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第百二十六話

二週間以上も更新が遅れてしまい申し訳ありません。

少しばかり私用で立て込んでいましたが、大分余裕ができましたので更新します。


第百二十六話です。

 昨夜は本当に大変だった……!

 次から次へとやってくる挑戦者達。

 そして、その場の熱気に流されてその挑戦を受け、全員負かしてしまった僕は、案の定獣人の子供達から正式に人外判定を食らってしまった。

 いや、正確には「人間はこういう生き物だ……!」と認識させてしまったというのが正しいのか。

 とにかく、獣人のおっさん達と仲良くなってしまった。


「まあ、いいじゃん。睨まれるよりずっといいでしょ?」

「そうだけどさぁ、なんかこの扱いの違いに……」


 早朝、カガリさんの家の居間のテーブルで頭を抱えていた僕は、隣に座るアマコに慰め(?)られていた。僕とアマコの他に、アルクさんとネア、そしてリンカがテーブルに座っている。

 昨夜は、自業自得とはいえその場の勢いに任せすぎた。

 宴会の最後あたりは、救命団の強面達に対する接し方みたいになっていたし。なんだろう、酒の匂いに酔ってしまったのだろうか。


「ははは、私が気付いたときには、好戦的な笑みを浮かべて腕相撲に臨んでいましたからね」

「そんな顔してましたか、僕」

「ええ、とても楽しそうでした」


 確かに腕相撲自体は楽しかったが、明らかにドン引きしている子供達と、女性陣の視線は痛いってもんじゃなかった。


「ネアに至っては子供に自分をアピールするなんて……一番、邪悪な癖して、なんて吸血鬼だ……!」

「一番邪悪ってなによ!?」


 僕の愚痴に我関せずと前に座っていたネアが反応する。

 邪悪ってのは冗談だけど、なぜに人間の僕が怪物扱いされて魔物の彼女が人間扱いされているのだろうか。


「そういう貴方は怒った顔とか邪悪どころか凶悪じゃない」

「怖いのは自覚しているけど、凶悪とまではいかないだろ」

「ふふっ、知らぬは本人だけね」


 やけに勝ち誇ったようにそんなことを言ってきたネアに、なにも言い返せない。

 そんな僕の肩にアマコが手を置く。


「大丈夫だよ、ウサト。怖い顔でもウサトはウサトだから」


 慰められたと思ったら、凶悪な顔を肯定されてしまった。

 えぇ、もう凶悪な顔は周知の事実なの……?

 もうこれからどんな顔して怒れば良いか分からないんですけど。

 肩を落として落ち込む。そんな時、アマコの隣でずっと無口でいたリンカがフフッと噴き出した。


「なんだか、変に怖がっていたのがバカらしくなっちゃった」

「リンカ?」

「昨日の夜からずっと考えてたけど、やっぱりアマコの言うとおりだった。あんたの信じた人間は、悪い人達じゃなかった」


 リンカの言葉に目を丸くするアマコ。

 僕達もアマコと同様に驚いていると、リンカは僕に視線を向ける。


「確かにウサトは、里の大人達を全員負かすくらいの力もあって、足も狼の獣人の私よりも速い。ぶっちゃけ怪物染みてる。だけど、ちゃんと見てみれば、悪い人間じゃないのも分かった。昨日もアマコのことを考えて、私と一緒に行動させてくれたし……」


