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第四百四十八話


明日2月17日にコミック「治癒魔法の間違った使い方~誘いの街・レストバレー~」がFWコミックスオルタ様より発売されます!

サマリアールとミアラークへの旅路の間にウサト達に起きた出来事を描いた外伝となります!!

外伝にしか登場しない新キャラクターもおりますので、どうかお楽しみに!!


そして、お待たせいたしました!

第四百四十八話です!!

 ランザスさんに治癒魔法をかけた後、先輩のいるテントまで移動するとちょうどネアとフェルムと合流することができた。

 そのままネアから僕にフェルムを同化させた後、僕達の元にナイアさんがやってきた。


「お疲れのところ、申し訳ありません」

「ううん、全然平気だよ。ここに来たのはもしかして……」


 先輩の言葉にナイアさんが頷く。


「はい。お父さまがお話がしたい、と」


 ラムダ王との謁見……というには大袈裟かな?

 事前に話していた通りに、ラムダ王は僕と先輩と話してみたいらしい。

 僕としては畏れ多い気持ちはあるけれど、ラムダ王に悪魔の影響があるか確認するために治癒魔法をかける手はずだし、気合をいれなきゃな。


「分かった。ウサト君もいいよね?」

「はい。行きましょう。……ネア、君は待っていてもらってもいいかな?」


 ナイアさんに一瞬視線を向けながらそうネアに言うと、意図が伝わったようで頷いてくれる。


「りょーかい。それじゃあ私はここで待っているわ。まあ、遅くなったら勝手に部屋に戻ってるから」

「ああ、先輩、ナイアさん、行きましょう」


 手を軽く振るネアに背を向け、テントを出る。

 そこから歩き出そうとしたところで、僕は何かを思い出すようなそぶりをしながら後ろへ振り返る。


「あ、すみません。忘れ物があったのでちょっと取りにいってきます」

「え、はい? どうぞ?」


 断りを入れてからテントへ戻り、腕を組んで待っていたネアに手を差し出し彼女とも同化する。


『回りくどいわねぇ』

『仕方ないだろ。ボクのことは秘密なんだから』


 ナイアさんにはフェルムのことを秘密にしていることもあるが、ラムダ王との話の場にはネアがいてくれた方が絶対にいいからね。

 ネアと同化したところでもう一度テントを出て、待ってくれていた先輩とナイアさんへと駆けよる。


「すみません、お待たせしまして」

「構いません。こちらこそお疲れのところを無理を言って来てもらっているんですから」


 そのまま僕達はナイアさんの先導の下会場を離れ、ラムダ王が待っているという建物まで向かう。

 歩いている最中、ナイアさんが肩に羽織っていたローブのフードを頭にかける。


「一応、顔を隠してください。人の目がありますから」

「ふふん、こういう時は救命団の団服が役に立つね」

「この団服のせいで僕って認識されますけどね……」


 とはいうものの第一と今回の試練で僕と先輩の顔はこの国中に知られてしまっているので、言われた通りに僕に団服のフードを被る。


「ウサトさんの場合は団服を模した服がお土産として作られているので、もしかしたらそれと間違えられているかもしれませんね」

「僕の団服までお土産に……」

「うん? ウサト君、あれがそうじゃないかな?」


 先輩が指さす方を見ると、離れた通りで移動している人ごみの中に、ひときわ目立つ白い装いの人が見える。

 しかし、あれは団服というより……。


「マント……?」


 肩にかけるタイプの真っ白なマント。

 ただのマント……ではなく、ちゃんと胸ポケットやら救命団を象徴する花のマークもある。


「……あー、えーと、モデルが小説ですから……」

「僕は美少年になって、ブルリンは馬になって、ネアは鷹になって、団服がマントになって……ハハッ」

「ウサト君、私も正統派ヒロインになっちゃってるから……!!」


『それはフォローじゃないだろ……』

『スズネもスズネでキャラ崩壊させられているのよね……』


 ここまで来るとフリー素材と化しているような気さえしてくる。


「第二の試練、お父さまは大変喜ばれていました」

