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第四百七十二話

『治癒魔法の間違った使い方~誘いの街・レストバレ~』の第2巻が今月10月18日より発売いたします!

本編では描かれなかったウサト達の活躍をお楽しみに!!


そして、お待たせしました。

第四百七十二話です。

 ロイド様への報告は、ファルガ様が先に伝えてくれた内容を補足するような形で行うことになった。

 エンヴァーと戦うまでの顛末、お祭りにどのような形で参加したのか、他の勇者とどのような交流をしていたのか、などを口頭で可能な限り話したわけだが、部分部分でなぜかロイド様や広間にいる周りの人達に首を傾げられてしまったので、改めて報告書にまとめておこうと思った。


「ウサト君、カズキ君に会いに行く前にウェルシーに、アウーラのことを話しておいた方がいいんじゃないのかな?」

「あ、確かにそうですね」


 諸々の報告を終え広間の退出を許された僕達は、同じタイミングで広間を出ていたウェルシーさんに声をかける。


「ウェルシーさん」

「っ、すぅー、ふぅぅぅ……」


 なぜか声をかけただけで、深呼吸をされてしまった。


「失礼しました。……新しい技術ですか? ウサト様」

「ああ、それは後にお話ししようと思っていますが、今は別件でお話したいことがありまして」


 ウェルシーさんが「あと……ということはあるんですね……ハイ」と小さく呟き、陰のある笑みを浮かべる。

 その様子にちょっと引きながら、カームへリオで会った勇者、アウーラさんについて話すことにした


「フレミア王国でアウーラさんという勇者にお会いしたのですが、ウェルシーさんは彼女についてご存じですか?」

「アウーラ? ええ、ルクヴィスに在学時に後輩だった子です。……なぜあの子が勇者に?」


 アウーラさんの言った通り知り合いだったみたいだ。

 軽くアウーラさんが勇者になった経緯について話しておく。


「なるほど。フレミア王国はそのような形であの子を勇者に。同じ研究者として歯がゆいものですね。今度、私から文でも送りましょうか……」

「えーっと、まだ続きがあるんです」

「? アウーラとなにかあったんですか?」


 首を傾げるウェルシーさん。

 僕としてもちょっとどう言うのが正しいのか分からないが、とりあえずこのことは先に伝えておこう。


「アウーラさん、カームへリオからフレミア王国に帰還次第、リングル王国に移り住むそうです」

「ん? んんんん?」


 ぴしり、とウェルシーさんが固まる。

 すぐに我に返る彼女だが、頭に手を置き混乱しはじめる。


「え? ど、どういうことですか? 立場に納得していないとはいえ他国の勇者がなぜこちらに……? い、意味が分かりません? ウサトさん、あの子になにかしたのですか?」

「僕がなにかをしでかした前提で疑うのはやめてください……。いえ、僕のせいではありますけど」


 まるで僕が勇者を引き抜いたやばい奴みたいに思われてしまうのは納得いかない。

 全然引き抜くとかそういうつもりなんてなかったし、なんならアウーラさん達が僕の知らない間に覚悟を決めていたとしか……。

 すると見かねた先輩が、困惑するウェルシーさんに話しかける。


「ウサト君の魔力回しとかその他もろもろの技術を見てね。弾けちゃったんだ」

「……なるほど。……それは、まあ、仕方ないですね……ハイ」


 神妙な顔で納得されてしまった。


「ウサト様は全く隠しませんからね。目の前で突然、未知の技術を見せられるとか刺激が強いどころではありません」


 これ言外に劇物扱いされてない? 僕。

 なんともいえない顔になってしまっていると、ウェルシーさんが考えこむそぶりを見せる。


「彼女のことですから、国ともきっちり縁を切った後に来るでしょうから、王国間での問題が起きる可能性は低いでしょうね……いえ、万が一に備えて私からロイド様にご報告を。……しかし、フフフ、ウサト様の技術の開発速度を考えると人手と頭脳はいくらあっても足りないので、優秀な研究者が巻き込……増えるのは大歓迎ですね、フフフ」