 そう言って席を立ったリンカは、僕の近くにまで歩み寄ってくる。

 彼女の行動に困惑していると、彼女は勢いよく頭を下げた。


「昨日はごめん! なにも知らないで矢を放っちゃって!」


 僕としては、こちらの方が怖がらせてしまったので、謝られるとは思わなかった。

 突然の謝罪に困惑しながらも、できるだけ安心させるような笑みを浮かべて返答する。


「アマコを助ける為の行動だったんならしょうがないよ。それに、僕も君のことを怖がらせちゃったから、おあいこだよ」

「え、そう? そう言ってくれるなら私も気が楽なんだけ――」

「フンッ!」

「きゃうん!?」


 一転して、笑顔を浮かべたリンカの背後から、ズビシッと手刀を叩きつけたアマコ。

 軽く叩いた程度だが、突然の背後からの手刀に可愛らしい悲鳴と共にリンカは飛び上がった。


「な、なにするの! びっくりしたじゃん」

「謝ったあとでそれはないと思う」

「い、いいじゃん! ウサトが許してくれるって言っているんだからー!」

「は?」

「ひぃ!? そんな怖い目をしても、怖がらないからな!」


 涙目のリンカ相手に、無表情のアマコ。

 怖がらないといいつつも、座っている僕の後ろへ隠れるリンカに、アマコの視線がさらに鋭くなる。

 仲良しだなぁ。

 アマコがここまで感情をむき出しにしているのは、そうそうないことなので僕としては微笑ましい気持ちだ。


「アマコ、昨日送ったフーバードが帰ってきたぞ。息子からの手紙も持っていた」


 二人のやり取りを見守っていると、居間にカガリさんが入ってきた。

 早いな、もう返事がきたのか。

 カガリさんから、手紙を受けとったアマコは、小綺麗に折りたたまれたソレを開き目を通していく。


「……カガリさん。これは、信じてもいいの?」

「息子は君の母親の親友だ。それに誰かを騙すなんて器用な真似ができる男でもない」

「……そう、分かった」

「アマコ、なんて書いてあったんだ?」


 手紙を見て、動揺しているアマコにそう質問してみる。


「裏から私達を迎え入れるように手配する、だって」

「それって、僕達も?」

「うん。確かにそう書いてある」


 確かにアマコが疑うのも分かる。

 なにせ、アマコだけではなく僕とアルクさんの入国を許可するなんて、普通に考えておかしい。人間である僕とアルクさんに対する罠を疑ってもいい。


「大丈夫だよアマコ。うちの父さん、いつもにこにこ笑っているような人だから」

「そうだけど……」


 リンカの言葉に言い淀むアマコ。

 不安、なんだろうな。

 アマコの母親を救うには僕の治癒魔法が不可欠。母親を救う前に僕が捕まってしまうようなことがあれば、それも叶わない。


「アルクさん、どうします?」

「私は、行くべきだと思います。現状、獣人の国へ入る方法が身分を隠しての潜入か、姿を見せぬように入り込むしかない以上、この話は私達にとって悪い話ではありません」


 本来ならば、人間だという理由で入ることすら困難な場所だ。

 自分の身分を隠さなければいけない分、あちらから招き入れてくれるならば、これほどいい話はない。


「今更悩んでもしょうがないんじゃない? どちらにせよ、アマコの母親を助けに獣人の国に入るしかないんだし」

「……そうだな」


 ネアの言葉に頷く。

 裏切られたら別の手を考えればいい。書状を渡せなくなるのは残念だけど、本来の目的であるアマコの母親を救えればそれでいい。


「アマコ、とりあえず獣人の国へ行ってみよう」

「……うん」


 不安げな表情を浮かべるアマコだが、頷いてくれた。


「カガリさん、獣人の国までどのくらいの距離がありますか?」

「ここからそう遠くはない。歩いて、一、二時間ほどだ」


 中々近い場所にあるんだな。

 それなら、今日中に向かえるぞ。

 アルクさん達に確認した後に、カガリさんに今日出発する旨を伝える。


「では、獣人の国へ到着する日時を記した手紙をフーバードで送った後に、僕達は獣人の国へ出発します」

「早いな。まあ、それもしょうがないことか……リンカ」

「ん? なに、おじいちゃん」

「彼らを獣人の国へ案内してやりなさい。ついでに倅に顔を見せてこい」

「え-、案内するのはいいけど、お父さんと顔を合わせるのはなー」


 うへぇ、といった表情を浮かべるリンカ。

 父親が苦手なのかな? でも嫌いって感じじゃなくて、面倒臭いといった反応だ。

 一体、どういう人なのだろうか。僕達を招き入れられる立場にあるのだから、獣人族の中で高い役職にいるのは間違いない。

 ……一応、名前を聞いておくか。


「カガリさん、リンカの父親の名前を聞かせてもらってもいいでしょうか?」

「ああ、そういえば言ってなかったな。息子の名前は、ハヤテ。本国の族長の補佐を担っている男だ」

「族長の、補佐?」


 族長って、獣人族の長ってことだよな? そんな人の補佐って、かなりすごいんじゃないか?