「そ、それはよかったです。なんか結局第二の試練を滅茶苦茶にしてしまったみたいなので」


 お祭りの運営の方たちが怒り心頭だったらどうしようと思っていたくらいだからな。

 実際、僕達がしたことは競争の側面が強い試練で、そのコンセプトを無視して協力をしてしまったようなものだったから。


「いえいえ、あそこまで喜ぶお父さまを見たのは久しぶりなんです」

『観客席だとすごかったわよ、あの王様』

『もう感極まったくらいに叫んで、集まったお前らを絵画にしたいって言ってたぞ』


 されたらされたでとんでもない絵になりそうだな、それ。

ネアとフェルムの囁き声に口元を引きつらせる。


「ナイアは楽しんでくれたかな?」

「ええ、もちろん。過去に同じ形式の試練が何度か行われていますが、今回は一番予想外でとてもワクワクするものでしたよ」


 こころなしかナイアさんの声も弾んでいるように聞こえるので、彼女自身も今回の試練を見て楽しんでもらえたようだ。


「だけれど、第一の試練の時もそうでしたがお二人の動きは凄まじかったですね」

「ふっ、褒めるな」

「僕もいつも通りの動きをしただけですよ」


『貴方、毎回いつも通りじゃないでしょ』

『変なことをした前と違う変なことをするやつがお前だよな』


 本当にツッコミが鋭いなこいつら。

 ここに後一人アマコがいたら爆発していたところだ。


「ナイア、これから君のお父上にお会いするということだが、ウサト君が治癒魔法をかけるという話は大丈夫そうかい?」

「心配はないかと思われます。私がお願いするということもありますが、治癒魔法ですからね。お父さまも今回のお祭りで多少の無理をなされていますから、拒まれることはないでしょう」


 大規模なお祭りな分、王様であるラムダ王も忙しいからな。

 悪魔の魔力に影響されているか、ということを確かめつつその疲れも癒せたらいいな。


「———ここにお父さまがお待ちです」


 と、前を歩いていたナイアさんが背の高い建物の前で足を止める。

 白を基調とした見てわかるほどの荘厳な外観の建物。

 その入り口を守る騎士に招き入れられた僕達は、ラムダ王が待っていると思われる部屋の前に到着する。


「お客人です」

「「ハッ」」


 ナイアさんの言葉に扉の前にいる騎士が頷き、扉を開けられる。

 扉の先には魔王領の魔王の館で見たような広めの執務室の、中央に鎮座した大理石のようなテーブルに座っている壮年の男性———ラムダ王が僕達を待っていた。


「陛下、リングル王国勇者、スズネ様とその従者ウサト様をお連れいたしました」

「ああ、ご苦労」


 ナイアさんに近い濃い赤色の髪をオールバックにするようにさせた彼は、満足そうに頷きながら僕達を見る。


「急に呼び出してしまい申し訳ない。さあ、座ってくれ」

「お気遣い痛み入ります」


 用意されたテーブルの椅子に先輩と隣り合う形で座る。


「では、私はここで失礼します」

「ナイア、お前も座るといい。この場はそこまで肩肘ばったものではないからな」

「分かりました」


 ナイアさんはラムダ王から少し離れた席に座る。

 全員が席についたところで彼がこちらに微笑みかけてくる。


「呼び出してすまない。此度の祭典中に貴殿らと話し合いの席を設けたかった」

「お気になさらず。私共としましても陛下とご歓談できる機会は得難いものですから」

「そう言ってもらえて助かる。……うぅむ」


 唸るラムダ王に僕も先輩も怪訝な様子になる。


「堅苦しいままだと、貴殿らにいらぬ緊張を与えてしまうな。……ふぅー……うん、今回君たちを呼び出したことに大きな理由はない」


 一瞬で軽い口調に変わるラムダ王に僕も先輩もびっくりする。

 傍にいるナイアさんは困ったように笑っているので、これもラムダ王の側面ともいえるのだろう。


「私個人として、勇者として動き、魔王軍と戦った君達と言葉を交わしてみたかった。君たちからすると難しいとは思うが肩の力を抜いて話してほしい。もちろんナイア、君もね」

「しかし陛下」

「パパでいい」

「お父さま、もうしばらく公務の時の真面目さでお願いします」


 この人いろんな顔持ちすぎでは……?

