第四百四十四話
二日目、二話目の更新です。
前話を見ていない方はまずはそちらをー。
そして、今夜1月5日24時30分よりTVアニメ「治癒魔法の間違った使い方」の第一話がTOKYO MX、BS11、ABEMAにて放送開始です!!
今回は最初がネア視点、後半からウサト視点でお送りいたします。
試練開始直後、まさかの三組が相棒を担いで行動するという衝撃の事態が起こってしまった。
私もウサトとスズネ……おバカ主従がそんな行動をすることは予想していたけれど、まさかリズまでもが同じことをしているだなんて予想していなかった。
「貴女も色々と言うけど、リズも相当じゃない?」
「言わないでくれ……まったく、あの子は……」
隣に座るウルアが困ったように額を押さえる。
今回も私と同じく観客として第二の試練を見ていた彼女は、第二の試練の混沌具合に頭を悩ましているようだ。
「君は予想できていたのかい?」
「おんぶ作戦のこと? 得意気にしていたから分かったわ」
「さ、さすがだね……」
そもそも第一の試練であの戦法が有効に働いていたこともあって今回も使ったんでしょうね。
でも戦術的には十分通用するし、足の速いウサトとスズネが率先して問題を確保して問題を解く時間を稼げることを考えれば間違いでもない。
「でもお祭りを盛り上げる……という点ではいいかもしれないわねぇ」
「実際、反応としてはウケてるみたいね」
リヴァルを背負ったウサトが街中を突っ走る光景を見た時なんて……。
『人間ってあんなに速く走れるものなの……?』
『うさぎさんみたいに跳び回ってるー!』
『人を背負ってあの身軽さで移動しているのか……?』
『なん……え? 魔力を踏んで飛び上がった? 治癒魔法でどうしてあんなことが……?』
『治癒魔法ってああいう魔法なのか……』
ものの見事に見ている側も混乱させるほどだ。
まあ、普段一緒に行動している私たちはそれ以上の混乱を叩きつけられているようなものだけどね。
「最初は地味な試練で評判も悪いと思っていたけど、そこはさすがのカームへリオの運営。そうならないように配慮しているね」
「そうね。試練を受けている面々だけじゃなく、観客も謎解きができるように問題を公開するのは面白い試みだわ」
第二の試練は第一の試練よりも派手さに欠ける。
なので、目まぐるしく攻防が入れ替わるような戦いが見たい層には面白味が欠けるだろうけれど、そうじゃない人達には中々に面白いものだと私は思う。
実際に、今頭をひねって謎解きをしているウサトと一緒に考えている人もいる。
『分かった! 答えは“訓練用の的”だ!!』
『外れ です。回答権、残り 二回 です』
フーバードに取り付けられた魔具により宙に映し出された光景に、問題の解答を口にしているウサトの姿が映し出される。
ある程度の近さなら声も拾えるようなので、ウサトの頓珍漢な答えとそれに慌てふためくリヴァルの姿も観客席にいる全員が見ることができている。
『……なぜだ?』
『おい!? お前なに外してんだよ!?』
『むむ、おかしいな……』
『お前の答えの方がおかしいわァァ!!』
真面目に疑問に思うウサトとツッコむリヴァルのやり取りに、観客席から笑いの声が聞こえる。
『楽しくなったら叩く。叩けば叩くほど楽しい。大勢の人と一緒に叩いたりもできる。それでいて、泣きながら叩くこともある……つまり、訓練用の的では?』
『お前の訓練は泣きながら的を叩くもんなのかよ!?』
『確かに、的にされても僕は泣かなかったな』
『分かればいいん……いや、待て。的にされたってどういうことだ!?』
「苦労しているわねぇ……」
『傍から見ると面白くはあるけどな』
同化しているフェルムが私にだけ聞こえるように呟く。
ちなみにこの問題の答えは“拍手”とかその辺りなんじゃないかと思う。
「他の勇者も順調に問題を解いていっているけれど……」
と、ここでウサトとリヴァルから別の視点、スズネとエリシャの組み合わせを見る。
あの二人も問題を確保した後に一纏めに解答しているようで、ちょうどいま次の問題に目を通しているようだ。
『さあ、次の問題を見てみようか』
『はい! 頑張ります!!』
なんだかんだでうまくやれているようね。
スズネは時折見せる変人さがなければ普通に頼れる勇者なのよね。
『ゴルファッ!?』
『ス、スズネさァーん!?』
え、問題が記された紙に目を通したスズネが見えないなにかに吹き飛ばされたように後ろに倒れた……?
『いったいどうしたんですか!?』
『乙女な私が私を裁こうとしてるぅ……!!』
『??? どういうこと……?』
突然のスズネを襲った衝撃に驚きの声を上げながら起こしたエリシャが、彼女の手にある問題を覗き込む。
それに合わせて魔具によって空中に映し出された映像に問題文が載せられた。
―――
『一般応募からの問題です』
カームへリオ発祥の大人気小説「雷と癒し 運命の旅路」第二巻四章にて戦場に臨むウサトにかけた告白の言葉はなにか?
―――
観客がその問題を認識した瞬間、主に女性の黄色い声がそこかしこから聞こえてきた。
「……す、スズネまで引き当てるとはね……?」
『え、えげつないな……』
よりにもよってスズネに一番ダメージのある問題がまた出てきちゃった……!
ウサトに当たった問題もそうだけど、こういう系の問題って実は多いのかしら?