「わ、わぁ、ウェルシーが怪しく眼鏡を光らせてる……」


 影のある表情のまま眼鏡を白く光らせたウェルシーさんに、僕も先輩もちょっと引く。

 これで魔力妨害のこととか今話したら、ウェルシーさん達が大変なことになりそうなので、これは別の機会にしておこう。


「フフフ、アウーラに関してはこちらでロイド様への報告と、受け入れの準備を進めておきます」

「よ、よろしくお願いします」


 蜘蛛の巣に迷い込む蝶、もしくは蟻地獄に引きずり込まれる蟻。

 曇りのない瞳のまま晴れ晴れとした笑顔のウェルシーさんに、そんなことを連想しながら僕はそれ以上なにも言わずに頷くしかなかった。


「一応、できるだけショックを和らげるためにあらかじめお聞きしておきます。……新技術とはどのようなものですか?」

「……えぇと、暴発する系統強化の肩代わりと、自分以外の魔力回しを加速させて補助するのと、戦っている相手の魔法の発動を妨害するやつとかですね」


 そして、そんな彼女の笑顔はすぐに石のように固まってしまうのだった。

 ……いや、僕のせいだけれども。



 ウェルシーさんと別れた後は、早速カズキに会いに向かう。

 僕達が城に来ていると知らされて彼はセリア様と共に城内にある庭園で待ってくれていた。

 早速、僕、先輩、カズキ、セリア様の4人でテーブルを囲んで座って、近況を話し合うことになった。


「フラナさん、里帰りしてるんだ」

「ああ。ちょっと彼女の故郷から呼ばれたらしくてな。特に心配はないらしいけど」


 僕達が祭りに行っている間に、フラナさんはエルフの隠れ里に一時的に帰ってしまったようだ。

 彼女はエルフ族の長の娘らしいので、呼び出されてもおかしくはないのだけど……ちょっと胸騒———、


「ハッ!?」

「ウサト君、突然どうしたんだい?」

「いえ、僕が何か胸騒ぎを抱くと、なにかしら起こりそうなので」

「それもう遅くない?」


 まだ言葉に出していないのでセーフ。

 焦る僕にカズキが苦笑しながら手を横に振る。


「さっきも言ったけれど、フラナのことは特に心配はいらないぞ。他ならない彼女もそう言ったからな」

「ええ、カズキ様のおっしゃる通りです。それに、フラナ様が出発の際にも里帰りしてくる、といった感じで軽い面持ちでしたから」


 カズキとセリア様が言うなら特に心配する必要はないな。

 でもエルフの隠れ里かぁー、ヒノモトとは違うだろうし、どのような暮らしをしているか非常に気になるところではある。

 確か、木の上に家を作るということは聞いたことがある。


「二人は大変だったろ? カームへリオですっごい騒ぎが起こったって聞いてびっくりしたぞ」

「そっちにはどのように伝わっていたんだい?」


 さすがに悪魔が騒ぎを起こした、みたいな風には伝わっていないはずだけど、そこは気になる。

 先輩の質問にセリア様が答えてくれる。


「私どもに伝わった表向きのお話しでは、カームへリオに未曽有の大嵐が起こったというものでした。それで、お二人を含めた各国の勇者たちの迅速な行動により被害を最小限に抑えた……とか」