 なんとなくだが、お祭り以外の時は公私をきっちり入れ替えられるお方なんだな。

 ナイアさんは頭を抱えているけれど。


「此度の祭りは楽しんでいるか?」

「ええ、もちろん。第二の試練の謎解きもとても有意義なものでした」

「ハハハ、それはこちらの台詞だ。二人のおかげで私も勇者同士が協力し合うという素晴らしいものが見られたからな」


 王様に満足してもらえてよかった。

 僕としてもあの場でリヴァルと共に行動していたのも楽しかったし、混沌とはすれど彼がしっかりと成長できたことは喜ばしいことだ。

 ……ネアとフェルムから又聞きしたことだけど、試練中にラムダ王が先代勇者について触れていたらしい。

 気になるので、そのことを少し聞いてみるか。


「陛下は先代勇者の……その、過去の子細についてはご存じなのですか?」

「ああ、おおまかにはな」


 勇者信仰というだけあって、王族の方々にはヒサゴさんのことは知られているんだな。

 だからこそ、勇者同士が協力し合うということに感動しているのだろう。


「世間での先代勇者の印象は綺麗なものばかりだ。しかしその実は人の業によってその人生を振り回された哀れな人物とも言える」

「……はい」

「だが、それと同時に彼は人間の善を信じていた、と私は願っている。……そうでなければ、今の世はないだろうからな」


 ラムダ王のいう通り、ヒサゴさんは人の善を信じていたんだろうなって思う。

 でもその信じる先が彼にとっての現在じゃなかった。


「うーむ、だからこそ先代勇者の記録をより深く知りたいのだが……ハッ、君たちは魔王殿と知り合いと聞いている。ならば彼を頼って記録を知ることはできないか!?」

「お父さま、戻ってきてください」

「おっとすまない取り乱した」

「魔王なら普通に頼んでも了承してくれると思いますよ」

「いいの!?」

「ウサトさん!!」


 ナイアさんに怒られてしまった。

 実際、魔王ならそのくらいOKしてくれるんだろうなって。

 あの人、なんだかんだで僕に重力の呪術のスクロール用意してくれたし。


「失礼、また取り乱した。……さて、一つこちらから聞きたいことがあるのだが構わないかな?」

「? はい」


 一転して真面目な雰囲気になったラムダ王が机の上で手を組んで僕と先輩を見る。


「君たちはなぜこの祭りに参加した?」


 軽い空気から一転して圧すらも感じるその言葉に僕は息を呑んだ。

 これは単純に僕達がお祭りだけのために来たわけじゃないことを理解している感じだ。

 彼の問いに困惑していると、ナイアさんが言葉を挟んできた。


「……お父さま、それはお二人が祭りに興味を持って参加したからでは?」

「いいや、彼らの性格上興味はあれど来ることはないはずだった。私が知る限り、二人は多忙な身であるからな」

「ギクッ」


 先輩は別に多忙でもなんでもない救命団員(勇者)なので気まずげに視線をそらしている。

 いや、でも訓練で忙しいはあるな。


「特にウサトはほんの少し前までは魔王領に赴いていたと聞く。ここに来るまでひと月も間をおかずにな」

「……そこまで楽しみにしてた、とかは……」

「あのロイドがそのような無茶をさせるとはとても考えられない。仮にイヌカミだけの参加だとすれば、わざわざ救命団に所属するウサトを従者にする理由はない」


 ラムダ王の推理は止まらない。

 ロイド様への一種の信頼もそうだけど、どんどんと隙間を埋めていくような彼の推理に僕も息を呑むしかない。


「だとすれば……単純にこのカームへリオの祭典に興味を抱いて来たか———なにか、別の目的があってここにきたかのどちらかとなる。……前者だった場合は、ここで私が恥をかくだけだな」


