第四百四十五話
お待たせしてしまい本当に申し訳ありません。
普通にコロナにかかっていました……。
治癒魔法アニメ、ニヤニヤしながら私も楽しんでいます。
今夜、24:30より第5話「ウサト、再び森へ!」が放送・配信開始です!
そして、第四百四十五話です。
治癒拡散弾でアウーラさんとミルファさんの場所を割り出した僕はリヴァルを背負って彼女たちのいるところへ向かって駆けだした。
「お前、魔王軍との戦いでもこんな状態で走っていたのか?」
その道中で問題を見つけては確保しながら移動していると、不意にリヴァルがそんなことを聞いてきた。
彼の声色は真剣みを帯びていたので僕も静かに、短く答える。
「それが僕の役目だからね」
「そう、か。……それはそうとなぜスピードを上げる?」
リヴァルからそれ以上の言葉はなかったが、ボクはそれで十分だと思った。
「おい? もしかして聞こえてねぇのか? もうだいぶ近くまで来てんのになんで助走つけてんだってんだおい!! てめっ、おい! 答えろォ!」
「リヴァル、跳ぶよっ!」
「跳んでから言うなぁ!!」
最早、慣れたリヴァルのツッコミを受けながら、僕は弾力付与の魔力を踏みしめ―――屋根から空高く跳躍し、治癒感知で反応のあった場所を見下ろす。
広くなった視界の中で、城下町の通りの端のテーブルにフレミア王国の勇者アウーラさんと、レオナさんの従者であるミルファさんがおり、二人も問題を解いているように見えた。
『あのー、アウーラ? そろそろ次の問題にいかないと時間ないわよー?』
『ま、待ってください!! もう少し待ってくださぁい! あと少しまで、こう……思い浮かんできそうなんです!?』
『いえ、これどう見ても普通に答えさせる問題じゃ……学者気質からの負けず嫌いのせいで難問をスルーできないのねぇ……ん?』
『どうしましたか? え……空?』
アウーラさんとミルファさんが空を見上げ、絶賛落下中の僕と声の無い悲鳴を上げているリヴァルに気づく。
それに合わせて僕は背中のリヴァルを魔力で包み込み、彼女たちの前に着地する。
「見つけたァ!!」
「ひぇぇぇぇ!?」
「あら? ウサト君じゃない」
ちょうど問題を解いていて移動してなくて助かった。
背中のリヴァルを下ろすと、彼は肩で息をしながら僕の肩を殴りつけてきた。
「……よせ、リヴァル。拳を痛める」
「お前ぶん殴るぞ!? マジで!?」
「因みにもう殴ってる」
「喧しい!!」
正確に位置を把握するためとはいえやり過ぎたな。
気を取り直して、僕はアウーラさんとミルファさんの方を向く。
「ウ、ウサトさん? どうしてここに……?」
「ええ、実は……」
「ウサト、待ってくれ」
困惑するアウーラさんに説明しようとする僕の声をリヴァルが遮る。
彼の表情を見て、なにをしようとしているのか察した僕は彼に任せることにした。
「勇者アウーラ」
「は、はい?」
リヴァルとアウーラさんはなんだかんだで訓練場で何度か顔を合わせている。
アウーラさんは最初の印象から、リヴァルも負い目があるという理由で結局二人が言葉を交わすことは一度もなかった。
なので、このタイミングでリヴァルが声をかけてきたことにアウーラさんも怪訝な様子だ。
そんな彼女にリヴァルは、深く頭を下げた。
「顔合わせの時、失礼な態度をとってしまいすまなかった」
「……えっ?」
突然の謝罪にアウーラさんが目を丸くする。
「この謝罪を受け入れなくてもいい。ただ、俺が口にした言葉は醜い嫉妬に駆られたものだ。貴女は勇者として十分以上の功績を持つ女性だ」
「いえっ、そんな……私なんてその……」
困惑気味に否定するアウーラさんにリヴァルは頭を上げると同時に力強い言葉を口にしだした。