「……で、それが一般の話で城の一部の人は、カームへリオの騒ぎは悪魔によるものだってことは知ってる感じ」

「なるほど」


 目撃者はいるだろうけど、エンヴァーに取りつかれたランザスさんのことは話題にはなっていないか。


「よかった。ランザスさんのことが悪く広まってなくて」

「君が速攻で都市の外に吹っ飛ばしたのがよかったね。それに加えて、エンヴァーが空を飛んで一般人の視界に映らない上空にいたこともいい方向に働いたようだ」


 本当によかった、と先輩の言葉に頷く。

 すると、僕達の会話を聞いていたセリア様が訝しむように口元に手を当てる。


「気のせいでしょうか? 今、ウサト様が空を飛んでいる悪魔を都市外に吹っ飛ばしたようにも聞こえるのですが……?」

「おいおい、ウサト。とうとう自力で飛べるようになったのか? まさか俺のお株まで奪われちまったか?」

「いやいや、飛んでいるんじゃなくてぶっ飛んだだけ。前に話したルーネ……魔族とエルフのハーフの闇魔法の力を借りたんだ」

「へぇー、さすがだなぁ」

「カズキ様!? 普通に受け入れすぎでは……!?」


 さすがにカズキみたいに光魔法で自由自在に空を飛ぶなんて芸当は、キーラと同化しなきゃできない。

 そして、彼の魔力操作によりもたらされる飛行技術は、僕の暴発に任せた加速とは全く異なるものだ。


「でも、お祭りで会った勇者達もみんな一癖も二癖もあったけれど、みんないい人たちだったよ」

「そうだねぇ。振り返ってみると、個性豊かすぎる面々だったね」

「へぇー、詳しく聞いていいか?」

「もちろん」


 カズキにお祭りで出会った勇者たちについてと、あっちで訓練したこととかを話す。

 簡単にまとめて話し終えると、カズキは嬉しそうに微笑んで口を開いた。


「なんというかさ、ウサトと先輩はどこに行っても変わらないな」

「んー、褒めてる……?」

「もちろん褒めているぞ。ウサトは変わらず困ったやつを見過ごせない頼もしいやつだってことだ」


 そこまで考えて行動しているわけじゃないけど、そう言われて照れてしまう。


「先輩は……まあ、いい意味でスタンスが変わらないってのは頼もしいですし」

「カ、カズキ君? それは言外に私が空気が読めないと言いたいのかな?」

「……いえ?」

「カズキ君!?」


 慌てふためく先輩を見て僕もカズキもセリア様も笑う。

 僕達のお祭りの話もしたし、今度はカズキにも聞いてみようかな。


「カズキとセリア様は僕達が留守にしている間どうしてた?」

「ん? 特に変わったことは起こってないかなぁ。魔力回しの練習を合間にやりながら勉強してた。あと時折、身体が鈍らないように鍛錬もしてたな」


 僕達も大変だったけれど、カズキも勉強とかで別の意味で大変そうだ。

 僕達とは違うのは、お祭りと違って現在進行形で終わってないことだし。

 次にカズキの隣にいるセリア様が口を開く。


「私はカズキ様が無理をなさらないようにお目付け役をしておりました」

「……そこまでしなくてもいいんだけどなぁ」

「いいえ」


 ぼやくように呟くカズキにセリア様が笑みを浮かべ首を横に振る。

 心なしか、ちょっとだけ圧を感じる。


「カズキ様はご自身が大丈夫だと思っていても、ご無理をなさることが多いので。お勉強は確かに大事ですが、それだけをすればいいというわけではありませんから」

「心配しすぎだよ。お前もそう思うよな? ウサト?」


 カズキが少しだけ助けを求めるように僕に同意を求めてくる……けど、うーん。


「……カズキは結構ギリギリまで思いつめるところがあるからなぁ」

「ウサト?!」

「確かに、ウサト君とカズキ君は悩みを溜めこむタイプだからねぇ」

「……あれ先輩? なんで急に僕に矛先が……?」


 ぼ、僕はともかくとして、魔王軍との戦いの前の時も、元の世界に帰る決断を迫られた時も、カズキは精神的にギリギリにまで追い詰められた時にようやく自分の弱さを見せる人なので、セリア様の心配もすごく分かる。

 でも、そのことをセリア様も……多分、フラナさんも理解しているので、そこのところは大丈夫だろう。



 カズキとセリア様と小一時間ほど会話をし、一旦その場をお開きにした後。

 僕と先輩は城に行く前に約束した通りにアマコを迎えに行って、とりあえずゆっくり話をするべく救命団宿舎へと続く帰路を歩いていた。


「へぇ、ナックの妹が来てるんだ」

「うん。そうなんだ」

「かわいい子だったよ」


 先輩の若干怪しい感想をスルーしてアマコは、ナックの妹がリングル王国に来ていることに驚いていた。


「それなら、キリハとかも気にしそう」

「キリハ……ルクヴィスの学生たちはまだリングル王国にいるの?」

「うん。でもあと少しでルクヴィスに戻っちゃうみたい」


 結構長く滞在していたみたいだけれど、キリハとハルファさんもルクヴィスに戻っちゃうのか。

 でも、僕と先輩がお祭りに行っている間に帰ってしまうよりかはずっといいな。


「あっ、そういえばウサトとスズネはもう聞いた?」

「ん? なにを?」

「私はなにも聞いていないが……」


 なにかあったのだろうか?