さっきはリヴァルが答えて、観客からの残念な声が漏れていたけど、今回も観客の反応は同じ感じだ。
「あちゃー、さすがに同情しちゃうかなぁ」
「あれ絶対スズネ答えられないでしょ……」
あの小説自体は真っ当な恋愛小説な上に内容も無駄にしっかりしているので、ファンがたくさんいるのも分かる。
しかも大長編小説なことも拍車をかけている。
題材がある以上どこかしらでストーリーが薄まるはずなのだが……。
「皮肉にもウサトに関する突拍子のない噂のせいで、ネタには困らないんでしょうね……」
噂自体が普通じゃ信じられないものばかりなので、創作でどれだけ盛られても違和感を持たれない。
本当に恐ろしいのは、どれだけウサトとスズネ周りの設定が盛られても本物のやばさには遠く及ばないところだけれど。
『スズネさんッ、大丈夫です!! 私が代わりに答えます!!』
『え”ッ!?』
そして不意打ち気味に精神的な大ダメージを負ったスズネに、猛烈なやる気を見せたエリシャがそう言い放った。
「因みに彼らをモデルにした小説はエリシャが最近愛読しているものだね」
「えぇ……」
そういえばウサトと最初に会った時、本と違うみたいなことを言っていたわね。
「しかし、一点問題にも癖が強いものがあるねぇ」
「ウサトとスズネ限定だけれどね」
意気揚々と解答しているエリシャを見て悶えるスズネを見ながらウルアの言葉に頷く。
「でも二点の配点を持つ問題はほとんど解かれていないね」
「ええ」
一般応募よりも遥かに難しい二点配分の難問。
問題内容も難しいとかそういうものじゃなく、分かる人しか分からないようなものばかりが選出されている。
『あんな問題解けるわけないだろ。作ったやつは絶対性格悪い』
愚痴るフェルムに苦笑いする。
フェルムは……まあ、素直だからそう考えちゃうのもおかしくないわね。
「これの性質が悪いところってなんだと思う? ネア」
「二点ってところでしょう? 解けなくても問題ない程度だから無理して解く必要がないわ」
時間をかけて解いても意味がないので、普通なら別の問題を探して得点を稼ぎに行った方がいい。
「解かなくても問題がない。試練の基準としてあまりにも分かりやすすぎる穴をどうして放置したままなのか……ラムダ王は本当にいい性格をしている。彼は本当に勇者が見たいんだねって思わされるよ」
ウルアの関心したような呟きに、私も同意しながら映像の先にいるウサトを見る。
ウサトのことだからもう気づいている。
でも、それをリヴァルに直接明かさないのは、あの人なりにリヴァルの成長を考えてのことなんでしょうね。
●
難問ばかりだったな……!
リヴァルを背負いながら街を走り回って確保した一点問題を全て解き終えた。
それらの中身はなぞなぞ形式のものが大部分を占めており、結構な曲者だったけれど中々に楽しめた。
「よし、一通り解き終えたね」
「ああ、これで5点は確保しただろ」
これで僕達が持つ点は5点。
他の組がどれくらいとっているのか分からないけれど、順調に稼げているとは思う。
「まだ時間はある。このまま次の問題を確保して行こうぜ」
「二点問題はどうする?」
次の問題へ向かおうと提案するリヴァルに僕はそう問いかける。
他の問題と比較して明らかに難しい青縁取りが施された問題。
最初のやつ以外に同じ難易度の問題が二つ出たけれど、そのどれもが発想云々で解けるような問題ではなかった。
僕の問いかけにリヴァルはため息をついた。
「言っただろ。この問題は俺とお前じゃ解けない。考えるだけ時間の無駄だ」
「そうだね。解けるのは問題に書かれた国にいる人くらいだよね」
「……」
「……ん? どうしたのかな?」
僕の言葉にリヴァルは驚きで目を丸くさせた後に、半目で睨んできた。
「お前、分かってたなら教えろよ……」
「自分で気づいてほしかったからね。ちょっとお節介はしちゃったけど」
「……。いや、そうしなきゃ気づけなかった俺の頭が硬かったってことだ。あー、成長できたと思ってたが、俺もまだまだだな」
額を手で押さえてそう呟いた彼はこちらを見る。
「ウサト、予定変更だ」
「うん」
「この問題文に記された勇者のとこに行くぞ?」
「……うーん、なんのためにかな?」
「お前本当にッ……くッ……ああ、ちゃんと言えばいいんだろ! 言えば!!」
リヴァル自身の口からこれからすることを聞きたかったので、聞き返してみると彼は苦々しい表情を見せながら答えようとする。
「分からねぇ問題なら、分かる勇者に聞いて協力を求める。……なんつーか、その、協力しにいくんだよ、勇者同士でな」
「うん、了解。じゃ、早速位置を割り出すね」
「は?」
満足のいく言葉をリヴァルの口から聞いた僕は、右の掌に複数の魔力弾を連続で生成し———空いた左手で魔力弾を包み込み、爆裂弾の要領で魔力を注ぎ込んでいく。
そうやってできたボウリングの球ほどの大きさの魔力弾———治癒拡散弾を掲げる。
「え、お前なにを———」
「ぬうぅん!!」
治癒拡散弾を力任せに頭上へと放り投げる。
ぐんぐんと街の上空へと昇った治癒拡散弾は炸裂し、花火のように魔力の残滓を巻き散らしながらフィールドに降り注いでいく。
それを見届けた僕は目を閉じて、治癒感知を行う。
まずはアウーラさんは、ミルファさんとの二人組だから……見つけた。
「よし、アウーラさんはここから南西側の通りにいるから探しに行こう」
「……イヌカミが真っ先に制限されたけど、お前が一番制限されるべきだろ」
第一の試練の時は先輩のインパクトであまり注目されなかったけれど、次の試練あたりで確実に制限されるんだろうなぁってのは自覚している。
ピンポイントでダメージを食らう問題を引き当てる先輩でした。
今回の更新は以上となります。