 ここまで看破されてしまったらもう話すしかない。

 観念して僕が口を開こうとしたら、それよりも速くラムダ王が言葉を発する。


「だが、ここで重要なのはウサト。君が従者であることだ」

「……僕が、ですか」

「悪魔」


 ……。


「僕は悪魔じゃないです」

「いや、そんな酷いことは言っていないよ」

「ヒドイ、コト……?」

「そんな普段から悪魔呼ばわりされているの!?」


 いつも身内に悪魔呼ばわりされてるからすぐに否定してしまった。

 真面目な雰囲気から一転してびっくりするラムダ王だが、すぐに我に返ってくれる。


「悪魔に対して有利に動くことができる君が率先して行動している。その時点で私はこの国に悪魔の手が伸びていると予測した」

「……はい」

「そして、ナイア。この件に君も一枚嚙んでいるね?」

「隠し通せるかと思いましたが、申し訳ありません」


 謝罪するナイアさんに「謝る必要はない」と返すラムダ様。


「私が悪魔に思考を誘導されることを危惧したのだろう? 君の行動は間違っていない」

「……お父さま、ウサトさんの治癒魔法を受けてください。そうすれば悪魔に干渉されているか分かるはずです」

「ん? 治癒魔法で悪魔の干渉が分かる? む? うぅん? ……そういうことなら頼む。ついでに疲れも癒してくれると助かるな!!」


 迷いもなくこちらに手を差し出すラムダ王に僕も断りをいれてから治癒同調を行う。

 結果は悪魔の魔力による干渉も受けておらず、今のラムダ王の発言は悪魔にも影響されていない彼自身の発言といえた。


「大丈夫でした。悪魔の影響はありません」

「これが熟練した治癒魔法か。うむ、今後は治癒魔法使いの城勤めの役職を設けるべきだな」

「私の付き人に優秀な治癒魔法使いがおりますので推薦しましょうか?」

「おお、それはいい。後で話そう」


 なんかまたケイトさんが成り上がりそうなことに……。


「用心していたとはいえ、怪しまれる行動をしていたのは事実です。誠に申し訳ございません」


 隣で勇者として謝罪する先輩に僕も頭を下げる。

 僕達は他国で隠れて行動をしてしまうダメなことをしてしまったから、平気な顔をしていられない。

 僕達の謝罪にラムダ王は困ったように笑った。


「最初に言っただろう? 君たちをここに呼んだことに大きな理由はないと。私は元より君達を疑ってはいないし罰するつもりもない。悪魔の存在はこの国にとっての脅威だ。むしろ、君たちの暗躍に私は感謝している」


 それに、と言葉を切ったラムダ王がナイアさんの頭に手を置く。


「勇者であるということもあるが、娘が信頼を置く人物だからな。疑う理由はどこにもない」

「お父さま……」

「パパでいい」

「もういいですからそれ」


 この国に来てから多くの顔を見せるカームへリオ王国の王様、ラムダ王。

 彼がナイア様の頭に手を置く姿を見て、僕はサマリアールにいるルーカス様とエヴァのことを思い出してしまうのであった。

今最も熱い勇者コンビに詳しすぎて大体察してしまったラムダ様でした。


今回の更新は以上となります。

今夜、24時30分よりアニメ「治癒魔法の間違った使い方」第七話が放送・配信されます!

こちらもどうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>


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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者オタクな勇者と勇者オタクな王様を引き合わせてみたい。どういう化学反応が起こってしまうのか……。 あと、多分、魔王様はリアルタイムに状況把握していそう。こんな愉快なもの、覗き見しない方が…
2024/02/20 21:03 退会済み
管理
[一言] この世界の王様、皆有能で良いですね。 その分おかしいですがw
[良い点] オタクの考察が正解だった時のやつ
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