 でもそれほど深刻そうなものじゃなさそうだなぁ、とアマコの顔を見てそう思っていると、口元に指を当て少し悩むそぶりを見せる。


「実は……あっ」

「あ?」


 あ、ってなんだ? と思いアマコを見ると、彼女は前方を見ていることに気づく。

 僕と先輩も彼女の視線を追うと、そこには大きめの鞄を持ったウルルさんの姿があった。

 同じ救命団員であり、いつもは街の診療所にいる彼女がどうしてここに……?


「ウルルがいるなら、私から話さなくても大丈夫そう。ウサト、スズネ、行こう」

「あ、ああ」


 アマコに頷き、道の先にいるウルルさんへと近づく。


「ウルルさーん」

「え? あ、ウサト君、スズネ! 帰ってきたんだね!!」


 近場に行くにはあまりにも不釣り合いな大きさの鞄を両手で持った彼女は、変わらない明るい笑顔を見せてくれる。


「ウルル。どうしたんだい? その大荷物」

「救命団宿舎に持っていこうと思ってね」

「宿舎に? 重いでしょうし、僕が持ちますよ」


 普通にスーツケースくらいに大きく、小柄なウルルさんには運ぶのは大変そうだ。

 鞄を受け取り片手で軽く持つ僕にウルルさんが申し訳なさそうにする。


「ごめんねー。持ってもらっちゃって」

「いえ、これくらいなら任せてください。でもこういう時は遠慮なく強面どもをこきつかってもいいんですよ?」

「訓練を邪魔するのは悪いと思ってねー」


 あいつら顔は怖いけど、根は善良そのものだからそんな小さなこと気にしないと思いますけど。


「でもこんな大荷物どうしたんだい?」

「えへへ、近いうちに宿舎の方に移り住もうと思ってね」


 ……ん? 泊まりではなく移り住む?


「え、宿舎に住むんですか? 泊まりではなく?」


 僕の言葉にウルルさんはきょとんとする。


「……あれ? アマコちゃん、もしかして二人にはまだ話してない?」

「うん。話そうと思った時にちょうどウルルがいたから」


 アマコが話そうとした内容はウルルさんに関係することなのか?

 それに、ウルルさんが宿舎に移り住むことと関係あるのか?


「ま、まさか、診療所がなくなったり……とか!?」

「へ? あ、いやいや違うよ。診療所はなくなったりしてないし、これからもずっと続けていくから」


 そ、それならよかった……。

 でもそれじゃあますます、どういうことか分からなくなってきたぞ。


「でもそれじゃ、どうしてウルルが救命団宿舎に?」

「それはねー。近いうちに、お兄ちゃんが結婚するからなんだよねー」


 へー、オルガさんが結婚するんだ。

 ……。

 ……ん?


「「え?」」


 お、おおお、オルガさんが結婚!?

 僕と先輩が揃って呆けた声を漏らした後に、遅れてやってきた衝撃の事実に驚愕する。

 思っていた以上にとんでもないことが僕達がいない間に起こっているんですけど!?

リングル王国にやってきたらとんでもないことになりそうなアウーラさんでした。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
おぉ、結婚おめでとうございます。 相手が気になりますね。 ローズかウェルシーかロイドかアマコを保護したおばさんか……。 明かされるのが楽しみです。
[良い点] 一言で要点をまとめる先輩さすがやな。 色々捲かれた種が育って花をつけだした感がいいですね。
[一言] 「地位に縛り付けてさらに集傑祭に送り込めばまさか研究に没頭する事はない」…そう思っての勇者認定だった。 だが奴は…弾けた。
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