 どうしよう、リンカの父親は僕が思っている以上に地位の高い人かもしれない。



 僕達が隠れ里を出発するために里の出口で準備を進めていると、たくさんの獣人達が集まってきていた。

 なにごとかと思ったけど、僕達が獣人の国へ出発するという話は、既に里の人達に伝わっていたようだ。

 アルクさんは、昨日一緒に話していた獣人の女性達に、ネアは子供達に別れの言葉を送られている一方で、僕はというと――、


「頑張ってこいよ、ウサト」

「また力比べできる日を楽しみにしてるぞー!」

「君は見た目は人間だが、中身は俺達以上の傑物だったぞ」


 一回り体の大きい男達に笑顔で送り出されようとしていた。

 ぼ、僕の周辺だけ気温が上がっている気さえしてくるむさくるしさだ……! 皆、笑顔で僕を送り出そうとしてくれるのは嬉しいけど、どうにも笑みが引き攣ってしまう。

 というより、なにげなく獣人以上の人外扱いされているし……。


「ウサト」

「あ、ダイテツさん」


 そんな中、ダイテツさんが僕に声をかけてくれた。


「まさかこんな早くに出て行っちまうとは思わなかったぞ」

「すいません……」

「謝らなくてもいい。お前がなんの為に俺達の領域へ入ってきたのは知ってるからな」


 昨夜、長が里の人達に話してくれたのかな?

 一瞬だけ、アマコの方へ視線を向けたダイテツさんは、その大きな手を僕の肩に置く。


「頑張れよ、ウサト。絶対にあの子の母親を救ってやるんだぞ?」

「ええ、勿論です。その為にここに来たんですから」


 頷いた僕に、ダイテツさんは快活に笑う。

 全ては、アマコに先輩とカズキが死ぬ未来を見せてもらうことから始まった。それから、何度も苦難を経て、ようやくここまで辿り着いた。


「まあ、お前なら大丈夫だろう。心配するとしたら、お前と喧嘩するような奴の身のことだがな! なにせ、お前の腕っ節はオーガ以上だからな! そんなバケモンの拳を食らうなんて想像もしたくねぇぜ!」

「は、ははは」


 感動した後に落としにかかったな。

 まあ、オーガを殴り飛ばしたことがあるからなんとも言えないんだけどさ。でも流石に普通の人間相手には手加減するぞ?

 邪龍やカロンさん、それにレオナさんのような、僕が本気で動かないといけない今までの相手がおかしかっただけで。


「ウサト殿、そろそろ出発します」

「あ、はい。……では皆さん、お元気で」

「ああ。元気でな、ウサト」


 馬とブルリンに荷物を背負わせたアルクさんに返事をした僕は、改めてダイテツさんに別れの言葉を交わした後、隠れ里を出発し、獣人の国へと向かう。

 これから向かうのは最後の目的地、獣人の国がどんな場所かは全く想像ができないけど、ここまできたら行ってみるしかない。

 何事もなくアマコの母親を助けられたらそれでいいのだけど。




 隠れ里を出て、獣人の国へ向かう僕達。

 現在は、リンカに案内され木々が生い茂る道なき道を進んでいるところだが、やはり歩く道がないのは不安になる。

 もし、はぐれてしまうようなことがあったら、土地勘のない僕は確実に迷ってしまうだろう。

 ……道を作らないことで、獣人達の領域に足を踏み入れた人間を迷わせようとしてのことだろうか? 考えすぎかもしれないけど、この土地に慣れていない僕からしてみれば十分に困らされている。