「とんでもないッ。貴女の提唱した系統魔法における分割説は既存の魔法説を覆す可能性を秘めた素晴らしい研究だ。俺の友人も深く感銘を受け、休暇中はフレミア王国と貴女がかつて在学していたルクヴィス学園に足を運び、一般に公開されている貴女の過去の論文の写しを集めるほどの熱狂的なファンなんだ。俺自身、一部ではあるが拝読したが、学生時代のものでも一目で理解できるほどに美しくまとめられたものと勝手ながら感じた。それに―――」
「リヴァル、もういい……っ!」
ものすっごい語り始めたリヴァルを止める。
まさかの僕がストッパーになるとは思わなかったが、リヴァルはまだ語り足りないのか納得いかない様子で僕へと振り返る。
「ウサト、止めるな! 俺の自己満足にすぎない謝罪は心底どうでもいいが、俺のせいで認識を歪ませてしまった彼女の偉業を称えなければ!!」
「いや、もう十分だよ!? アウーラさん、思考が停まっちゃってるから!!」
リヴァルに彼女を見るように言うと、アウーラさんはぶるぶると震えながら涙目で虚空を見上げている。
「わ、わわわわ私の過去の論文ををををを」
「あちゃー」
怒涛の言葉にアウーラさんの顔が赤から青に忙しく変わって、最後に虚空を見つめて微動だにしなくなってしまった。
そんな彼女にミルファさんは苦笑している。
「悪い。ちょっと取り乱した」
「君も特定状況下でおかしくなるタイプなんだね」
「は? 常におかしいお前よりマシだろ」
「おい?」
君も言うようになったな?
遠慮がなくなったのは嬉しいけど、なくなりすぎるのも問題だぞ?
「まだ固まってるアウーラの代わりに聞くけど、どうしてあなた達はここに?」
「それは……」
ミルファさんの問いかけにリヴァルが僕を一瞥してから、問題が記された用紙を取り出す。
問題文は見せずに用紙だけを見せた彼が説明をする。
「今回の試練の2点問題。これは普通じゃ答えられない専門的な問題ばかりだ」
「ええ、そうね」
リヴァルの言葉にミルファさんが頷く。
「その内容も多分、この祭りに参加した各国……その国の勇者じゃなければ分からない問題なんだ。だから、俺とウサトはこの問題の答えを知る勇者に協力を得ようと考えた」
「なるほどねー、アウーラ。どうする?」
ミルファさんにそう聞かれたアウーラさんは、我に返るとあわあわとまた震えだした。
「そ、そうだったんですか……! 全然気づきませんでした……!!」
「アウーラさんならすぐに気づきそうだったんですけど……」
「頑張れば解けそうだったので……」
それはそれで凄いな。
普通に僕とリヴァルが感心してしまっていると、呆れ顔のミルファさんが口を開いた。
「解けそうなのはいいのだけど、この子ずっと同じ問題で悩み続けてるからまだ2,3問くらいしか解いてないのよ」
「「えぇ……」」
「ふぇぇ……すみません……」
駄目だけど、僕も負けず嫌いだから気持ちはよくわかる。
自分の得意分野だからこそ意地でも解いてみたいだろうしなぁ。
「と、とにかくお二人がなぜ私たちの元に来られたのかよく分かりました! この第二の試練の規則にも勇者同士での協力を禁止していませんでしたから、問題ないと思います!!」
「それじゃ……」
「はい! 協力しあえるなら一緒に頑張りましょう! それに……」
一旦言葉を切ったアウーラさんがリヴァルへと視線を移す。
「リヴァルさん。私は貴方の謝罪を受け入れます」
「いや、俺は……」
「私もあの訓練場でウサトさんと共に走る貴方を見ました。とても正気……普通ではない訓練を従者の皆様方と共にしていた貴方は、最初に会った時とは明らかに変わっているように見えました」
今、さらっと正気じゃないって言いかけませんでした?
