ってあげたいなとは思っているけれど……今はまだ無理そうだな。


「カズキ様、ウサト様。お気をつけてください。相手は以前カズキ様が対処なされた存在とお聞きしましたが、それがどのような存在なのかは依然として不明瞭なまま……決して無茶をなさらないよう、お願いします」

「ああ、分かってるさ。だろ? ウサト?」


 ウェルシーさんに笑顔で頷いたカズキの言葉に僕もサムズアップして頷く。


「ええ、無茶なんてしないので安心してください!」

「……アマコさん、フェルムさん、キーラさん、頼みます」

『うん。ちゃんと見ておく』

『ああ、任せておけ』

『はい!!』


 なんで僕じゃなくて同化しているアマコ達に???

 そこまで信用ないんですか僕。

 思わず肩を落としつつ、マントを広げ軽く浮き上がる。

 カズキもボードに乗ったままゆっくりと高度を上げていく。


「なんだか変な気分だ」

「ん? どうして?」

「ウサトと並んで空を飛ぶのだよ」

「はは、確かに」


 確かに変な気分だ。

 だけど、同時に先輩と一緒に行動している時のような頼もしさも感じる。

 そのまま僕は眼下にいる先輩を見下ろし、声を投げかける。


「それじゃ、いってきます!」

「ああ、いってらっしゃい! ウサト君! カズキ君!」


 先輩の言葉と同時に僕とカズキは空へと飛び出す。

 カズキは魔力操作による加速、僕はキーラの闇魔法による加速。

 どちらも毛色は違うけれど、ほぼ同じ速度でリングルの街の上を進んでいく。


「……ウサト!」


 リングル王国の外門を通り過ぎたあたりで、少し減速したカズキが話しかけてくる。


「このまま空を飛んで隠れ里に向かっても到着する頃には夜になっちまう! できるだけ急いでいきたいが、ウサトは大丈夫か!?」

「僕のことなら心配ない! それに速く到着したいならいい方法がある!!」


 僕は自身の団服の裾部分からフェルムの闇魔法のラインを作り出し、それをカズキへと伸ばす。


「カズキ、それに掴まってくれ。ある程度の距離まで加速して行く!!」

「大丈夫なのか!?」

「とりあえずやってみる!!」

『こいつ、さっきウェルシーに無茶しないって約束したばかりなのに早速やってるぞ』


 フェルムのツッコミをスルーする。

 カズキは迷いながらも闇魔法のラインを掴む。

 同時に彼の腕を伝って、腕だけに負担をかけないように上半身を固定する。

 あとは闇魔法を伝って常時治癒魔法を流していけばカズキに大きな負担はないはず!! そして―――、


「フェルム、飛行形態!!」

『どの姿のこと言ってんだ!? 前の奴か!? 前のやつでいいんだよな!?』


 フェルムの闇魔法がカームへリオの騒動で見せた時のような空気抵抗の少ない鋭角なフォルムへと姿を変える。

 それに加えて、背後のカズキに衝撃波が向かないよう僕の両手にも闇魔法が円筒のように包み込む。


『なら私もお手伝いします!』


 キーラの闇魔法のマントもフェルムの闇魔法の形に合わせるように形状を変化させる。


「な、なんだかすごいことになってるぞウサト!?」

「フッ、いけるぞカズキ!! 君は道案内を頼む!!」


 飛行形態への変形を終え、両手を後ろへ向けた僕は魔力の暴発による衝撃波を後方へと放ち、推進力へと変える。

 破裂音が響いた瞬間、さっきまでとは明らかに速い勢いで空を突き進んでいく。


「よし、魔力を過剰に消費しないペースで魔力を暴発して加速していけば、時間短縮になるはずだ! カズキ、後ろは大丈夫か!?」

「ああ! なんだか戦闘機みたいで素直にドン引きしてる!!」

「フッ、実はミサイルも撃てるぜ!」

「頼もしいけど、最終的にどこを目指してるんだよ、お前」


 風の音がうるさくて聞き取れなかったけど、また引いているのは分かった。


『もう行くとこまでいったって感じがする……けど、ウサトの場合まだ変な方向に行けそうで怖い』

『こいつ以上に闇魔法を使いこなしている闇魔法使い使いはいねーな』

『あの、さっき聞き逃しましたけどカームへリオでの飛行形態ってなんですか?』

『グアァー』


 そして同化してる面々が好き放題言っているし、ブルリンに至ってはもう眠ろうとしている。

 ———エルフの隠れ里を襲う暴食の獣に似た謎の存在。

 怪物と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、悪意と殺意を振りまくような邪悪な存在———邪龍の姿。


「あんな奴とはできれば二度と相対してくないけれど……いざという時はやるしかない」


 隠れ里の状況は分からないが、最悪僕とカズキが前に出て戦わなければならないってことは想定しておかないといけないな。

さらに洗練されてしまったウサト飛行形態でした。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
書籍では邪龍と決着をつけていましたが、こっちでもそうなるのかしら……。
なんだろう……脳裏に浮かぶのは高機動型ブラックサレナなんだけど????
悪いことしてると空から黒いオーガが飛んでくるよ! なんて、子供の躾に使われそうね……
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