「肩借りるわよー」

「ああ、構わないよ」


 考えに耽りながら歩いていると、いつの間にかフクロウの姿に変身したネアが僕の肩に飛び乗ってきた。

 僕としては、いつものことなので断る理由がないけど、たまには自分で歩いて欲しいもんだ。


「ウサト」

「ん? どうしたんだ。そんな声を潜ませて」


 そんなことを思っていると、肩に飛び乗ったネアが声を潜ませて僕に話しかけた。

 疑問に思い、ネアの方を向くと、彼女はアマコを横目で見ながら先ほどと同じように僕だけに聞こえるように囁いた。


「アマコは耳がいいからね」


 ……アマコに聞かせたくない話でもあるのだろうか? 獣人の国に行く前に切り出したと言うことは、それほど重要な事なのかもしれない。

 ……アマコは、先頭でリンカと談笑しているか。

 さりげなく歩く速さを落とし、アマコから離れた僕は声を潜ませてネアに話しかける。


「で、なにかな?」

「これからのことについて、訊きたいことがあるの」

「これから?」

「獣人の国に入ってからの話よ」

「……」


 獣人の国に入ってからの話、か。

 まあ、ネアが今するとしたらこの話題しかないよな。

 前を歩くアマコを見やり、ネアに口を開く。


「分かってると思うけど、アマコは獣人の国でも特別な存在よ」

「ああ」


 ローズは時詠みの姫、といっていたか。

 時を詠む、予知魔法の使い手。物理的な攻撃はないが、僕が知りうる中で最も強力な魔法だ。

 そんな魔法を特別視しないわけがない。


「私はきな臭いと思ってるわよ。だって奇妙な点が多すぎるもの。原因不明の昏睡状態に陥ったアマコの母親、アマコを執拗に探し回る獣人達。そして、今日人間であるウサトとアルクを獣人の国へいれることを良しとした手紙」


 ネアの言うとおり、奇妙な点が多い。

 アマコの母親は、なぜ目覚めなくなってしまった? 倒れるにしても理由があるはずだ。

 エヴァのようになにかしらの呪いを受けたか、それとも病で倒れ伏してしまったのか。最悪なのが、第三者の手によって、目覚めさせられなくなってしまった可能性が否定できないことだ。


「多分、あの子も分かってる」

「……そうだろうね。だけど、行かないわけにはいかない」


 獣人の国には、目を覚まさない母親がいるから。

 まだ救える望みがあるから、見捨てることもできない。

 それはまるで、獣人の国を出て行ってしまったアマコを呼び出す餌の――、


「っ、駄目だな。悪い風に捉えすぎだぞ……」


 僕の考えていることは想像にすぎない。

 それなのに、悪い印象を持ってしまうのはよくない。


「できれば何事もなく終わって欲しい。だけど、それが無理ならアマコと彼女の母親だけでも救おうとは考えてる」

「……相変わらず考えが甘いけど、今のところはそれでいいわ。心構えがあるのとないとじゃ全然違うし」


 僕の言葉に呆れながらも、そう返したネア。

 僕があえて言葉を選んだことを分かっているのだろう。

 本当の本当に最悪の事態は、アマコか、彼女の母親、どちらかを選ばなくてはいけない状況があるかもしれないということ。

 その選択を迫られるような状況は想像したくないし、そんな状況にするつもりもない。


「ま、私はどんな状況でも貴方の決定には従うわよ? それなりに信頼しているしね」


 そう付け加えたネアに、一瞬呆けてしまった。

 信頼、か。その言葉を噛みしめた僕は、再び前を歩くアマコを見やる。

 僕は、これまで旅をしてきた仲間を信頼している。これまでも信頼していたからこそ、苦難を乗り越えてきた。

 それを考えれば、今から待ち受けているかもしれない壁なんてなんてことないと思えた。

アマコの章のはずなのにネアの好感度が高くなっている謎……。

次回から、獣人の国へ入れそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] この作品魅力的なキャラが多すぎてヤバいわWWW
[一言] さすが 死竜が認めた人外
[一言] 何週目かの読み返ししてて唐突に頭に浮かんだ事 ウサト+フェルム+ブルリン+リンカ=ブルリンカモードウサト はい
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