ツッコミたい衝動に駆られるがそんな空気ではないので我慢する。
「私は貴方を許します。だから、リヴァルさんも自分を責めないでください」
「……感謝する」
リヴァルの感謝の言葉にアウーラさんはにっこりと微笑む。
そして、場を切り替えるように手を叩く。
「さて、協力し合うということですが、私のところに来たということは問題はフレミア王国関連ということですか?」
「ああ、これだ」
リヴァルが手に持っていた問題をアウーラさんに手渡す。
フレミア王国の製紙・製本の原材料となる木の名前……だっけか。
普通じゃ絶対に分からない問題だけれど、彼女なら知っていそうだ。
「……確かにこれは他の国の方々では解くのも難しいですね」
「分かりますか?」
「ええ、フレミア王国では常識みたいなものなので。原材料となるのは“シェアカーラの木”と呼ばれる樹木です」
「ウサト」
リヴァルに頷きながら空を見上げると魔具を装備したフーバードが降りてくる。
いつもの手順で答えを言うと、正解を告げる音声が鳴り響いた。
「ありがとうございます。それじゃ早速、二人の持っている2点問題がどこの国のものか教えていただいても?」
「こちらが見つけたのは二問ほどですね。場所は……ミルヴァ王国とカーフ王国に関するものですね」
ランザスさんとクロードさんのところだな。
……最初から協力を前提とした問題を出す想定だとしたら、勇者と従者を別々にしたのも二点問題をより答えやすくするためだったのかな?
「こっちの後一つの2点問題もミルヴァ王国に関するものだ」
「それなら、ミルヴァ王国の彼らを探した方がいいかしら?」
方針が決まったところで僕は治癒拡散弾を掌に作り出す。
「わぁ、これが先ほど空に打ち上げた魔力弾ですか!? すごい……複数の魔力弾をさらに魔力弾で包み込むなんて……しかもこれは魔力を注ぎ込んでいる!? それを独特の弾力を持つ魔力で押さえ……」
「はーい、ちょっと落ち着いてねー」
ものすごい食いつきを見せたアウーラさんをミルファさんが抑え込んでいる姿を見て、苦笑しながら僕は空へ治癒拡散弾を全力で放り投げ———爆発させる。
ちょっと前と同じく、フィールドに治癒の粒子が広がったのを確認し、魔力感知を発動させる。
「ウサト、場所は分かるか?」
「ランザスさんとレインの特徴は分かりやすいから、多分分かると思う」
目を閉じ意識を集中し、フィールドに反応した魔力を感じ取る。
建物の間、路地で壁に手をついている背の高い男性……クロードさん……いや、ランザスさんか。
彼がいる路地を抜けた先には、これはレオナさんとロアがいる。
「……レインは? いや、あの子も近くにいるな」
小柄な少年……レインはランザスさんから少し離れたところに……ん? 待て、なんで彼が一人でいる? ランザスさんはどうして遠くにいる? レインの動きもどこか落ち着きがなくて、周りを見回して誰かを探そうとしている。
「リヴァル」
「ウサトどうし……なにかあったのか?」
顔色を変えた僕を見てすぐに察したリヴァルに無言で頷く。
まず、レインがランザスさんから離れる状況自体考えられない。
幸い、ここからそう遠くない場所なので、僕はリヴァルの肩に手を触れて治癒同調で魔力感知で得た情報を共有させる。
「うおおお!? いきなりなにすんだ!!」
「僕は一足先にこの通りの先にいるレインの元に向かう。君はアウーラさんと一緒に」
「っ、ああ、クソ! 分かったよ! 切羽詰まってんのは理解できたからさっさと助けに行け!!」
「ありがとう!!」
リヴァルにお礼を言い僕は走り出す。
第二の試練でなにかが起きるなんて想像もしていなかったけれど、ランザスさんの身に危険が迫るとなれば放っておくことなんてできない。
幸い、レインのいるところまで走って十数秒で着く。
彼らの無事を祈りながら僕は加速を繰り返しながら街を走るのであった。
ウサトの扱いが分かってきたリヴァルでした。
次回の更新は明日の18時を予定しております。




